コスプレ感

場づくりをしていて「コスプレ感」を感じたら…

僕は、滅多にスーツを着ませんし、ネクタイも締めません。こだわりがあるわけではなく、機会がほとんどないからです。

そのため、僕がネクタイをするのは、葬儀の喪服が定番です…。

お通夜やお葬式に行くとき、少し早めに準備を済ませて、喪服を着て、ネクタイも締めて、まだ出発までに時間がある。自宅のキッチンで、所在なく時間をつぶしている──。

そんなとき、僕はなんとも言えない「ある感覚」を覚えます。まるでこっそりと女装をしているような、不思議な感覚です。

僕はこの感覚を、「コスプレ感」と名付けました。

雑誌の取材で感じるコスプレ感

雑誌には、「ロハス」とか「起業」とか「丁寧な暮らし」とか、それぞれ異なる“かっこいい!”や“なんかいい!”があります。世界観、とでもいいましょうか。

写真もコピーも、それぞれ特有の“なんかいい”雰囲気です。

先日、まだ取材を受けたことのない雑誌に登場する自分や、記事になった自分たちの活動を、ちょっと妄想してみました(笑)。ひまでしょう? あなたも何誌か選んで、想像してみてくださいね(笑)。

そのとき、僕は先ほどの「コスプレ感」を、強く感じました。例をあげてみましょうか。有名どころで、「ソトコト」にしましょう。ロハスをテーマにした有名雑誌ですが、あれに出ている自分を想像したときは、僕の感じたコスプレ感、ものすごかったです!

誤解しないでくださいね、ソトコトが悪いというのではまったくありませんよ。自分とは違う、ということです。

ただ、そこにいる僕は、体よく既存の“なんかいい”を、演じているわけです。その雑誌の“なんかいい”雰囲気に、“なんかいい”感じで収まるために、古民家だか緑の庭だかで、いい人そうに笑っています(←妄想ですよ!)。まるでコスプレをしているみたいに…。

喪服を着てキッチンで時間を潰す、あのときの感じに似ています。

「期待された○○像」から自由になろう

「コスプレ感」を楽しむのも、ありだとは思います。でも、演じてばかりいると、自分のことが曖昧になります。

はっきり言いますが、「なんかいい」なんていうのは幻想です。多くの雑誌は、そういう幻想の上に成り立っています。幻想を売っています。それが手に入りそうで、なかなか実際には入らないから、続けて買うわけです。この消費の構造、あちこちにあります。

自分が「大切にしたい」と思ってることを、本当に大切にする。
それが可能な場をつくることが、「場づくり」です。

そんなとき、既存の「なんかいい」を演じたり、あるいは、他人(世間、周囲の人、親や家族、友達や恋人、同僚など)からの「期待された◯◯像」を演じたり…本当にそれでいいのでしょうか?

私たちは、細かくカテゴライズが進んだ社会を生きています。

例えば「オーガニックカフェで働いています」と言っただけで、だったらこれが好きで、これに反対していて、こういう服で…と、相手のなかで、勝手にプロファイリングが進んでしまいます。合っている部分もあるでしょうが、違う部分だってあるはずです。

だって、あなたはあなたです。他にいません。

コスチュームが肉にくい込んで脱げなくなる前に

「場づくり」をしているときに、コスプレ感を感じたら…。

「あれ? どうして演じているんだろう?」

と、立ち止まってみてください。
その理由は、なんでしょうか。なぜ演じる必要があるのでしょう?

実体のない「なんかいいグループ」に入れてもらうため…?

そんな借りものの「なんかいい」なんかに惑わされずに、目の前の場から、あなたが実感として感じる「ここがいい!」を、自信を持って大切にしてほしいと、僕は思います。

そうしないと、「場」って続かないんです。

“トレンド”という薄っぺらい地層に杭を打って場をつくっても、やがて傾きます。強固な地盤、それはあなたの実感です。実感というのは、もちろんあなたの内側にあるものです。

内側にある確かなものが、自分を支える足場になる。
これが、「場づくり」ということの成り立ちです。

自分の実感に責任を取って場をつくると、信頼されます。その信頼が、場を社会に根ざさせ、社会を変える力になります。

時にコスプレを楽しむのもいいですが、コスチュームが身体にくい込んで、脱げなくならないようにしたいものです。

\あなたへのQuestion/
あなたは、「コスプレ感」を感じたことがありますか?

長田英史(おさだてるちか)|プロフィールNPO法人れんげ舎代表理事。「場づくりクラス」講師。まちだNPO法人連合会会長。
1972年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。和光大学経済学部経営学科卒業後、同大学人文学専攻科教育学専攻中退。教育学や心理学、運動論、身体論などを学ぶ。1990年、在学中にかかわった「子どもの居場所・あそび場づくり」の市民活動に学生ボランティアとして参加し、卒業後は就職せず、それを仕事にする。いわゆる中間支援組織ではなく、自らも現場で活動する「プレイヤー」として、「場づくり」の哲学とノウハウを共有し続けている。
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