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『英語のハノン(中級)』を終えた感想−個人的所感を中心に(後編)

一昨日の記事で『英語のハノン(中級)』を4ヶ月間学習することで実感している効果についてご紹介しました。

今日は各論として、具体的に『英語のハノン(中級)』で取り上げられている文法事項と、音源を使ったスピーキング練習の方法、気をつけるべき点等について、紹介していきたいと思います。

『英語のハノン(中級)』の構成と内容

中級では英語の「複文」をメインに(本書では「経糸」という言葉を使って説明されています)学習します。それに加えて、表現をより豊かに、洗練されたものにするための「横糸」である「過去完了形/比較級・最上級/倒置」などを学ぶ。これが基本的な構成になっています。

①従属接続詞を駆使して複文を作る(副詞節/名詞節/同格節)
②より細かいニュアンスを伝える(過去・未来完了形/間接話法/原級比較/比較級/最上級/倒置)

これは当然ですが前から順番に進めていくのが基本です。苦手なところだけとか、興味のあるPartだけ、みたいなことをやっていては、本書から得られる学習効果は半減するでしょう。

本全体は14Unitに分かれていて、各ユニットごとに細分化された文法項目について学習していきます。

実際に練習で使うダウンロード音声には、各項目に5つの例文が収録されており、音声内のインストラクションに従って英文を少しずつ変化させながら練習してきます。

これが「ハノン」のメインの学習法です。一音源の長さは2分くらいから7分近くになるものもあります。

『英語のハノン』を使った練習方法

僕は「1日1ドリル」を絶対厳守して、毎日大体45分〜1時間くらい、声を出せる環境で練習していました(今は3周目なので、一日1ユニット進めています)。
やっていて「ポーズの間にすべての英文が言い終えられるくらいまでやり込む」のが「合格」の基準です。1時間を超えて目標に到達できなかった場合は翌日に持ち越すこともしばしばです。

このペースで全93トラックを3ヶ月以上かけて回した後、復習で今度は1日一ユニットを目安に、2週間程度かけて14ユニット、これを2回やって計3周回せば、大体どの音源もスムーズに口にできるようになる、これは初級でも同じようにしていました。

みなさんも、まずはここを目指してください。

音声のスピード

初級編はスロースピードとナチュラルスピードの2つのパターンが有りましたが、中級編はナチュラルスピードのみになっています。

で、この二人のナレーターのうちの男性の方が(マルジさんというらしいです)ものすごく速いスピードで話すので、ほんの少しでも躊躇したり言い直したりすると、前の一文を言い切る前に無情にも次の文章の音声が始まってしまいます。これはアウトなので、これがなくなるまで何度も何度も繰り返し練習する感じです。

マルジさんのトラックでは音を正確に再現しようとすると到底かなわないので、ちょっとカタカナ英語でもいいのでとにかく「スピード」を重視して練習するようにし、女性のトラックのときは結構余裕があるので(マルジさんに比べてスピードが遅い)、英音法を意識しながら丁寧に発音することを心がけています。

余談ですが、マルジさんは多分、英検一級のリスニング問題で音声を担当されているスピーカーじゃないかな?と思います。英検一級対策にもなりそうなハノン中級、最高ですね。

音声変化について

英語のハノンをやっていると、スピーカーの人のナチュラルな英語発音にとても驚かされますが、これは「リンキング」とか「アシミレーション(同化)」「フラッピング」「リダクション」などの、多彩な音声変化が起きているためです。

これは初級で十分に練習してからでないとついていけないと思います。事実、著者の横山先生も「中級は、初級を終わらせていることが前提になっている」と書いておられます。

この辺りは、『英語のハノン初級』の一番最初のUnitである「英音法」の箇所で練習できるので、そこできちんとこれらの特徴的な音声変化を練習した上で「初級」に取り組んだのち、この本を手に取るのが吉でしょう。

ハノンにおいてはとにかく「焦り」は禁物です。なんせ「ハノン」なんだから。

そうでないと、あまりのできなさに多分途中で挫折します。

発音のオンラインレッスンとセットで

発音というのは、意識していないとすぐ崩れてしまうので、ハノンを練習するなら英語の発音を常時モニターして矯正してくれる先生がいると心強いです。

僕のコーチングではここを僕が担当しますが、同時に僕が所属している「クロス・ロードオンライン」というオンライン英会話レッスンを受講してもらい、徹底的に発音の矯正をしてもらいながらハノンを学習していただいています。

じゃないと変な発音な癖が身につくので。どれだけ気を付けていたとしても、日本人である以上、英語をカタカナに読み替えて発音してしまうクセはそう簡単には抜けません。個人的な経験からは、中学生以降に英語を学び始めた方は、一生かかっても抜けないと思います。

で、オンライン発音レッスンと並行してハノンを回していただいているんですが、この相乗効果は凄まじいです。正直言って。

このオンライン英会話スクール、講師の先生が一般的なフィリピン人講師と違って皆さん「英語教授」を本業として講師歴が10年近くになるベテランの講師ばかりです。この学校の先生たちは本当にプロです。でたらめな発音でしゃべるとバンバン直されます。一部の先生はストイックすぎてたまにクレームが出るくらいです。

もちろん、クロス・ロードじゃなくても、発音を教えるのが上手な先生は地球上にたくさんいると思うので、ハノンをやるなら絶対にいい先生に出会ってください。多分習得効率が半端なく変わります。

『英語のハノン中級』で学習する英文法について

冒頭にお話したように、「中級」では「複文」がメインの学習(経糸)になっていて、後半では多彩な表現を学びます。どんな学習をするのか、個人的な所感を交えながらご紹介していきたいと思います。

複文(名詞節・副詞節・同格節)

ifとかwhetherを使った副詞節・名詞節を始めとして、それらの多彩な言い換えや、ついあやふやなままにしてしまう「同格節」も適正なボリュームで学習させてもらえるので、大変ありがたいです。

ちなみに、名詞節が何なのか、副詞節が何なのか?ちょっとわからないという人はもう一度文法をさらっとおさらいしてからハノンをするのがいいと思います。

同格は純粋な暗記作業なので余裕がある時にやればいいです。複文の基本的な構造がわかっていれば、同格は感覚的に乗り越えられます(これがよくないところでもあるんですが)。

この辺りの文法知識を中途半端にあやふやにしたままで音だけ真似て出せるようになったとしても、それでは真の「使える英語」にはなりません。

それから昨日も触れましたが、複文になるのでどうしても一文が長くなります。つまり「閉本」でやると、一度に記憶して処理しなくてはならない英語の絶対量が増えます。でもこれが「高い負荷」となって英語のリテンション能力を押上げ、全体的な英語力を一段も二段も引き上げてくれる原動力になります。

「複文」の「マルジさん」はかなりタフですが、諦めずに頑張りましょう。

過去完了・未来完了

完了形は、比較的サラッと流してくれている印象で、そんなに難しいものもありません。が、特に「過去完了形」は、過去完了大過去用法と過去完了普通用法の違いくらいはベーシックな知識として知っておかないと、学習効果が半減するでしょう。

間接話法

直接話法から間接話法への切り替え、受験英語で練習した記憶がある人も多いんじゃないでしょうか?

うん、こんなの知ってるしできるよ。そうおっしゃる方は、ぜひナチュラルスピードの英語のハノン中級の音源を使って、この瞬時の言い換えを経験してください。最初のうちは、受験エリート的英語力とか、TOEIC900点やそこらの英語力では到底太刀打ちできないドリルにあなたの自信は粉々に打ち砕かれることでしょう。

でも、頑張って乗り越えれば英語が一気にクリアになってきます。この辺の言い換えは、ネイティブが無意識にやっていることを、僕たちノンネイティブのレベルの人間が『体に染み込ませる」ためにとても有用なプラクティスです。ロジックが分かっていることと、それを身体レベルで運用できることは別次元のことなのだ、ということを体感するいいきっかけになると思います。

疑問詞節

僕はずっと、疑問詞が作る名詞節内を疑問文の語順で話してしまうという悪癖に悩まされていました。☓I don't know who is he.とかね。まあこれくらいのシンプルな文章は間違えないけど、名詞節内がちょっと長くなってくると一発でアウトだったんです。

でも、ハノンのUnit10のおかげで、このクセがだいぶ取れました。さり気なく「間接話法」の後ろに「疑問詞がつくる名詞節」を滑り込ませてくれているところも、ちょっとニクイ構成だなと思います。知らず識らずのうちに疑問詞節のPartの予習になっているんですね。

原級比較

原級比較も「頭では分かっているけど、とっさに喋れと言われるとなかなかできない」英文法の代名詞です。

ベーシックなものはできたとしても、例えば「as +形容詞+(a/an)+名詞」(… as common a phenomenon〜)みたいな、不定冠詞の前に形容詞が出るパターンとかは、使いこなせる人ってあまりいないと思います。

これを徹底的に練習させてくれるハノン、やっぱりいいです。あと、原級比較を使った最上級への言い換えとか、絶対に知っておいた方がいいです。

比較級・最上級

原級比較同様、比較級/最上級もわりと「容赦ない」英文法のオンパレードです。特に受験英語として名高い「クジラ構文」なんかも練習させてもらえるところが、個人的にはとてもいいと思っています。

比較級、最上級を使った表現って結構多彩で、割と知らないうちに使ってたりふれてたりすることが多いですが、本書ではここにとてもボリュームを割いてくれています。

「more A than B」の構文とか、twice(2倍), a third(3分の1)といった「差の表現」の練習、さらには「原級比較・比較級を使って最上級の表現をする練習」などなど、受験英語でお目にかかって「知ってるだけ」だった知識を「使える知識」に変えるプラクティスが目白押しで、やってて本当に楽しいです。

これらがきちんと知識として整理されて、口に馴染んでいくことで、仮にこれらを使って話す機械がなかったとしても、日々のPodcastの多聴で出会ってむちゃくちゃスルッと聞き取れたりする経験を繰り返していくうちに、ますます英語のハノンが好きになっていきます。

倒置

本書の一番最後は「倒置」の練習。これまでの文法項目と比べると地味な印象がありますが、いやいやこれ、ネイティブが普段からめちゃくちゃ使ってる表現です。

ここはなんと言っても「no sooner had〜」などの、比較級を使った倒置表現のドリルであるUnit14.2が白眉です。これをやらずしてハノン中級は語れない、そんな気さえしています。

接続詞(副詞節)、過去完了形、比較級、そして倒置。この本のエッセンスがギュッと凝縮された8分になんなんとする長編の音源は、まさに『英語のハノン』中級の卒業試験と言った感じ。ここを閉本でスムーズに言えるようになるころには、きっと新しい英語話者としての地平が見えているはずです。


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