チャーミングじじい

7人で「書く日、書くとき、書く場所で」という共同マガジンをやっています。今回は「理想の最期」を共通テーマに書きました。

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“理想の最期”と聞くと、鮮やかな復讐劇に憧れる。

愛する人の命を奪った悪の組織と、世界の果てで対峙したい。

敵は僕に言う「お前の旦那の血は赤かったなぁ」。憎しみを煽る相手に僕は返す。「マルロー(敵の名前)、私がそれくらいで動揺すると思うかい。私ももう、お前と同じ、感情を知らぬ哀れなガランドウよ」

度重なるミラクル技にミラクル技で返し、相手を破滅の淵まで追い込んだ所で、完成間近の最終兵器に火を放ちたい。

(燃える巨神兵的なやつ…!)

「おのれ、太田ぁぁあああああ!!!!」

マルローが叫びながら僕の背中に飛びかかってくる。
僕は振り返って微笑する。

「私もお前も、もう終わりだよ」

スローモーションで体を剣が貫いていく。
ゆっくりと爆破スイッチを押す。

これが僕の理想の最期。

なのだろうか。違うな。全然違いました。

今回のテーマは、かなり自分には難しかった。

人生100年時代だとすると、まだ僕は“ピチピチ”の枠内というか、枠上くらいで、最期とか考えてる場合でもないからだ。

でも色々と考えてみて、分かんないが、分かんないけど「チャーミングじじい」には絶対になりたいと思った。

いつも笑顔で、ダンスが上手な、陽気なじいさんになりたい。

たとえば、もし孫という存在ができていたなら、たくさん遊びたいと思っている。

たびたび一緒におうちを抜け出しては、喫茶店で大きなパフェを食べたい。「ママには内緒だよ」と、ぐふぐふ笑いたい。

夜眠る前は、孫の部屋のドアをこっそりあけて「今日も内緒話しない?」と持ちかけたい。「お菓子が一つあまったら、友だちにあげた方が得するって知ってた?」みたいな、つまんない話なようで人生の秘密のような、やっぱりつまんない話をたくさんしたい。

彼らがもしティーンエイジャーになっていたなら、いつ会ったときでも「なんてかわいいの」「すっごくハンサムだね」と言いたい。有名な女優や俳優みたいな見た目にはなれなくても、世界一素敵だと思ってくれる人が必ずいることを、まずじいさんの態度から感じてほしい。じいさんみたいにこじらせた思春期をおくる必要はないのだ。

あとは夫だ。夫とは一緒に演奏がしたい。手元のおぼつかないへたくそなギターとピアノと歌で、互いの老いをやさしくなでたい。どちらかと言うと下手になっていく僕らの演奏を「今日はここがとっても良かったよ」とほめ合いながら、うまくなってる気がしていたい。

そしてできる限り、手はつなぐようにしたい。僕らの若いころは、男二人で手をつないでいると気持ち悪いと言われたわけで、気弱な僕らはコソコソ話をされながら街を闊歩することができなかったから、青春を取り返すのだ。店員にしきりに「今日はデートなんです」と伝えたい。

何か嬉しいことがあった時は、少し膝が痛くても一緒に踊りたい。手を取り、体を寄せ合う。ん、お腹があたって昔ほどは近づけない。でも、それでいい。ハハハと笑いながら、僕らは出会った頃の二人に戻る。

娘と息子の指示には極力従おうと思う。僕の母がそうだったように「子を信じる」という姿勢に徹することは、自律の意志を育てるのに結局一番有効なんじゃないかと思うのだ。

彼らが悩んだ時には、私はボールのよく跳ね返る壁になる。彼らももう大人だから、私ができるのはきっと壁打ちの相手くらいってもんだろう。

若者たちの話もたくさん聞きたいな。いつも目を輝かせて聞きたい。若者は不安だ。不安が自分の可能性を押しつぶしてしまうことがあるから、ほんの少しでもいい、彼らに勇気を手渡したい。「すごい!」「きっとできるよ!」と、声をかけたい。いつだって時代をよくするのは彼らなのだ。

親しい友人どもの誕生日には、毎年手紙を書こう。「インターハイ出場おめでとう!」とかたいして面白くもないボケから始めて、最後まで内容のない日記のような手紙で押し切りたい。

いつも誰かのことを思い出してニヤニヤしていたい。

海をたくさん見たい。

手のこんだ料理をつくりたい。

ちいさな表現者でいたい。

なにより、やさしくありたい。

そう、なんというか、やさしくありたいと思う。

あまりに野暮な感じがしてここまで言い出せなかったが、それが一番だ。まぁ、分かんないけど。

めっちゃ口うるさいじじいになっていたらどうしよう。
最期まで、何か目標を達成しようと燃えてるのかも。
ていうか結婚できないかもしれないしな。
子どもだって持つのは大変だ。
稼がないと子育てなんて無理だろうな。

そんなことを考えていたら、やっぱり理想の最期とか考えてる場合じゃねぇとなる。どうせ最期も今を生きているはずだから、僕ももっと今を生きるのが筋なのだ。

今日はまだお昼。まだまだやれる。

今が明るければ、未来は明るいのだ。

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ぅちもやっちゅーねん!(倖田來未)
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Naoki Ota

書く日、書く時、書く場所で。

同じテーマで何かを書くとき、僕らは何を書くんだろう。書くストーリーは突然に。 第1回目「始まりと終わりの一文を決めて書く」 第2回目「同じテーマ(理想の最期)で書く」 第3回目「始まりと途中と終わりの一文を決めて書く」 です。
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