ステファン・コーヴィー著『The 7 Habits of Highly Effective People』を読了しました。

様々な言語に翻訳され、『7つの習慣−人格主義の回復』というタイトルで邦訳版も出版されているという本書、本邦でもかなりの売れ行きだそうですが、僕はどちらも未読でした。

どこかで聞いたことがある話ばかりの内容。なのに…

この本、身もふたもないことを言ってしまうと、書いてあることは「どっかで聞いたことのある話」か「分かっちゃいるけどそれができりゃあ苦労しないんだよ…」っていうような話ばかりです。

例えば、時間管理におけるマトリックスの話なんて、普通に企業で勤めてれば研修なりなんなりで耳にタコができるくらい何度も聞かされる話です。下の図、ご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか？
第二象限の「効果性の領域＝緊急ではないが重要なこと」にどれだけ時間と労力を避けるかが成功の鍵である、というあの話です。

これ以外の主張についても、自己啓発に関する本を手に取ればだいたいどの本でも言及されていそうなことばかり。それらを「人格主義」というキーワードで（本書の邦訳版副題は「人格主義の回復」）一つの主張にまとめあげた著者の功績は素晴らしいと言えますけれど、一方でオリジナリティに溢れているとは言い難いものがあります。

では何をして本書をここまでの世界的なベストセラーたらしめたんだろう？というのが、僕が今日ここでお伝えしたいことです。

英語がとにかく力強くてキレイ

本書の英語はとてもきれいで真っ直ぐに心に入ってくるリズム感のようなものがあります。おそらくは、これこそが本書がベストセラーであるゆえんなんじゃないか、と思うんです。

それはあたかも、「人格主義」を唱える著者の人柄そのものを表しているかのようでもあります。

これだけの内容をはっきりと主張している当の本人が書く文章が醜いものだったり稚拙なものだったりすれば、どれだけ書いてあることが的を射ていようとも、ここまで世界中の人間を虜にしたりはしないはずです。

本書には、英語ネイティブではない僕ですら分かる独特の力強さ、文体があります。読み始めるとある種のドライブがかかり始めて一気に読めてしまう、読まされてしまう。特にやさしく、時にストレートに、流れるようなテクストで、大切にしなければいけないものにも関わらず僕たちが普段そこから目をそらしてしまうようなマインドセットや行為の大切さを説いてくれます。

本書が「自己啓発書」というジャンルに属する一冊であることはもちろん論を待ちませんけれど、そういう大雑把なカテゴライズを乗り越えていく力強さが本書にはあります。それこそが、この本が人をここまでひきつけてやまない原動力になっているんじゃないか？というのが僕のささやかな仮説です。

読むなら英語版。そんな一冊なんじゃないでしょうか？（日本語版読んだことないからわからないけれど）

英語は決してやさしくない。でもとても読みやすい？！

概観すれば、本書で述べられていることは少し難しく感じられるかもしれません。難解とは言わないまでも、英語も決してやさしいものではありません。

でも、それを読ませる良質の文体が本書の最大の特徴です。本書と同じような難易度の単語や表現を使って英検®やTOEIC®の文章が書れたとしたら、少々難易度の高い文章になって受験者を苦しめることになるんじゃないでしょうか？

でも、英語版の『7つの習慣』には、読者を引き込む良質な滋養があります。そしてそういう「滋養の高い」英語というのは、間違いなく私達英語学習者の英語レベルを一段引き上げてくれる力を持っているんです。

英語ができるようになるか否かと言うのは、学習時間や学習の内容よりも、こういう「滋養の高い英語」にどれだけ出会い、触れられるかにかかっていると言っても過言ではありません。「ネイティブがネイティブに向けて書いたテクスト」を僕がしつこくおすすめするのはまさにこのことが理由です。

ただ難しいだけではない、決して易しい言うことはできないけれど心の染み込んでくるテクスト。そういう英語で書かれた文章に触れることは、非常に学習効果の高いものになります。

その典型と言えるのがこの『The 7 Habits of Highly Effective People』の英語であると言えるでしょう。

原書でお読みいただくことを強くお勧めしたい一冊です。