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肉、肉、肉

報告せねばならぬと使命感を得ながらも年度末と年度始めのなんやかやで慌ただしくて書きそびれたことを、せっつかれたわけでもないのにまだ見ぬ読者に謝りつ、開催期間中に記事を書いて億が一にも悪影響があってはならぬと自意識過剰な言い訳を誰にともなくしました。

三月に春画展に行く約束は無事に果たされましたので、その話をします。
今回も旅の同行者はゆりあ嬢です。オンラインゲームの世界からはるばる京都まで出てきてくれました。

京阪でやって来るゆりあ嬢と阪急沿線の私は、京都市営地下鉄東西線の駅で待ち合わせをしました。
ゆりあ嬢が道中で不意に得たガシャポンのミニ電球を見せてもらいながら、京都市営地下鉄の座席のヘッドレストや最前列の手すりにジェットコースター感があるとテンションを高くし、第一にして最大の目的地、東山駅下車、平安神宮近くの細見美術館へと向かいました。

会場近くに着くと、平日のお昼前だというのに入場待機の行列ができていました。
「えっ、これ全部春画見たい人?」
「みんな、好きねえ」
私らも多分同類です。

六十分待ちを下ネタ満載の雑談で埋めて、辿り着いた受付で当日券を購入。
「芸術を見に来たんだからねっ」
何も言われていないのに、もう相当に言い訳まみれでした。
十八歳未満入館禁止のため年齢のわかる身分証を持参くださいというサイトの注意書きを熟読して臨み、
「年齢確認されなかった……」
と、しょんぼりする勘違い女がここに。

どこに詰め込まれていたのかというくらい、館内にも人がいっぱいでした。
客層は、年金暮らしのご老人が大半で、子どもを幼稚園に通わせている昼下がりのマダムと、独身と見受けられる若いかたがちらほら。それぞれ、ご夫婦やカップル、友人同士が多く、一人客は少数でした。
私たちの前に居た、友人同士とおぼしき二人組の老婆が展示ガラスにめいっぱい顔を近づけ、大興奮して忙しく老眼鏡を上げたり下げたり、「わあ、すごい!」と思春期の少女のように喜び合っていたのが印象的でした。
エロは偉大です。

そもそも春画とは、江戸時代のえっちな浮世絵の総称で、喜多川歌麿や葛飾北斎など、作家陣は教科書に載っている錚々たる顔ぶれ。
何百年も前の肉筆画なのに保存状態もよく、作品解説も丁寧で、素人にも大変見応えがありました。

有名な、全裸女性に大だこが絡みつく絵もありました。
「2ちゃんまとめの春画スレで見たことある」
「ソースは2ちゃんか」

絵柄の雰囲気や画材こそ違いますが、内容は今時の同人や成人向けイラストとさほど変わりなく、時代が違えど人間の考えることは同じだなあと感心したりもしました。

その後、美術館内のカフェでランチをして、ゆりあ嬢はスパゲッティの具のしめじにオリーブオイルをたっぷり絡め、テラテラしたそれをおいしそうに頬張って、お決まりの「きのこ、おいしいれふぅ」をやり、私はそれを満足げに眺めました。

夜は花灯路のライトアップを見ました。
境内の露店で売られていた蟹肉棒を頬張りました。
「蟹の、肉棒……?」
春画の見すぎです。失敬。

(2016年4月13日はてなブログ掲載の記事を修正したものです。)

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