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「つくるのってしんどいから、どうせやるならずっと心に残るものを目指したい」 - ゲスト編 #06 外山文治監督

こんにちは、小布施短編映画祭広報です!

「わたしと映画祭」ゲスト編第6弾では、ゲスト審査員の我らが外山文治監督 (以下、外山監督) にお話を伺いました。映画祭には第 1 回目から関わっていただいる外山監督。昨年8月には映画『ソワレ』が公開されました。今回は、監督人生の原点や、映画祭への思い、そして今後の作品づくりについて、じっくりお話を伺いました。

インタビュアーは、きろ、なほ、こよみの実行委員3名が務めました。

外山文治 プロフィール
(小布施短編映画祭プロデューサー/映画監督)
1980年生まれ、福岡県出身。日本映画学校(現・日本映画大学)演出ゼミ卒。
老老介護の厳しい現実を見つめた短篇映画『此の岸のこと』が 海外の映画祭で多数上映され、
「モナコ国際映画祭 2011」で短編部門・最優秀作品賞をはじめ5冠を達成。
長編映画監督デビューを飾った映画『燦燦ーさんさんー』(東京テアトル)は全国36館にて
上映され「モントリオール世界映画祭2014」より正式招待を受ける。
2017年、芳根京子主演『わさび』、吉行和子主演『春なれや』など、製作・監督・脚本・宣伝・
配給を個人で行う「映画監督外山文治短編作品集」を発表し、ユーロスペースの2週間レイトショー
観客動員数歴代1位を樹立。
2020年、豊原功補、小泉今日子らと共に「新世界合同会社」を立ち上げ、村上虹郎・芋生悠W主演
の長編映画『ソワレ』(東京テアトル)を公開。

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外山監督にとっての映画祭とは

なほ まずは小布施短編映画祭に関わり始めたきっかけを教えてください。

外山監督 1回目の映画祭のときに、特別上映で特集を組んでいただいたんです。呼ばれて初めて小布施というまちを知りました。実際に映画祭に行ってみると、映画祭自体の居心地が良かったし、若くてエネルギッシュで、イメージしていたものと全然違いました。そうして2回目からも手伝いたいと思いました。

きろ 実行委員のひとりの奥さんが、外山監督のファンだったんですよね笑

なほ 監督にとって、映画祭に呼ばれるのってどんな気持ちなんですか?

外山監督 上映してもらえる喜びはあるけど、でもみんな無邪気じゃない。「うれしかった」だけじゃ終われないんです。「映画祭で誰かが自分を見つけてくれるかもしれない」「プロデューサーが企画を持ちかけてくれるかもしれない」という想いもある。自分自身、悔しい思いもたくさんしました。終わったあとのパーティーに収穫を求めていくんだけど、やっぱりなかなか認められず、相手にされない悔しさとずっと闘ってた。今そういう場所に行って、「ソワレ見ましたよ」とか、声をかけられるのは不思議な思いです。いつの間に?って思います。

きろ 転機の一つとなったのが伊参スタジオ映画祭での受賞だと思うのですが、外山監督にとってどういう意味があったんですか?

外山監督 自分は脚本で賞をとりたかったんです。「小説家になりたい」という根源があったので、脚本をつくっている人に憧れていました。そういう中で受賞したことは、「まだやっていい」という証明をもらえたみたいな。そろそろ就職を考える年齢だったけど、25でもまだ続けていいんだと、ほっとしました。熱狂という感じではなかったです。

きろ 印象に残る映画祭はありましたか?

外山監督 日本の映画祭は海外に比べて素敵ですよ。海外の映画祭は、ゲストの満足度とかじゃなくて、映画祭とコミュニティがどうやって豊かになるのかを考えてやっている。日本の映画祭は、クリエイターのことを大事にしてくれる。楽しんでくれているか、悲しい思いをしていないか、考えてくれますよね。モントリオールの映画祭にいったとき、メルセデスでお迎えがきたけど、着いたら通訳はいなくなるし、放置ですよ笑 日本の映画祭のきめ細かさが好きです。

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こよみ 海外の映画祭とそんな違いがあるんですね! 外山監督自身は、どんな映画祭をつくっていきたいですか?

外山監督 やっぱり次に繋がるものにしたい。映画祭って、監督が自分を売っていくための大きな武器にもなるじゃないですか。映画祭というものを貪欲につかってほしいですね。応募する人たちの期待に応えられるよう、登竜門的なかたちになっていくのが理想かなと思っています。

監督人生の原点とこれから

きろ 生まれてはじめて作った作品は短編ですか?

外山監督 そうですよ。高校生の時でした。映画が好きだったし、物語を作る人間になりたかったので、父親のビデオカメラを勝手に使って、同級生たちと撮りました。当時、流行っていたのが、ウォン・カーウァイの『天使の涙』だったんですけど、それをまんまパクったような映画を作りました。『最後の晩餐』という映画で、ノストラダムスの大予言を受けて、20世紀の最後に何を食べるかについての話でした。

こよみ 今、当時の作品を振り返ってどうですか?

外山監督 あれが一番楽しかったんじゃないんですか笑 できあがったとき、自分たちは天才だと言い合った思い出があります。あの喜びが一番良かったと思う。

きろ 『ソワレ』の最後のシーンを思い出しました。

外山監督 実は『ソワレ』の最後も、自分が学生時代に書いた脚本を使ってるんです。もちろん日の目を浴びなかった作品だけど、ああやって成仏させてる。

こよみ 外山監督の学生生活がどんなだったか気になります。

外山監督 あまり授業に行かずに、バイトとかプロの現場の手伝いとかしてました。授業代がもったいないですよね。授業になるととたんに面白くなくなるというか。映画学校で学んだことは、一人暮らしってむずかしいなってことでした。

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きろ 映画学校って何をするんですか?

外山監督 当時の映画学校は 3 年制で、1 年生は脚本、撮影、照明、カメラ、編集、全コースやるんです。入学したときはみんな監督をやりたいんだけど、1 年それを学ぶと、けっこう分かれるんですよね。良い学校でしたよ。今もみんな働いてるし。ソワレの現場にも同級生がいる。

こよみ 授業だけじゃないんですね。人間関係とか、わたしが今年は得られなかったものたち... (※こよみちゃんはコロナ禍の影響を一番受けたであろう大学 1 年生です)

外山監督 学校が充実してたかっていうと、親には申し訳ないけど、そうでもない。そんなにきらきらした世界じゃないんです。映画撮りたいやつは、反体制というか、エッジ効いたやつばっかりでした。みんな悩んでましたよ。屈折してたし。

なほ  今の学生に言いたいことはありますか?

外山監督 30代途中まで、夢がかなわない人生なんて全く価値のないものだと信じてきました。生きるか死ぬかと思ってしがみついていた。でも今になって、全然そんなことないことがわかる、というかね。つまずいたら終わりに見えるけれど、実際そうではない。逆説的に、夢を追ってる人に伝えたい。

なほ 外山監督もつまずいたことがあるんですか!

外山監督 つまづいてばっかですよ。映画祭で探しているような、原石とか、若手監督の枠、というものがあるけれど、自分はそこにはまらなかった。選んでもらえなかったから、誰もレールをひいてくれなかったんです。映画って監督もキャスティングされる側なんですよね。映画を撮れるかどうかは、キャスティング権を握っている人達によって決まる。自分が食えなくなるかどうかも、自分では決められない。でもそれは困るなって思ったんです。だからこそ、自分でレールをひくことを覚えようと思いました。そこでやるかやめるかは、自分にかかっている気がします。

こよみ 外山監督のなかで、映画を続けるかどうかの葛藤はあったんですか?

外山監督 自分の場合、得意なものと好きなものが違ったんです。自分が本来好きなのは、今の作風よりももっと明るいものです。当時は、旬の役者をつかったヒットメーカーになりたかった。母にも言われます、もっと明るい作品を作ればって笑 ちょうど今日も言われましたよ。

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きろ そうなんですね! 作風はどうして変わっていったんですか?

外山監督 人がレールをひかなくなっても、それでも映画を撮ることを続けるためには、自分の中でゆずれないものが必要なんです。自分の場合は、つくるのってしんどいから、どうせやるならずっと心に残るものを目指すようになった。映画監督が人生で撮れる映画って、10本くらいだと思うんです。安くは売れないじゃないですか。

きろ うーん、なるほど。外山監督は、自分のこれからのキャリアについてどう考えていますか?

外山監督 以前は、技術的に稚拙だとか、機材がないとか、そういうなかで短編を作っていたんだけど、それを続けているうちに自分の考えている世界を表現できるようになってきたので、やっぱり映画をあと8本作ることを考えてますよね。今年についていえば、何を発表したらいいんだろうっていうのは考えています。自分は主義主張がある作品を作っているからこそ、じゃあ何を発表するの?と。ちょっと前まではお年寄りの閉塞感、若者の閉塞感をテーマにしてきたけど、今は社会全体の閉塞感じゃないですか。みんな、希望の映画とかほしいのかな。わかんないな。何を求めているんだろう?
予算に関わらず何か突出したもの、ずば抜けたテーマをやらないと、もうちょっときついかなと思ってます。むずかしいですよね。ちょうどいま脚本書いてるけど、希望ねえなって思います。何を見たいんだろうね、みんな。でも、それに応えるのは俺の役目じゃないかもしれないね。

外山監督、お忙しい中ありがとうございました!今、自分は映画に何を求めるんだろう?そんな問いを突きつけられた気がします。小布施短編映画祭で、みなさんが「これが自分が今必要としていた作品だ!」と思えるような出会いがあることを、一実行委員として願っています。




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