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【洋書多読】Give and Take(246冊目)

Give and Take by Adam Grant
 
総語数: 102,950 Words (by 本のランキング多読王国)
 開始日:2024年2月25日
 読了日:2024年3月7日
 多読総語数: 10,214,862 words

Adam Grant著の『Give and Take:Why Helping Others Drives Our Success』を読了しました。

以前同じ著者の『Originals』を読んで以来すっかりAdam Grantのファンになってしまっていた僕ですが、今回の『Give and Take』は期待を上回る、僕好みの一冊でした。

本書は『GIVE AND TAKE:与える人ほど成功する時代』というタイトルで邦訳版が出版されていますが、本書の内容はまさにこの副題のとおり。

成功しているは他者に「与える人=Giver」であり、自己利益の増大を優先的に配慮する「奪う人=Taker」は中長期的にみると自身を傷つけ他者からの信用を損なっているという事例を、組織心理学者としての立場から科学的に証明してみせた一冊です。

世間一般では、あるいは宗教的・スピリチュアリズム的観点からは「他者に優しくすることが、回り回って自分自身を救う」というようなことがよく言われます。

キリスト教の「汝の隣人を愛せよ」然り、仏教の「利他/慈悲心」然り。でも実際のところはどうなんだろう…誰しも一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。

Adam Grantの『Give and Take』は、この命題を科学的な論証に基づいて分析、証明してみせた優れた一冊です。本書を読み終わる頃には「明日から他人に優しくしよう」「奪う人ではなく与える人になろう」というとても優しい気持ちになれるはず。

それだけでも十分一読の価値がると思います。

「Giver」であることへの処方箋

僕は本書の分類でいうと典型的な「Giver=与える人」です。

コロナ禍で帰国して以降の僕は、人間関係には本当に恵まれています。Giverの周りにはGiverが集まる、本書に述べられているとおりです。

でも、精神的にはともかく物質的・経済的にはとてもじゃなけど豊かとはいい難い。そこは本書のとおりとは行かないところなのですが、『Give and Take』には、僕のようにうっかりと搾取されてしまうGiverの特徴や傾向、対処法が書かれています。

これが僕が本書と著者を強く支持するもう一つの理由です。Adam Grantは単に自身の心理学的リサーチの結果を世に出してはい終わり、の学者さんではありません。

では実際にどうすればGiverになれるのか?Takerに騙されないようにするためにはどうすればいいか?GiverのフリをしたTaker(=本書ではFakerと名付けられています)を見抜く方法は?などなど、実生活にすぐに応用できる知見が満載なんです。

それはあたかもGiverであることで被る可能性のある被害を防ぐための、Giverであることに対する処方箋のようです。ここまできちんと視野に入れて自身の学説を深め、それを素人にわかり易い言葉で説明する事ができる著者は本当にすごいと思います。

英語はストレートでわかりやすいが難単語もちらほらと

気になる英語レベルですが、僕が折に触れて参考にさせてもらっている『多読王国』というサイトでは「YLレベル7.2」と表示されていました。

YLが5を超えてくると、TOEICが900点レベルの方でも内容によっては読むのが若干難しくなってくるので、読み進めるのはそれなりにタフであると言わざるを得ないでしょう。

しかしながら、繰り返しになりますがAdam Grantの「分かりにくい話をわかりやすく述べる技術」には本当に素晴らしいものがあります。

本書の英語もそれを反映しているように思われます。難単語はそれなりに出現しますが、妙にこねくり回したような言い回しがなくストレートな表現が多いので頭に入ってきやすいんです。

つかわれている単語はそれなりにファンシーだったりアカデミックだったりします。12000〜15000語レベルの語彙力がないと、単語レベルの高さに辟易してしまうかもしれません。

でも、文法はとてもストレートなので、難単語にぶつかってもある程度意味を推測しながら読みすすめることができるはずです。自己啓発系の本を読み慣れている方、心理学に興味・関心がある方などはもちろん、そうでない方も「意味を推測しながら読みすすめる」という多読のテクニックで語彙力不足を十分に補いながら読めると思います。

ちょっと毛色は違いますが「ややこしい話をわかりやすくストレートな英語で表現する書き手」といえばSimon Sinekを思い出します。この方の英語はもう一段わかりやすいので、児童書に抵抗があってなかなか多読に手を出せない英語初中級者の方にも超おすすめです。


そんなわけで『Give and Take:Why Helping Others Drives Our Success』のレビューを多読的な視点からお届けしてみました。

個人的には、本書が一人でも多くの人の手に取られてみんなが「Giver」になるような、そんな社会になればどんなに素敵だろう…そんなことを思いました。

そしておそらくそれが著者の、本書を世に送り出した理由のひとつなんだろうとも思います。だから英語版を読むのが難しい方は邦訳版を、それもめんどくさい…という方は同書の内容を紹介している彼のTEDトークをぜひ視聴してみてください。

きっと今より少しだけ、他者に対して優しい気持ちになれるはずです。そしてそのことがあなた自身を、そしてあなたが属するコミュニティを生きやすくする。そんなふうに思います。


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