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オードリーとラジオ、そして東京ドーム。笑い声が5万倍になった日。

オードリーの東京ドームライブがあった2月18日の深夜、街は来場者に配られた紙袋を持っている人で溢れていた。興奮と感動ですぐホテルに帰る気にもなれず、慣れない街を1時間ほどフラフラと歩き、お腹が空いたので通りがかったラーメン屋さんに入った。閉店間際であったにも関わらず、お店の人は快く席を案内してくれて、同じ紙袋を持った人で溢れていた店内に入った。食べきる頃には他のお客様さんはみんな帰っていて、お礼を言って出ようとした時、店長が話しかけてくれた。

「みんな同じ紙袋持ってるねぇ。おともだちかと思ったよ」

おともだち、確かに。そうかもしれない。店を出て少し歩いてから、もしかして狙っていったのかなと思って振り返ってみたが、暗くなった看板が見えるだけだった。

オードリーのオールナイトニッポンが2009年10月に始まった当時、私は中学三年生だった。今でこそラジオはrajikoやspotifyなどの普及で人気のあるコンテンツに返り咲いているが、当時はラジオをよく聴いています、なんて言おうもんならなんで?とよく聞き返された。テレビをみることに理由はいらなくても、ラジオを聴くことには理由がいるのか!と誰に対してかよくわからない怒りを覚えながらも、深夜ラジオ独特の、自分しか聞いてないような、どこか秘密の居場所のような錯覚は、そういった風潮も相まってより一層深まっていった。

あれから15年たった。高校生の頃は生で聞いていたが、大学の時は通学中にrajikoで聴くようになった。社会人になってからは日曜日に家事をしながら聴いた。そして昨年転職して、今年、結婚する。
オードリーの二人も46歳になる年だ。オードリーが30代だった時、ラジオで誕生日の春日さんに「あれ?43歳だっけ」と若林さんがボケでいって「なんでちょっと上を言うんだよ!」と春日さんがツッこんでいたのが懐かしい。まだまだ30代、とゲストできた谷口さんが言っていたのも懐かしい。今度は自分が30代になる。
時間は思ったよりも経っていたみたいだ。

15年前、広島の片田舎に住む根暗な学生だった私も少しは成長した。それでも根暗は根暗なので、慣れない東京、初めてのドーム、人込み、全部に圧倒された。グッズもどこか恥ずかしくて帽子しか買えなかったし、近くで見たかったけどアリーナは選べなかった。(今からすればチケット当たっただけで幸運だけど)
それでもスタンドの一番前で、二人を見れた。ずっと一人で聴いてきたラジオだ。一人での参加には不安はなかった。そういう人も沢山いたと思う。

始まってからは泣くことと笑うことを何回も繰りかえした。幸せだった。オープニングのアニメは年齢的にもすごく感情移入ができた。(一緒に来る友達はいなかったけど笑)何よりも、このイベントを作っている人たちが、あの映像を制作してくれたことが嬉しかった。15年間という長い間、生活の一部としてラジオがあったこと、それを共有できるイベントがこうして開催できたこと。受け取る側の言葉にできない感情をあの映像が表現してくれていたと思う。そういう空間であることをオードリーが理解してくれているという事実だけで、泣いてしまった。

二人のトークゾーンの時、少し目を閉じてみた。いつもの感覚で聴けるかなと思って。ドーム独特の響きがあったけど、いつも通りのトークも嬉しくって、いつもは自分一人の笑い声が部屋に響くのに、その瞬間はドームに5万倍の笑い声が響いていた。
こんなに泣いてるの自分だけかもと思っていたが、帰って感想を見ていたら、結構みんな泣いてたみたいで驚いた。(ZIPで水卜アナも泣いたと言っていた)
すごくおこがましいけど、この景色をみてる二人の心情を妄想して泣いてしまった部分もあるなと思う。毎週2時間の放送を聞いてたら、ドームにかける思いとか、大変さとかを実際の何百分、何千分の一だと思うけど追体験した感覚になって、その風景の一部に慣れていることもうれしくって。とにかくここにきてよかったと思える幸せな夜だった。

二人はどこまで走り続けてくれるだろう。昔から深夜ラジオには結婚したら辞めてしまうというジンクスがある。少し年齢を重ねたので、そんなことはジンクスでもなんでもなく、当たり前であることが分かるようになった。結婚して、子供がいて、特に二人の場合は土曜日で。家族を思えば開けたいのはもちろんだし、体力的にもつらいし、仕事がなくて困るなんてこともない。もはや続ける理由のほうが一般庶民からすれば想像することが難しい環境だろう。ただそれでも続けてほしいし、続く限りは応援しようと思う。ひとつひとつは意味のない夜かもしれないけど、続けていればこんな素敵な夜につながっているんだなって気づいてしまったし。


あの日の夜、ラーメン屋の店長が帰りがけにまた来てくださいねといってくれた。またこれたらいいなと思う。それが東京ドームじゃなくてもまた二人にあえるイベントだったら、とても幸せだ。








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