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【洋書多読】A Wrinkle in Time(245冊目)

A Wrinkle in Time by Madeleine L'Engle
 
総語数: 49,965 Words (by Word Counters)
 開始日:2024年2月14日
 読了日:2024年2月24日
 多読総語数: 10,111,912 words

『A Wrinkle in Time』を読了しました。

本書は米国では古典とも呼ばれるSFもので、初出は1962年です。個人的には以前読んだ『When You Reach Me』という同じくフィクションの洋書の児童書で言及されていたのがきっかけとなり、手に取ることにしました。

いつも参考にさせていただいている「えいらく」さんの多読のサイトでは「YL7.2」と表記されているので、読むのは相当骨が折れるだろうと思ってずっと敬遠していたのですが、先日無事多読1000万語を達成したこともあり、今ならもう手にとってみてもそれなりに読めるかもしれないとおもって、購入しました。

ところどころ「?」という英語表現があったものの(僕の英語力不足によって理解が届かなかったという意味です)無事最後まで読み通すことができました。

設定はやや古い感じがするけれど…

『A Wrinkle in Time』は、今から半世紀以上も前のSF小説ですから、読んでいて設定がちょっと古めかしい、と思う所も多いです。言ってみれば、今の僕たちが「ウルトラマン」のような60年代の特撮ものを見るようなもの。CGやAIがここまで発展した現代においてはやっぱりやや物足りなさを感じるのは否めないところです。

お話だってそんなにスリリングなものでもありませんし、どちらかと言うとありきたりな設定だったりします。が、つかわれている英単語はそれなりに難しいものも多い上、5次元について言及されているところなどは「本当にこんなのを読んで子供が理解できるのか?」と思いました。

なので一般的な英語多読用の洋書としておすすめすることは若干はばかられる、というのが正直なところです。読みにくいし、単語もそんなに易しくないし、お話はありきたりだし。

あくまで、僕のように「以前読んでオモシロイと思った本で言及されていたから」みたいな理由とか、古今東西のSFもの・ファンタジー物に興味があるとか、そういうちょっと特別な事情がない方にはあまりおすすめできない代物ではあると思います。

ハリー・ポッターの方が多読用としてはいいです

「初心者が手を出してやけどする洋書多読本」として名高い『ハリー・ポッターシリーズ」。『A Wrinkle in Time』は正直ハリポタ英語版よりも難易度は高く読みにくいので、同じくらいのレベル感で楽しくリラックスして英語力を伸ばしたい…という方には100%ハリー・ポッターシリーズをおすすめします。

ハリポタを全巻(7巻だったか)読みおおせる頃にはあなたの英語力はネイティブレベルになっていることでしょう。

とはいえ、繰り返しになりますがハリー・ポッターもかなりの難易度です。英語中級〜上級者の方、TOEICは800点以上、英検なら準一級に軽く合格できるレベルの方でないと読めないのがハリポタですが、ハリポタが読める英語力があるなら、『A Wrinkle in Time』よりもそちらを読んでいただいたほうが「学習効率」という観点からは遥かにいいと思います。

ただ、個人的には英語習得に「効率」とか「費用対効果」みたいな考え方を導入するのはナンセンスだと思っていますし(これはまた別の長い話になります)、そういう考え方の英語学習者の方というのは、得てして英語力を満足の行くところまで伸ばすことができないまま、中途半端なところで学習を辞めてしまったりすることが多い。英語コーチとしての僕の経験はそんなことを僕に教えてくれました。

レヴィ=ストロースのブリコルール的多読教材としての『A Wrinkle in Time』

そんなわけで、ずいぶんな書き方になってしまいましたが、『A Wrinkle in Time』を洋書多読の文脈でレビューしてみました。

ただ、僕のこのnoteを読んでくださっている方は「英語学習には無駄というものは1ミリもない」ということを僕が繰り返し強調していることは、すでにご承知のとおりかと思います。

英語学習には「効率」という考え方は馴染みません。もちろん短期的なゴールを設定したときに、そこに至る道筋としてということであれば、効率/非効率というのはそれなりの議論の余地があるのかもしれません。

ただ、英語に限らず語学の習得というのは何年、何十年というスケールで語られるべきことです。そこでは「以前役に立たないと思っていた学習がこういう形で役に立つのか…!」ということがしばしば起こります。

20世紀の偉大な人類学者レヴィ=ストロースは、アマゾンの未開民族の研究の中で、この「なんの役に立つかわからないけど、とりあえず今はキープしておくべきもの」を収集して活用する未開人の習性を「ブリコラージュ」と名付け、現代における短絡的・近視眼的物質主義の対局にある人類の叡智として位置づけました。

この仕事を持って、レヴィ=ストロースは人類学にとどまらず、それ以降の現代西洋哲学の歴史に名を残す偉大な思想家となったわけですが、私達もそのひそみに倣って「今はよくわからないけれど、いずれ何かの役に立つかもしれない」という洋書多読的ブリコルールとなるべく『A Wrinkle in Time』を手にとってみるのもそれはそれで悪くない、そんな風に思ったりしています。


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