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『英語のハノン(中級)』を終えた感想−個人的所感を中心に(前編)

『英語のハノン』を使い始めて10ヶ月。今朝「中級」編の2周目を終えることができました。

百花繚乱の英語学習参考書業界にあって質実剛健、まさに「英語が話せるようになりたい人のための」スピーキングドリルである「英語のハノン」。

しかしながら、決してリーダーフレンドリーであるとはいい難い紙面構成や、タフな音声ドリルが理由で本書のポテンシャルを十分引き出すことができず、ネット上にダラダラと批判の記事やツイートを流して溜飲を下げている残念な英語学習者の方が多いのも事実です。

その辺が本書の「賛否両論」を形成しているのですが、個人としては「否(非)のうちどころがない」英語学習参考書だと思っており、英語コーチングでも数多くのクライエントさんに学習していただき、大きな成果を感じ取っていただいているところです。

そこで今日は、半年間の「初級」、そして4ヶ月目に突入している「中級」を使ったことで感じているコト、得られた効果について、個人的な所感を中心にご紹介してみようと思います。

きちんとこの書籍をやり込んだ僕だからこそかける、渾身の記事です笑

『英語のハノン(中級)』の難易度に関する話

日本では「英語学習中級者バブル」が起きていて、皆さん大体はご自身のことを「中級」であると思っておられます。

でも、具体的に何を持って「中級」と呼ぶかって結構曖昧です。そしてこのことが「中級」と銘打たれた本書があらぬ批判を被っている一因になっているという気がしないでもありません。

そこで本書の真の「レベル感」を、英語コーチとしてたくさんのクライエントさんの指導にあたってきた立場から、まずは詳らかにしていきたいと思います。

「読める=理解できる」と「話せる=口にできる」は違う

『英語のハノン中級』は大きく分けて「形容詞節以外の従属節を使った複文」と「未来/過去完了・比較級・最上級」という英文法を軸に構成されています。

「従属節」は副詞節と名詞節を中心に、「比較級」は原級比較から最上級まで、中学〜高校英文法でおなじみのベーシックなものから、受験英語の代名詞として悪名高い「クジラ構文」(no more 〜 than…)まで、本当に幅広い文法事項を扱っています。

本書によると、この辺りの英文法はだいたいネイティブの高校生〜大学生が日常会話で使う表現だそうです。

そしてネイティブの高校生〜大学生レベルの英語が話せれば、日本人であればもう立派な「上級者」になります。まずここを認識しておきたいです。

例えば名詞節を作る従属節のif/whether、これ、読めて・書けても「話せる人=自由に使いこなせている人」に、僕は今までお目にかかったことがありません。ifはいけてもwhetherは怪しんじゃないでしょうか。

比較級についても同様です。「比較級・最上級」という英文法それ自体は日本の中学2年生でならうレベルの文法で、ベーシックなものは使いこなせる人は多いと思いますが「as +形容詞+(a/an)+名詞」(It is as common a phenomenon in Paris as in London.)の語の並びで「え?」ってフリーズしちゃう人、結構いませんか?

受験エリートの方なら、このくらいの英語は「読めて」「書ける」と思いますが、これとっさに口から出せますか?あるいは、ネイティブのカジュアルな会話/高速のリスニングで、頭からサラッと意味が取れますか?(脳内で日本語処理せず英語のままで、という意味)

多分取れないと思います。そしてこれが、僕を含めた日本の「自称中級英語学習者」の方の限界であり現実です。申し訳ないけれど、この程度の英文法は外国のポッドキャストなりYouTubeを聞いたり観たりしているとしょっちゅう耳にします。下手すると児童が視聴するようなコンテンツでも使われているわけです。

よしんば意味が取れたとしても、実際に会話で通用するレベルで瞬間英作文せよ、と言われればできる人はまずいないと思います。

クジラ構文だって同様です。でも、ネイティブの知的な人たちは割とこれ使って話すそうです。オバマ大統領の大統領就任演説でも出てきました。

大統領の就任演説の英語は「あらゆる階層の国民にわかる英語で」話される必要があることから、比較的難易度の低い、わかりやすい英語と言われています。「大統領の演説だから上級レベル」なんて言ってるのは日本人くらいのもんじゃないでしょうか。

つまり「こんな特殊な構文は使わない」「高校で習う英文法は会話では意味がない」などと勝手にジャッジして自分の英語レベルの上に胡座をかき、練習を怠っているのはわたしたちくらいのものなんです。

自称中級者の僕達は、今一度、いろんな角度から自分に英語力を客観的に把握し、真摯に向き合う必要がある、そんな風に思っています。でないと、せっかくなこの世紀の名著を使いこなせないまま、また新たな「英語学習参考書ホッピング」に出ることになりますよ?

ハノンは「口から出せるようにするための」ドリル

英語のハノンのドリルの目的は「口から滑らかに、これらの複雑な(僕らが複雑と思いこんでいる)文章が口に出せるようになること」です。

でも、英語のハノンの残念な批判者の多くは「読めるから簡単=何が中級だ?」「どうしてこれが売れてるんだ?」という、明後日の方向を向いた批判を展開しています。

問題は「口頭でスムーズにアウトプットできるかどうか?」です。これができれば「聞く・読む・書く」全てをカバーできる。これが「英語のハノン」が照準しているところである、僕はそう理解しています。

そして「オーラル(口で)」でスムーズにアウトプットできるようになるためには、飽くなき反復練習、コレしかないんです。読めても読めるだけで話せやしません。アタリマエのことです。

同じ文章を何十回も口に出すことで、ようやく少しずつ口に馴染んでくる。そうすると、なにかとっさの時にさっと自分の言葉として、その英文が口をついて出てくる。あるいは、ネイティブ同士の会話を聞いていて「あ、これハノンでやったやつだ!」って気づく(これ、めちゃめちゃ経験しますよ)。

そんな効果を実感するためには、やっぱり最低でも30分、できるなら一時間くらいは一つの「ドリル」を(ユニットじゃないです、ドリルです)繰り返し繰り返し口にして練習しないといけないはずです。これは英検一級・TOEIC925点、海外生活3年半の僕でさえも、中級なら毎日1時間くらいかけてトレーニングしないと「使えるレベルになったと思えない」という日々のトレーニングの実感に基づいています。

でも、ハノンを叩く人って、多分ここまでやってないです。と言うか、やってないからこのドリルの真の効用とか、難しさとか、それを終えたときの達成感を感じることができないんだと思います。やらずに外野からぐちゃぐちゃ野次を飛ばしているに過ぎません。

いってみれば、甲子園球場でプロの野球選手に口汚い野次を飛ばしている、泥酔したビール腹の中年のおっさんと同じようなもんです。見苦しいったらありゃしません。

そういう「ノイズ」に耳を傾ける必要はありません。これは自分がハノンを10ヶ月間回し続けたことと、同じようにハノンを学習に取り入れて英語力を「グン」と伸ばしてくださったクライエントさんを指導させていただいた経験から、自信を持って言うことができます。

逆に、きちんとやってみもせずに批判ばかりしている人は「4択穴埋め問題」を高速に解答できることが英語力であるのだと勘違いしたまま過ごしていればいいと思います。それはそれで幸福なことですしね。

『英語のハノン(中級)』を終えて感じている効果

では、お待ちかねの『英語のハノン(中級)』を本書のインストラクションに従って3〜4ヶ月実施して得られた効果について、僕自身の経験をご紹介していきたいと思います。ちなみに、中級の前には「初級」を半年やりこんでいます。

1.リスニング力バク上がり

僕は毎日朝一時間程度ポッドキャストを聞いていますが、リスニング力に明らかな伸びを感じたのは、中級を半分ほど終えたときからです。

これはおそらく、「中級」前半の複文を閉本でトレーニングしたことで、比較的長めの文章を一時記憶に脳に記憶したのちアウトプットするという負荷を毎日一時間くらいかけ続けた結果、脳のリテンション能力(記憶保持能力)が向上したためだと思います。

一度に処理できる英単語の物理的な量が増えたので、無駄な脳のリソースを使用することがなくなった、で、余った脳のリソースを「聞こえてきた音の意味理解」割くことができるようになった。これがリスニング力が上がったと思われるメカニズムです。

また、当然ですが、毎日毎日英語のハノンの音声を「聴いて真似る」を繰り返しているので、英語の音に対する感度も向上しますし、なにより「言える音は聞き取れる」という法則がありますので、英語の音を聞き取る力もバク上がりです。

簡単にまとめると「聴いて真似ることで発音が良くなる」→「出せる音は聞けるので、音への感受性が増す」→「リテンション能力が向上しているので、聞こえてきた音を処理する脳のスペースが空いている」→「聞き取った英語を理解できる」ということになるんだろうと思います。

具体的には、以下にリンクを張っているPodcastを、別にあまり苦もなく聞き取って、楽しんでいる感じです。「英語のリスニングをやっている!」という感覚さえ、今はもうありません。わざわざ聞こえてきた音を日本語に訳しもしません。英語のまま聞いている感じです。これはハノンのおかげです。

興味のある方はためにしどうぞ。これが聞ければ立派な「英語中級者」と言っていいと思います。

今は『This American Life』がこのレベルで聞き取れるようになることが目的です。

2.ライティングがスムーズに

英語コーチングでは、一部の方に「英語のエッセイの提出」をお願いしていて、その添削も基本的は英語でやっています。で、最後にコメントや僕自身の所感を添えて返信するんですが(これが結構好評です。手前味噌やけど)、この時に英文をアウトプットするスピードが格段に上がりました。

そしてもちろん、「ハノン」で練習した表現を使って書いています。本当に「さらさら〜」っと書ける感じです。今までは100字くらいの英文を書くにも30分くらいかけてウンウンうなりながら書いていましたが、今は、「中級」に乗っているレベルの英文法(=日本の大学受験レベルということです)を使ってものの10分くらいでさーっと書いて返信しています。

もちろん、毎日書いていることで慣れてきたとか、並行している単語学習の効用とか、いろんな相乗効果が働いていることは明らかですが、少なくとも「英文法」に関しては、ハノンで学習したこと=つまり口をついてスラスラ言えるようになること=がライティング力向上に大いに効いているというのは明らかです。

3.読むスピード上がっています

かれこれ4年位「英語多読」といって、ネイティブがネイティブに向けて書いた洋書を読んでいます。

これは僕が英語力向上に最高に効くと思っている学習法なんですが、「口をついてでてくる英文の量」が増えると「読むのがとても早くなり」ます。

よくTOEICで「問題を最後まで解けない」という人がいらっしゃいます。制限時間内に全部問題文を読みきれないんですね。実は僕も最後にTOEICを受験した1年半前は、2問だけ問題を残してしまいました(で、R:430点でした)でも僕は今なら多分、そんなに苦もなく最後まで読みきれるだろうと思っています。

それは「英語のハノン」をやり始めてから「リテンション能力(前述)」が向上したからです。聞くときと同様、読む時にも一度に処理できる英語の量が向上しているので、結果的に英文を「単語単位」から「句単位」で、つまり文の塊ごとに一気に処理できるようになったんですね。これが「読むスピードが上がった」ことの理由だと思っています。

4.スピーキング力も上がってます(多分)

読む・聞く・書く能力の向上が実感できているんだから「話す」が伸びないはずはありません。が、「多分」と銘打っているのは、今の僕には「話す」機会が全くと言っていいほどないからです。

ただ、思い出した時に発作的にやっている「独り言英会話」での英文のアウトプット力は格段に上がっている印象があります。あとはこれが実践の英会話でどう出るか?です。

これから海外への扉もどんどん開いていきそうな気配ですし、ここはぜひ『英語のハノン』を使った学習の集大成として、そしてコロナ禍2年半の集大成として、海外に出てみるのもいいかなぁと思っています。

明日は「各論」をお届けします

そんなわけで、今日は『英語のハノン中級』について、2周目を終えた今の個人的な所感を中心にその効用についてお話してみました。

次回はもう少し具体的な「中級」を使った学習について書かせていただこうと思っています。

以前「初級」を使った学習方法に関する記事も書かせていただいたこともあるので、この参考書を使った学習に興味がお有りの方はこちらも是非参考にしてみてください。

また「初級」を半年間学習した後に感じた効果についての記事はこちらになります。


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