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神様、どうして私に籠の開け方を教えたのですか アニメ『リズと青い鳥』ネタバレ雑記

こんにちはと初めまして。おすぬです。

このお正月、NHKで『響け!ユーフォニアム』シリーズの映画が放送されていました。(春から新シーズンが始まるからですね。)
スピンオフ作品である『リズと青い鳥』は2回ほど見たことがあったのですが、今回もたいそう胸に沁みました。

ネット上にすでにたくさんの考察が出ていると思いますが、この作品への私なりのラブレターとして考察めいたものを書いておきたいと思います。(最初にお断りしますが語彙力が追いついてません泣)



『リズ』は、『響け!』本編の主役の女の子よりも1学年上の代のお話。
「リズと青い鳥」という曲をモチーフに、友情や嫉妬や絶望が描かれます。
単体の作品として楽しめますが、本編のテレビ版を見た方がより理解が深まると思います。

『響け!』が吹奏楽部の人間関係やコンクールの入賞を目指すといった「部活アニメ」であるのに対して、こちらは透明感のある淡い色彩とさまざまなアニメ的な演出、そして環境音楽?のようなシンプルなサウンドで、心の機微をじっくり描いた詩的な作品です。


どっちがリズでどっちが青い鳥?

物語の軸となるのはふたりの少女。
明るく社交的な傘木希美(かさきのぞみ)。(フルート)
ひとりでいることが多く口数も少ない鎧塚(よろいづか)みぞれ。(オーボエ)
ふたりの関係はやや歪(いびつ)で周囲がひそかに心配している。
のぞみ みぞれ 名前も反転してるようでねじれているようで。

『響け!』本編では、前日譚として希美は1年生のときにみぞれに相談も連絡もなく部活を辞め(報連相だいじ)、その後復帰したことが描かれています。それがみぞれの心に影を落としています。
そもそもふたりは同じ中学で、希美みぞれを吹奏楽部に誘った経緯がありました。

ふたりにとって最後のコンクール。
『リズと青い鳥』という物語を題材にした曲を演奏することになります。(このアニメのために創作されたお話と曲のようです。)
3楽章にはフルートとオーボエの重要なソロがあり、リズと青い鳥の別れのシーンを表しているとされます。

ー 劇中劇『リズと青い鳥』 ー
ひとりぼっちの少女リズのところに、ある日青い服青い髪の少女がやってくる。ふたりで仲良く過ごすうちにリズは少女が青い鳥の化身であることに気づく。愛するがゆえにリズは別れを決意する。

フルート(希美)とオーボエ(みぞれ)、どっちがリズでどっちが青い鳥?

希美:リズが逃がした青い鳥って、リズに会いたくなったらまた会いにくればいいと思うんだよね。

みぞれ:私がリズなら青い鳥をずっと閉じ込めておく

渡り廊下を挟んだ音楽室の向かいの教室にいるみぞれ。音楽室にいる希美が手にしたフルートが光を受け、その反射した光が向かいの校舎のみぞれの顔や胸にチラチラ踊っている(ここのみぞれ幸せそう)。少女たちの日常のひとコマ。
フルート=小鳥の暗示のよう。だが果たして。


みぞれの覚醒

みぞれが(リズではなく)青い鳥の視点に立ち物語を理解したとき、ふたりの関係は転機を迎えます。

ふたりが別々の場所でお互いの立ち位置に気づくシーン。ふたりのセリフがシンクロし、ふたりで一人のような、ふたりの役割が入れ替わるような映像が差しはさまれる。

みぞれは3楽章のソロをふだんの姿からは想像もできない意志のある音色で見事に歌い上げる。その演奏に圧倒され、レベルの差に打ちのめされる希美

この演奏シーン、後半はオーボエの切ない音色と、白地の背景に版画のような絵柄の青い鳥が飛び立っていく。誰もが引き込まれる印象深いシーンです。


ふたりのre-joint

冒頭とラストに現れる「disjoint」「joint」という言葉は、おそらく楽器を組み立てることに掛けてますよね。(違うのかな??フルートやオーボエは組み立てる楽器で、接続部分を「ジョイント部」といいます)
※2024.2.25追記
「disjoint」は「互いに素」という意味もあるそうです。数学の授業や希美が数学を解いてる場面もありましたね。共通の約分が1のみ。この1って…部活?友情?

合奏のあと、傷心の希美のもとにみぞれがやってくる。
自分を卑下する希美に「大好きのハグ」をするみぞれ

みぞれは「希美は特別」だといい、過剰なまでの愛情を伝える。
それに対する希美の答えは「みぞれのオーボエが好き」。
やがて希美は笑い出し、真顔になってみぞれにありがとうありがとうと繰り返す。

ここはさまざまな解釈や考察が生まれると思います。(特に希美の笑いやありがとうについて)
希美は期待していたんですよね。「希美のフルートが好き」って言ってくれることを。でもその言葉はもらえなかった。
物語の序盤、みぞれだけが吹奏楽指導の先生から音大を薦められ、希美が人知れず嫉妬している様子が見られました。

ふたりの思いは重ならない。
自分が欲しいもの(特別な友だちになりたい、特別な才能だと思われたい)は得られない。

依存と支配
憧れと嫉妬

実は、互いが互いのリズであり青い鳥だったのではないでしょうか。
皮肉なことに青い鳥を閉じ込めている「鳥かご」は、ふたりをつないでいる楽器なのだと思います。

互いの執着を手放して楽器に向き合ったとき、それぞれの道、それぞれの「愛のかたち」が見えてくる。それがふたりの「re-joint」。

冒頭の登校シーンとラストの下校シーンは呼応しています。
噛み合わなかったふたりが、ラストは「本番がんばろう」と同時に言い合う。

友情、才能への嫉妬、絶望。言葉にしてしまえばよくある青春ストーリーだけど。心にギュッとくるのは、映像と音楽が少女たちの繊細な心の動きをさりげなく示してくれるからではないでしょうか。切ない余韻が残る無二の作品だと思います。


あとがき
この作品世界のなんと愛おしいこと!(語彙力放棄)
メイキング動画を見ましたが、丁寧に丁寧に作られているんですね。見る側も丁寧に丁寧に鑑賞したい。京アニありがとう。
キャラクターデザインの方、あの事件でお亡くなりになってるそうですね。
素晴らしい作品をありがとうございます。ご冥福をお祈りいたします。

あとがきその2
私は吹奏楽部でしたが(昔はブラバンと言った)、『響け!』が出てきたときにはついに吹奏楽部が小説やアニメになったのか!と思いました。(でも『響け!』本編を見たのは今回が初めてです…)

希美の人物像は好き嫌いが分かれそう。でも希美の人間的な弱さは誰の中にもあるものだと思います。
そして希美の挫折に目がいきがちですが、みぞれがじわじわ心を開いて成長している様子も丁寧に描かれているんですよね。
ふたりを見守る優子と夏紀は本当にいい子たちだし、部活群像劇いいですね。

さらにオーボエの後輩ちゃん、ひたすら可愛かった!
X(旧ツイッター)で、後輩ちゃんが希美にあげたゆで卵に意味があったと書いてる人がいて(リンク貼れなくてすみません)これ気づいた人天才!って思いました。(ゆでてるので孵化しないってことだそうです)

おつきあいくださりありがとうございました。

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