定点観読サイエンス 松橋隆司原田浩二編著『これでわかるPFAS汚染 暮らしに侵入した「永遠の化学物質」』2024年2月18日【読書】〜すべてがNになる〜

問題は始まったばかり どう対処

 発がん性が指摘されるPFAS(ピーファス=有機フッ素化合物の総称)による汚染が広がっている。これまで米軍や自衛隊の基地で使用した泡消火剤が水道水源の地下水を汚染、深刻な問題になっている。空調や半導体工場などの周辺の地下水、土壌にも汚染が広がっている。

 有機フッ素化合物の種類は4700以上という。油や水をはじき熱に強い性質が利用され、泡消火剤や、フライパン、防水衣服、ハンバーガーの包み紙まで幅広く暮らしに浸透してきた。

 この化学物質が厄介なのは、「永遠の化学物質」と言われるように自然界に長期間分解されずに残留することだ。製造を止めて済む話ではない。著者は「問題は始まったばかり」と警告する。どう対処したらいいのか。本書はそれに応えた解説書である。

 著者は2002年、小泉昭夫京都大学教授(現名誉教授)のPFAS汚染調査チームに参加。市民団体の血液検査などの調査にも協力してきた。

 本書は2部構成で、1部は、「これだけは知っておきたいピーファス汚染」。汚染がなぜ起きて、どのように広がったのか、健康被害の恐れや欧米の対策、日本の現状と今後の課題などについて、著者は調査体験を踏まえて解説している。

 2部は汚染に立ち向かう各地の市民団体の報告―。▽沖縄、嘉手納・普天間基地周辺の地下水汚染―子どもたちの未来に美(ちゅ)ら水を取り戻したい(町田直美)▽東京・多摩の地下水汚染と血液検査から緊急対策を求める(根木山幸夫)▽愛知県豊山町の水道水汚染―血液検査から汚染源の特定へ(坪井由実)▽大阪府摂津市から、大企業の世界的汚染に声を上げる(増永わき)▽「命の水を守るために、いま私たちができること」(著者)

 著者は、市民が声をあげることの大事さにも触れ、本書をこう結んでいる。

 「今後ピーファスに限らず、環境問題で重要となるのは、こういった市民の活動に対して、研究者が協力し、連帯することだと考えています」

 (サイエンスライター)

 合同出版・1300円

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