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【洋書多読】Troublemaker(210冊目)

『Troublemaker』by John Cho
 総語数:45,059 words (Word Counters)
 開始日:2023年1月26日
 読了日:2023年1月31日
 多読総語数:7,580,031 words(※)

(※語数のカウント法の見直し等で変動する可能性があります)

先月になるのですが、『Troublemaker』という児童書を読み終えました。

本書は僕が大好きな渡辺由佳里さんが『洋書ファンクラブ』というサイトで紹介されていた児童書です。

1992年の「ロス暴動」を背景に、アメリカにおける人種差別問題・重問題という比較的難しいテーマを取り扱ったお話しである、という渡辺さんのレビューに興味を惹かれて購入しました。

本書が発売された2022年は、ロス暴動からちょうど30年が経過した節目の年です。そんな歴史的な出来事をリアルに生きた著者は、アメリカで有名な韓国人の俳優さんだそうです。

ロス暴動とはなにか?

主人公は韓国人の移民の男の子。この子がなかなかのTroublemakerで、呆れ返ったお父さんから最近口を聞いてもらえない…そんなところから物語はスタートします。

そんな親子間のいざこざの中で発生したのが『ロス暴動』でした。”ロドニー・キングという黒人男性がロサンゼルス市内を運転中にスピード違反容疑で停止を命じられたのち逃亡し現行犯逮捕された事件”(Wikipediaより引用)です。

ビデオをご覧いただければ明らかなように、起訴された警察官の過剰とも言えるロドニー・キング氏に対する暴行に、裁判官は無罪を言い渡しました。この事件は多民族都市でもあるロサンゼルスで起きたことから人種問題に発展し、暴動という形をとって、ロサンゼルスに緊急事態宣言が発令されるまでに発展します。

ロドニー・キング氏が暴行される姿は、あたかもあのジョージ・フロイド氏のビデオを見ているかのようです。

1992年、あのときのロサンゼルスを舞台に描かれる、韓国系移民親子のお話

本書の舞台はそんな1992年のロサンゼルスです。

暴動の発生地に近いコリアタウンで商店を営むお父さん。そのお父さんにかっこいいところを見せて、失われてしまった信頼を回復するんだ。自分が決してダメな子ではないということを証明するために、非常事態宣言が発令されている最中、彼はある行動に出ることを決意をします。

もう一つ、本書は現代アメリカの膿みとも言える「銃社会」というテーマも同時に取り扱っています

コロナ禍におけるジョージ・フロイド事件があぶり出したアメリカにおける人種差別。「自衛のための銃」が社会にもたらす不安・混乱と、銃を所持することの意味。

「自由の国」の人々を苦しめるこれらのデリケートな問題取り扱うのは非常に難しいはずですが、そんな高尚なテーマについて、子供にも理解しやすいと思われる主人公の少年の冒険譚を通じて考える機会を与えてくれるのが本書です。

英語は大変読みやすいですが、ナメてかかると大変です!

英語は児童書だけあってとても読みやすく、かつお話がテンポよく展開していくのでさくさく読み進めることができます。

このくらいの洋書を読みこなせるようになると、あとは楽しみながら英語をぐんぐん伸ばしていくことができる。そんなレベル感の一冊です。

けっして難しいわけではない、でも簡単に読み進められるというほどのシロモノでもない。おそらくネイティブの小学校高学年〜中学生あたりをターゲットにしていると思われる『Troublemaker』の英語は、日本でコツコツ学習に励みながら英語力アップを目指す私たち大人の日本人英語学習者にとても有益だと思いました。

アメリカにおける社会問題をど真ん中に据えて取り扱っているので、子供向けの娯楽読み物と思ってナメてかかるとしっぺ返しを喰らってしまうと思います。

英検準一級〜一級の長文読解問題として出題されそうな500文字くらいのエッセイを小説というスタイルをもちいて書いている、と言うのが近いかもしれません。

お勉強としてではなく、物語を味わうように読んで、多読的読み方に触れてほしい!

英検準一級〜といえば、本書は児童書なので、簡単な単語で構成されたいわゆる「句動詞」が頻出します。それがまさに『英検準一級 出る順パス単−熟語編−』に掲載されている句動詞ばかりなんです。

概して単語学習用書籍の後ろの方に掲載されている「熟語/句動詞」、日本人英語学習者は、ついつい単語の方にばかり意識が行ってしまってこちらを「巻末付録」程度に扱ってしまい、学習するのをおろそかにしてしまいがちですが、本書に限らず、このレベルの洋書児童書はむしろこの「句動詞」を知っている、知らないではニュアンスがかなり変わってくると思います。

これは自分の洋書の児童書多読経験から、確信を持って言うことができます。

ただ、多読をしているとこの辺の句動詞に対する感覚(もう少し正確に言うと「前置詞/副詞」に対する感覚)が磨かれてくるので、「Bob's your uncle=これで万事OK!」みたいなとんでもないやつ以外は、割と前置詞の質感で意味がわかるようになるものです(もちろん「Bob's your uncle」も、前後の文脈から用意に意味が推測できるようになるはずですが)。

そういう「意味を推測しながら」「物語を楽しむように(わからない単語をいちいち調べないで)読む」という、渡辺由佳里さんが強く推奨されている洋書の読み方に触れるのにもまた、絶好の一冊なんじゃないかと思います。

英語学習者の大人の方にこそおすすめしたい一冊です。

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