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サイ・ゴダード選手との再会

 こんにちは、大阪スパーズです。みなさん、オフシーズンはいかがお過ごしでしょうか?
 今回は6月22日、23日に元スパーズのサイ・ゴダード選手(以下サイ選手)の食事会、及びトークショーの報告をしていきます。

プロフィール

生年月日・・・1997/4/2

国籍・・・日本/イングランド

ポジション・・・MF

キャリア・・・2006~2017 トッテナム・ホットスパー
       2018~   ベネヴェント(イタリア)

 小柄な体格ながら、テクニックのあるプレーでチームをけん引する攻撃的MF。10歳でスパーズに加入し、2015年にプロ契約を果たす。同期には、ジョシュ・オノマー、カイル・ウォーカー=ピータース、ルーク・エイモスなどがいる。
 アカデミー時代「10番」のポジションで試合に出ることが多く、よく10の背番号を着用していた。また、中央だけでなく左右どちらでもプレーすることができ、スパーズでの晩年は三列目のポジションで試合に出場していた。
 ロンドンのチェルシー生まれでイングランド人の父親と日本人の母親を持つ。「サイ」という名前は漢字で「彩」と書くがこれは父親が画家ということから由来している。U16、U17の日本代表歴があり、U18日本代表にはトレーニングパートナーとして召集されるも怪我で辞退している。

サイ選手と大阪スパーズ

 大阪スパーズとサイ選手との出会いは2013年の8月までさかのぼる。我々は、第14回豊田国際ユースサッカー大会にU16日本代表として召集されたサイ選手の応援に駆けつけたのである。
 この日のサイ選手はサムライブルーの「10番」のユニフォームを身にまとい、はじめて経験する湿度の高い日本の酷暑にスタミナを奪われながらも、確かなテクニックと相手選手の激しい当たりも苦にしない体幹の強さを見せてくれた。試合終了後は味方のGKに促され、恥ずかしながらも我々の声援に応えてくれたシーンは今でも私の脳裏に焼き付いている。 
 そんなサイ選手との6年ぶりの再会に、我々大阪スパーズは大きな緊張とそれ以上の期待を胸に当日を迎えるのであった。

サイ会当日の概要

 6月22日は、一般財団法人First-Mover Foundationさん主催の食事会は約30名が出席し、我々は5名で参加。サイ選手と通訳さんを通しての会話を30分程度楽しんだ。
 23日は阿波座スポーツメディカルビルにて行われた、サイ選手のトークショーは20名程度が集まった。約一時間半のトークイベントの後、ゴールデンチケットの購入者は別室にてサイン会と写真撮影が行われた。

サイ選手Q&A

 ここからは、2日間に渡って我々が聞いたトークの内容を覚えている限りお伝えします。

 22日
 この日はサイ選手との直接のトークだったので「Q」は大阪スパーズ、「A」はサイ選手(通訳さん)です。

Q.スパーズ時代トップチームに混ざってトレーニングをしている姿を何度か拝見しましたが、どのようなタイミングで呼ばれるのですか?また、トレーニングで感じたことはありますか。

A.トレーニングにはいきなり呼ばれることが多かったよ、タイミングとしては代表戦や、けが人が多く出たときかな。ポチェッティーノのトレーニングは、とにかくインテンシティが高かったことを覚えているよ。

Q.アカデミー時代、一番仲が良かったのは?

A.10歳のころからずっと一緒に生活をしていたからね、特に誰ということなくみんなと仲が良かったよ。同期には、オノマーやピータース、エイモス、アンソニー・ジョルジウがいるけど今でも連絡を取り合っているよ。一つ上だけどハリー・ウィンクスとも連絡を取り合っているよ。

Q.アカデミー時代一番どの選手がうまかったですか?

A.本当に長い時間一緒にいたからね、フィジカルの成長の具合やその時の調子によって、今は誰々が良く、また少し経てば別の選手がいい言う感じだったから「誰」というのはないかな。だから、いい競争相手としてお互い成長していけたんだ。

Q.ヌティフードカップでは、あなたのプレーをたくさん見ることができたのですが、その大会の感想はありますか?
A.とにかくベトナムはとても暑かったことを覚えているよ。
Q.日本の暑さは大丈夫?
A.湿度が高く大変だよ。
Q.豊田国際ユースの時も水をたくさん飲んでたもんね。
A.あの日は本当に暑かったね。そのせいですぐにバテてしまったよ。

Q.スパーズからベネヴェントに所属する間一年の所属クラブがない状態でしたがどのようなことをしていましたか?

A.その一年は、じっくり次の所属クラブを決める期間にあてたんだ。たくさんのクラブが興味を示してくれたから、いろんなクラブを実際に見て回った。その中でベネヴェントが、一番僕を必要とし一番僕のプレースタイルとフィットしていたからベネヴェントに行くことを決めたんだ。

Q.その時に横浜F・マリノスのトレーニングにも参加したようですが、将来的にJリーグでプレーする可能性はありますか?

A.マリノスでのトレーニングは非常にいい経験だったよ。Jリーグのクラブからオファーが来れば前向きに考えるけど、今は将来の事よりベネヴェントで試合に出ることだけを考えているよ。

Q.日本人選手との交流はありますか?

A.U16の時に同部屋だった冨安健洋選手(ボローニャ)とは連絡を取り合っているよ。彼がイタリア(ボローニャが興味を示していると報道、その後決定)に来てくれたらうれしいね。

23日 
 この日は昨シーズン、サイ選手の専属トレーナーであった重矢順平さんが質問者となり1時間ほどトークイベントが進められました。ここでは「Q」重矢さん、「A」サイ選手(通訳さん)です。

Q.スパーズに所属した経緯は?

A.9歳までローカルクラブでプレーしていたんだ。その時にスパーズのスカウトからトライアルを受けるよう言われ、普通は6週間で契約を言い渡されるんだけど僕は能力が認められ2週間で契約を勝ち取ったんだ。

Q.スパーズアカデミーではどのような役割を期待されていた?

A.ラストパスや決定的な仕事を求められていた。トップチームでいうとエリクセンみたいな役割かな。

Q.目標としていた選手は?

A.スパーズは本当に素晴らしい選手がたくさんいるので全ての選手を目標にしていたよ。その中でも同じポジションのルカ・モドリッチ(レアル・マドリー)のプレーはよく見ていたよ。

Q.日本代表を選んだ理由は?

A.小さなころから、祖父に日本についての話しを聞いていたから日本にすごく愛着があるんだ。だから、日本代表としてプレーすることが夢なんだよ。プレースタイルがフィットしているという点もあるけどそれは後付けの理由かな。

Q.今の夢は?

A.日本代表になること。でも、そのためにはクラブで試合に出場することが何より大事なんだ。一つ一つ登っていくだけだよ。

ここからは質疑応答なので「Q」が大阪スパーズに変わります。

Q.スパーズアカデミーにはサイ選手をはじめ比較的体格に恵まれていない選手が多く在籍していましたが、体格に恵まれていない選手が体格に優れている選手と渡り合うために重要な能力はなんだと思いますか?また、その点でスパーズのトレーニングで強調されていた部分はありますか?

A.まず、スパーズのスカウトのルールとしてテクニックを重視し、フィジカルだけ優れている選手は獲得しないというルールがあるんだ。最近では、両親の身長から大体の身長は予想できるし、フィジカルは後からでも鍛えられるからね。フィジカルだけに頼ってプレーしているとレベルが上がるにつれ淘汰されていくからね。
 僕としては、小さな体は弱みではないと思っているんだ。体の大きな選手はやはりスピードやクイックネスで劣ってしまうからね。その中でも僕は、ターンするスピードが強みだと思っているから、その強みを活かしているんだ。クイックネスや戦術的なところがスパーズのトレーニングで強調されていたかな。

Q.サイ選手のスパーズ時代のベストゴールはスパーズのゴール・オブ・ザ・マンスにもノミネートされた、2016年PL2のレスター戦でのボレーシュートだと思うのですがあのゴールの後、周りからのリアクションはありましたか?

A.あのゴールはよく覚えているよ。ゴール・オブ・ザ・マンスに選出されたのは、ハリー・ケインのダービーでのゴールだったけどね。確かに自分でも満足のいくゴールだったし周りからも称賛してもらえたよ。。その他には日本代表ではクロアチア相手に決めたゴールも納得のいくものだったよ。

Q.サイ選手はアカデミー時代たくさんのコーチに指導されてきたと思います。その中でも我々はウーゴ・エヒオグヘッドコーチの事が一番印象に残っていますが、彼との思い出や心に残っている言葉などはありますか?

A.まず、彼が亡くなったことは非常に残念だよ。彼は本当にフットボールの知識が豊富で、聞いたことになんでもすぐに答えてくれたんだ。知識だけじゃなく、実際にやっても見せてくれた。彼からはたくさんの言葉をかけてもらったんだ。僕たちが壁にぶつかったとき彼はいつも適切な言葉をかけてくれたよ。彼からもらった言葉全てが心に残っているよ。

Q.スパーズの中で好きなチャントはありますか?

A.やっぱり一番シンプルな「Come on you SPURS」が一番好きかな。でも、スパーズのスタジアムでは全てのチャントが反響し合って聞こえ、どれも素晴らしくて選手たちの力になっているよ。

Q.最近スパーズはケインやウィンクスがトップチームでレギュラーとして活躍していますが、それはアカデミーの選手にとってモチベーションになっていますか。

A.アカデミーの選手にとってトップチームの道が見えるということはすごくモチベーションになるんだ。最近プレミアリーグではお金の力で選手を獲得するクラブが多い中アカデミー出身の選手が活躍することは本当に素晴らしいことだよ。

サイ選手とのトークで感じたこと

 まず、6年ぶりにサイ選手と再会して驚いたのは非常に体が大きくなっていたことだった。豊田国際ユースで見たときは、同年代の選手と比べても小さかったサイ選手が長身になり上半身の筋肉も逞しくプロスポーツ選手になっていました(当たり前なのですが笑)。
 我々のどんな話にも誠実に答えてくれました。その際に私が感じたのは、サイ選手は未来の事はあまり口にせず、今やるべきことに重点を置いているところだ。未来の話や目標を聞くと必ず「目の前にある一つ一つの与えられたことをやっていく」といったことを必ず口にしていました。それは今から進んでいく道が間違いではなく、それをクリアしていくことが大きな未来につながっていくと確信しているからではないだろうか?
 そう遠くない未来、サイ選手がもう一度サムライブルーのユニフォームに袖を通し、ピッチをどんな色で彩ってくれるか今から楽しみである。その時は多湿でひどい酷暑でないことを願うばかりである。

追記

 トークイベントの後、サイ選手を見送るときに「COME ON YOU SPURS」と叫んだことがうれしかったと喜んでいたと聞きました。これからも、「TO DARE IS TO DO」の精神で活動していこうと心に刻みました。今回のイベントは色々な縁があり参加することができました。サイ選手をはじめ主催者の一般財団法人First-Mover Foundation様、関西トレーナー会様、同じ参加者の方々と全ての人に感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。この場をお借りして感謝申し上げます。

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