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2030年の未来から、自分たちの街の持続可能性を考える。『湯沢2030会議~私たちの街の10年後を灯すビジョンづくり~』Vol. 1

現状の湯沢市の人口は、ピーク時の昭和30年から半分。ここから20年後、さらに半分になります。
地方創生が叫ばれる中、「人口減少」「少子高齢化」といった全国的な課題に直面している湯沢市も他人事ではないでしょう。移住定住者の呼び込みや、中心商店街のにぎわい創出、医療・子育て支援の充実と、市を挙げて2040 年に 31,664 人の人口確保を目標に掲げ、様々な施策に取り組んでいます。
起業家育成事業は、その前段階の約10年後となる2030年にマイルストーンに、チャレンジしやすい土壌づくりを目指し、『ゆざわで10年先の未来をつくる“みちさまし”スタートアッププログラム「emishi」』という4か月間、先進起業家事例のインプットと、参加者のアイデアブラッシュアップ、期間中の伴走支援をパッケージにした内容で1年目を走らせるべく、おせっかい社かけるもその伴走を行ってきました。

自治体で行う事業に起こりうることではありますが、起業家育成事業も走り始めてから、そもそも議論しなくてはいけない問いにぶつかりました。「湯沢の街に起業家は本当に求められているのだろうか?」「求められているとしたら、なぜなのか?」
仮説を立てるとするならば、「この地域には課題が山積していて、その課題を事業によって解決できる人が起業家。だとするならば、誰もが地域の中から起業家が生まれることを求めているだろう」。しかし、総合戦略や市内でまとめられている調査資料を見るだけでは、自分たちが本当に何に困っているのかは分かりません。

本当の困りごとは、本音で話すことから始めないと分からないことですし、目の前に出てきません。2030年という確実に来る未来を見据えて、正しい、正しくないは関係なく、不安に思っていること含めて湯沢という街に関して市民が本音で自分たちの街の未来について思っていること話すために『湯沢2030会議~私たちの街の10年後を灯すビジョンづくり~』を開催しました。

市内ゲストは、地元・岩崎地域で160年続く家業を継いで10年目になるヤマモ味噌醤油醸造元の高橋泰氏、10年前に湯沢に帰郷し在宅ワーク推進を行うT-Solutions株式会社の高橋玲子氏、湯沢翔北高校総合ビジネス科の1年生ながら起業したOligami Ltd. 代表の篠原龍太郎氏、そして市役所商工課長の高橋優功氏を、立場と世代の異なる事業者として迎えました。
さらに、今回行われた議論をより深めていくために、市外ゲストとして三重県尾鷲市で地域商社経営や全国でまちづくりを行う夢古道おわせ支配人の伊東将志氏、そして本プログラムのアドバイザーと監修を行い、課題解決の担い手としての起業家の育成・輩出を手掛けてきたおせっかい社かけるの渡邉賢太郎がファシリテーションに入り、市内外ゲストを交えたパネルディスカッションと、参加者となる湯沢市民を交えたワークショップを通して、確実に来る未来について自由な意見を交わしました。

色んな切り口から視野をストレッチするための問いかけ「交通の便が悪く移動できない人たちはどうする?」

「2030年は確実に来る未来。確実に住んでいるなら他人事じゃない問題。」全体ファシリテーションを行う渡邉の投げかけからイベントはスタートします。

「平成30年度 湯沢市市民満足度調査アンケート」から、3つのテーマを呼び水として議論していくパネルディスカッション。まずは「交通の便が悪く、移動できない人たちはどうするか?」という問いに対しては、年代で捉え方が異なり、若者であれば中長距離、高齢者では日常的な近距離が問題になっていくと様々な意見が出てきました。

高橋泰さん:年代で捉え方が違うと思うんです。若い人は東京にアクセスする視点。年代上がると、足腰悪くなると病院どうする、雪のときどうする、とか。短い移動距離になる。不便さも頻度も違う。お年寄りは日常的に大変になっていくので。
高橋玲子さん:三梨地域の高齢者のご自宅に家事代行の仕事でお邪魔しました。買い物しに行きたいので、車で乗せてってもらいたいという話が出たんですね。家事代行は買い物もできるから、紙に書いて買ってもらったらと、提案したんです。でも高齢者の方は、「自分で見て買いたい」と。
篠原龍太郎くん:湯沢市内から岩崎(下湯沢駅)まで行くのに電車がものすごくなくて自分も困っています。JRとか羽後交通が本数を増やせば良いけど、採算が合わないから難しい。だからシェアリングが一番湯沢に合っているなと思う。料金ではなくて燃料代として捉えていけば、法律に触れないでできる。そういうところでシェアリングを広げていけるといいなと思います。
高橋課長:個人では運転できるし困っていないが、仕事から見ると困っている人がいる。そこに民間・地域ベースで取り組んでいるが、それでもできない部分に対する公共の役割として、市役所では約1億円くらい負担しています。

それぞれの観点が出そろったところで渡邉より、「生活の範囲に絞って考えるとどうか?」という問いが投げられると、参加者からも身近にある困りごとが語られました。

小南さん(参加者):皆瀬地域に住んでいます。タクシーもバスもすごく不便なところです。母が脳梗塞を起こして、本人が運転したいと思っても、止めさせました。母は79歳。そういう人、意外と多いんじゃないかな。それをプラスに変えていけるような何かがあればと思うのですが…。

ここまでを通して、伊東さんからは、高齢化に伴う交通の便については世代間によって捉え方が違うことは全国的に共通としたうえで、後半のワークショップに向けてさらに議論が面白くなる視点を2つ提示してくれました。

1. 買い物という視点から見ると、これは流通の問題でもある。買い物に行かなくて、むしろ売りに来るという発想もあるのではないか?
2. 大きな視点で見たときに、街は移動している。自然の猛威であったり、社会的な問題かも。だから現代における雪、高齢化の問題は、もしかしたら全体的な、皆で移住しましょうね、という。そういう考え方も視点としてあるのでは?

交通の便1つとっても、シェアリングという手法もあれば、生活の範囲で絞ったならば近距離で済むような「買い物を届けにいく」という切り口、「なぜそこに住み続けるのか?」というそもそもの問い立てがあったりと、異なるアプローチがあるのだと気づかされます。普段、何気なく過ごしている暮らしの中にも、立場や視点の異なる人と議論することで、新しい着眼点を得られると示したうえで、次のテーマへと議論を展開していきました。

ネガティブな当たり前もグッドニュースに「10代が働きたい場所がないと思うのはなぜ?」

次のテーマは、アンケートの中でも最もショッキングな結果だった「10代が働きたい場所がないと思うのはなぜか?」という問いです。さらに驚いたのは、会場のほとんどの人が「ここには仕事はない。自分のいる場所ではない」と若い時に思っていたし、ある意味健全という意見が出たことでしょうか。
その中で、10代の湯沢市民として「仕事をしてみないと、働くということが分からない」と話してくれたのは、篠原君。

篠原君:(起業をする前までは)湯沢に何があるとか全然知らなかったです。映像の仕事でロケ地に回ると、いろんな場所があるなと。

地元の学校に通う篠原君は、現在高校1年生で起業しています。周りの友達からすると容易ではない選択肢に感じられますが、その経緯についても語ってくれました。

篠原君:最初はやるつもりも全然なかった。ある団体の方におされて、今までやってきたことを、自分のサービスとして提供すれば、自分の範囲が広まるって。それで始めたので、そのときは湯沢のためとか全然なかったのが正直なところです。でも、高校生が起業するというのは、湯沢に話題性や刺激を与えているんじゃないかなと。商店街にも活気が戻る一つの切り口になればいいなと、最近は思っています。

篠原君の話は、若者の得意なことや好きなことを見つけて背中を押してあげれるカッコいい大人の存在と、そういう大人たちと出会えているかどうかが重要ではないかという視点を投げかけてくれたように思います。

“若者は外に出るもの”という地方では当たり前のように受け入れられている事実に対して、“むしろ地元の尾鷲に残った側”の伊東さんは、尾鷲でも高校生が残る割合は3%程度と、25年前の当時と比べても全国的に大きなズレはないとしたうえで、「社会情勢が、田舎で生きている人の暮らしや働き方を見直し始めているという変化が起きているのも事実。そのうえで地元に残る人の役割がある」と自身の見解を述べました。

伊東さん:高度成長期の呪いみたいなものもある。東京とりあえず、みたいな。行くのもいいし間違いじゃない。でも地域に残る人の役割はその分重要だと僕は思っています。最近「ニュースメーカー」という言葉を使ってるんです。地方で活動している人は、ニュースメーカーであってほしいなと。「グッドニュースメーカー」になってほしい。良いニュースを地域発で出していくことが、誇らしいものになっていくので。

地元・尾鷲に、大学生や社会人など地域外の若者をたくさん巻き込んでいる伊東さんは、若者から憧れられる場面をつくるために、地域の中にある課題を解決するという手法でグッドニュースを創り出しています。ご自身が尾鷲に残ると決めた25年前と比較して、地方にあるチャンスや可能性についてさらに考えを展開します。

伊東さん:田舎の方が、舞台に上がれるチャンスが多いと思ってます。ニュースメーカーと同時に、自分たちが演じる作品を得られるチャンスが多い、ということでもあるなと。勇気をもって、そこの暮らしを胸を張れるような暮らしを。よりそれが求められる時代に来てると感じます。本当に、ようやく。

“若者は一旦外に出るし、地域のことなんて最初から興味持ってないもの”と、地域では当たり前に捉えられている事象も、地域に残っている私たちがグッドニュースをつくるカッコいい・面白い大人であること、そのニュースを意識してつくりだすことで、篠原君のような地元でチャレンジしてみる若者の背中を押すというさらなるグッドニュースに変える可能性を秘めているのかもしれません。

湯沢の人が本音で語り、街の未来を考える、「湯沢2030会議」。普段は、自分とは縁遠い誰かの困りごとですが、世代や立場の異なる方が揃い、多様な意見が飛び交い始めると、参加者の方も「自分は普段、どうしていたかな?」と自分事に感じ始めるのでしょうか。議論の要所要所で深く頷き、意見を出し始める姿が印象的でした。

まずはVol. 1はここまで。次回はVol. 2、議論の続きとワークショップの様子についてレポートします。

“2030年の未来から、自分たちの街の持続可能性を考える。『湯沢2030会議~私たちの街の10年後を灯すビジョンづくり~』Vol. 2”はこちらから!
https://note.mu/osekkai/n/n7020a2da5eb0

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