見出し画像

【代紋TAKE2】君はまだ本当のクソエンディングを知らない

推し沼に引きずり込みあう妖怪オタクユニット・テラハセのビビリ担当ハセガワです。尊敬する偉大なる先輩・テラウチさんが前回推してくださったのは「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」。

記事を目にしての第一声は「は?」でした。
今までそんなそぶりなかったじゃん! 北斗の拳→らんま1/2→戦慄怪奇ファイルを推すnoteって一体なんなのあと私がビビリだって知ってるじゃないですかふえーん!!!>< って情緒が激しく乱高下しましたね。

ただ、記事を読んで気になってしまったのも事実(さすが大先輩の文章力……)。
乙女走りでダッシュする口裂け女のGIFお待ちしています。


それではいざハセガワのターン。今回は、ずっと気になっていた “もっともクソな最終回の作品とは何か?”という話題でテラウチ先輩の興味を引きたいと思います。

「クソ最終回まとめ」などでよく見る(よく見るな)のが、『焼きたて!!ジャぱん』のラスト一コマ。ダルシムの扮装をした河内が、口グセの「なんやて!?」と叫んで終焉——。

画像1

初見の方にはなるほどクソエンディングに思えるでしょうが、実はここに至るまでには多少の伏線があり、多少の文脈があり、多少の情状酌量の余地があるのです。つまり何が言いたいかというと、これを超えるクソ最終回の漫画がある、ということ。

それが「代紋〈エンブレム〉TAKE2」

画像2

「あー……」と青い空を見上げたあなた、同志と呼んでいいですか?

何が腹立たしいかって、最終回までがめちゃくちゃ面白いんです、これ。しかも「この辺とかこの辺とかで匂わせてたもーん」と言われれば「そうですね(怒声)」と返せる程度の伏線も張ってある。それゆえ最終回に賛否両論のある作品なのです。

1990年から2004年まで『週刊ヤングマガジン』で連載されたエンブレム。コミックスにして全62巻の大作で、的場浩司さん主演でドラマ化されています。少し古い(と思ってたら同級生でしたわハハッ)作品なのですが、今読んでも十分に面白い“SFヤクザ漫画”です。

主人公の阿久津丈二(あくつ・じょうじ)は、うだつの上がらないチンピラヤクザ。鉄砲玉の任を追い、対立するヤクザの事務所を襲撃しますが失敗し、ドブの中でミジメな死を……迎えるはずがタイムスリップして、10年前の1979年に生き返っていた。そこから丈二は奮起して、大物ヤクザにのし上がろうと“TAKE2”の人生を歩み始めます。

……どうです面白そうな予感がしませんか? 面白いんですよ!!!

ビビリのくせにヤクザ・ヤンキー漫画が大好きなハセガワによる、最終回以外の激推しポイントはこちら!(※一部ネタバレあり)

■漢・丈二の成り上がりっぷりに惚れ惚れ!
「10年後のミジメな死を回避したい」「金の代紋ぶら下げてのし歩き、自分を死に追いやったヤロウたちにひと泡吹かせたい」といった理由から、イケイケヤクザとして生きることを決めた丈二。背水の陣で挑んだTAKE2の人生は、丈二の想像以上に壮大なものになっていきます。

もともとのポテンシャルを発揮し、末端のチンピラから過激派ヤクザ、一家の組長、そして大規模組織の親分へ……。グイグイ成り上がっていく胸アツ展開がたまりません。『キングダム』を読むならエンブレムを読んでくれ。

ただし! 丈二がただの脳筋チャカぶん回しヤクザなら、ここまでトントン拍子にはいかないでしょう。彼は義理と人情、そして組員を大事にするいにしえのヤクザ。自分が間違っていたら格下が相手でもきちんと謝り、組員のことはどんな手を使っても守る……。そんな男らしい丈二の人柄や、彼のためには命を投げ出すことも厭わない仲間たちにとことん惹かれるのです。

丈二と対立する立場ながら、兄弟のように仲の良かった沖田ツトムの残酷な運命は、完全にロミオとジュリエット

画像7

九州弁モロ出しでバカだけど腕っ節最強な“原爆のアキラ”は永遠に私の推し

画像4

最強に好きな56巻のアキラ置いときますね♡♡♡♡

また、丈二は「●年前の抗争ではXX親分が△△で殺されたんだよな……!」「この日の当たり馬券はこれだった!」みたいに、タイムスリップで得た(失った?)10年間の記憶をむちゃくちゃ活かすのがすごいんです。3日前の晩ごはんの内容ですらおぼろげな私は泣くしかない。

とにかく男心をくすぐりまくるエンブレム、巻頭には時代を感じさせるギリギリどエロなおまけもついていますので、男性諸君はぜひ紙でご覧いただきたい(電子版では非情にもオールカット)。小学生の頃、絶叫する母親に取り上げられたのはいい思ひ出です。

■ゴリゴリの骨太ヤクザストーリーに睡眠時間が奪われる
突然ですが、商業BLを読む中で頻繁に感じることを聞いてくれますか。それは「ヤクザBLが全然ヤクザじゃねぇ」。これ。
そんなナヨい若頭はいないし受け受けしい跡継ぎは生まれないしそもそも世襲制じゃないし(※エンブレム調べ)、っていうかヤクザらしいこと一つもしてなくない??? 惚れた腫れたしかしてなくない??? それはそれで楽しいんですけど。

ちゃんとしたヤクザ漫画である今作には、丈二が成り上がっていく過程でものすごく激しいドラマが盛り込まれていて、それがいちいち読み応えがあるんです。暴動・脅迫・恐喝はお手の物、巧妙な駆け引きと意地の張り合いを、お金や腕力でどうにかする。みんなエンコ詰めるしチャカドスポントウダンピラも振り回すし、耳や腕や首がぽいぽい飛ぶ。もう悲鳴が「ギャン! ギャン!」とかです。

そんでちゃんと出頭するし逮捕もされる。そんなゴリゴリの骨太ストーリーの中でも、特に読んでほしいのが「刑務所暴動編」! 名をあげ始めた時期の丈二は、凶悪犯ばかりが服役する府中刑務所にぶち込まれ、かつての部下やとんでもない看守たちと激闘を繰り広げます。戦いは拡大し、刑務所全体を巻き込む大暴動に……。
「悪党たちが結束するとこんなに怖いんだネ」って思う。

画像5

善良な一般人であれば足を踏み入れることはない府中刑務所。入念な取材がなされたのか、漫画にはかなり詳細な建物の説明図や設定があり、臨場感にゾクゾクします。
ここで丈二が出会ったある関西のヤクザが、その後の展開の大きな鍵を握ることに……。

府中刑務所に入るまでも面白いし、刑務所を出て千葉に行ってからも、東京凱旋後もまた面白い。平気で徹夜できるのでご注意ください(経験談)。

余談ですが、少年院が舞台の「RAINBOW-二舎六房の七人-」も同じようなハイテンションで読み漁った記憶があります。純粋に好きなんだな……。


■宿敵・江原との胸アツ胸クソな戦い
最初の人生で、丈二の死に関わったヤクザの一人が江原。

画像6

丈二と同じ組に所属しながら、硬派ヤクザな丈二とは正反対の経済ヤクザとして、冷酷な手段で登りつめていきます。江原の汚いやり口が許せない丈二は、事あるごとに江原に反発。江原も自分のペースを乱す丈二を潰そうと躍起になります。え……こう書くと完全にBLじゃない ……?

そんな2人の喧嘩がさまざまな悪夢を生んでしまうわけです。まじで! お前のせいで東京がとんでもないことになったんだからな!!!! 
ファッキン江原。腹立つから連載初期のしょぼ絵原をのっけておきます。

画像7

でも「東京壊滅作戦編」はびっくりするほど胸クソ展開で読み応えが尋常じゃないので、そういう意味では感謝している。

丈二もしぶといが、江原もしぶとい。作中きっての圧倒的悪として、最後までこれでもかとあくどい策略をめぐらせまくります。それを邪魔しては潰し、邪魔しては潰す丈二。でも負けない江原。不死鳥のごとく蘇る江原。だって、ヤクザだモン♡

とはいえ江原は、今作において唯一の「選択肢」を持つ超重要なキャラクター。その結末を知った後では、江原のことを「絶対悪」と言うことはできません。大悪党・江原の人間くささ、ヤクザとしての魅力が最も光るのは、皮肉にも最終回なのではないでしょうか。

そんな衝撃のラストは、ぜひご自身の目で確かめていただきたい。62巻分の時間返せってなるから。けど——それでもエンブレムを嫌いにはなれないの。


……という、クソエンディングのための記事のくせして肝心のエンディングに触れない、これが本当のクソエンディングというオチでした。お後がよろしいようで。


(文責/ハセガワ)

この記事が参加している募集

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?