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じゃあな!

 心労から解放されてわたしは無です。
 25日あたりに急遽配信に変更になり、なんか朗読とかいいんじゃない?というプロデューサー兼ドラムスGOTOさんの鶴のひとこえによって急いで仕込みました。朗読は個人的に禁じ手という認識なので以後あんまりやらないと思います!
 映像チームと音響チームがヤバすぎて実物より良い感じかも……?というレベルなのでアーカイブチェック是非宜しくお願いします。小林くんがエロすぎた……。3日までです。
https://perfectmusic.zaiko.io/_item/339553

1.映画
2.贅沢な骨
3.きみを連れてゆく(紺野メイ)
4.Question(紺野メイ)
5.caes
6.無能
7.外科室
8.ずっととおくえ(小林祐介)
9.swandivemori
10.動物寓意譚
11.楽園の君

en. and I love you (Mr.Children)

1988年
ここで暮らしていくということ
すれ違う地獄と、跪いた先に佇むまなこ
鉄の味、落とし物の帽子、汗ばんだそれ
何も知らずに生きていくということ
すれ違う地獄と、跪いた先に佇むまなこ
他の誰でもなく、わたしだけが痛いということ
それは、映画で見た景色だった

1991年
東京タワーが世界で一番高かったころ
かえると二人で暮らしていたころ
太陽を憎んでいたころ
枕詞、わたのそこ
ぼくを運ぶ、呪いのように
追いつけない速さで
何も見ていない目で


1998年
たぶん、ぼくは食べてはいけないものを食べた
割れんばかりの頭痛と、滲んでいく視界が生々しく
舞台は遠く、未来は赤く、あめに歌う
造花の心で、きみの名前を、おもうということ

「痛みますか」
「いいえ、あなただから、あなただから」
こう言いかけて、伯爵夫人はがっくりと仰向きながら、凄冷極まりない最期の眼で、高峰をじっと見守って、
「でも、あなたは、あなたは、私を知りますまい!」
言うやいなや、高峰が手にしたメスに片手を添えて、乳房の下を深く掻き切った。
医学士は真っ蒼になっておののきながら、
「忘れません」
その声、その息、その姿、その声、その息、その姿。
伯爵夫人が嬉しげに、たいそうあどけない微笑を浮かべて高峰の手から手を離し、ばったりと枕に伏すのが見えた。唇の色は、既に変わっていた。
そのときの様子、
まるで二人の身辺には、天なく、地なく、社会なく、世界にぽつんと残されたようだった。


あととはすぐに死ぬ。
なにも食わん。なにも知らん。
旅客機のなか、ぼくは選ばされる。
「フィッシュオアチキン?」
なにも食わん。なにも知らん。
観覧する人々は狂喜している。
ぼくはそれを見て泣き出しそうになった。
愛を歌わないで。
誰もそれに触らないで。

2021年、いま、現在
ここで暮らしていくということ
すれ違う地獄と、跪いた先に佇むまなこ
ちぎれた四肢で、車輪の下で、或いは、孵化した三月で
探す。そして、取り戻す。
楽園の、地獄の、そのちょうど真ん中の、裏返しの、地続きの、変わり果てたきみを

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