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空気は二者間のもの。

今日のお昼頃、ある案件の見積書を作っていた。

僕は、自分の値段をハッキリ数字で確認し合うこの作業がとても苦手で、いつも書き初めでもするかのように背筋が伸びる。今日取り扱った案件は自分の経験が十分とは言えないものだったから、尚のこと力が入って、背筋は鉄柱のようになった。

「……こ、これでいいよな…?」
「いいよ、うん、大丈夫だ」

パソコンにかじりつく勢いで、細かくて弱気な自分と、大胆で強気な自分がコソコソとやり取りをしながら進める。

散々悩んだ挙げ句、結局は見積額も項目も、先輩の見よう見まねになってしまった。こんなことなら、もっと早く相談しておけばよかった。でもまあ、ひとまず完成したのだから、よしとしよう。ドタバタと先方に送った。

外に目をやると、辺りはうっすらとオレンジ色に変わり始めていて、差し込んだ西日がつまさきに触れていることに気付いた。そこからスローなムードが体に染みてきて、背筋の鉄がゆっくり溶ける。ひとまず終わり。今日はこれから、人に会うのだ。

それにしても先方は、まさか僕がこんなにも汗水たらして見積書を作り、何度も何度もメールを読み返してから送信ボタンを押したなんて気付いていないだろうなあと、パソコンを閉じながら思った。

「見積書も添付しておきますね。」

文末に添えられたこの一文からは、余裕すら漂っている。周りから見れば僕も落ち着いて見えるのだろうか。僕はいつになれば、こういう「相場観」に自分の血が通っていない状況に慣れるのだろう。余ったお茶を流しに捨てた。

つまり僕は「空気を読めていないかもしれない」という状態に、なかなか堪えられない。それはもう、昔からずっとそうだ。

「なんかトンチンカンな見積書きましたよ」
「うわ〜、これはひどいね」

そんなことを言われていたらどうしよう、とすぐに考えてしまう。

これはきっと「察する」ということに命をかけて、イジメを切り抜けた小学生の頃の影響なんだと思う。あそこで得た成功体験は「察する力は自分の誇りだ」と僕に思わせるほどになった。だから結局これも、僕のゆがんだプライドのせいなのだと思う。

空気を読めていなかったら謝ればいいし、じゃあこれでどうですか?と空気の読めた返事をすればいい。空気とは二者間に生まれるものなのだから、一方が一瞬で読むべきものではなく、一緒にゆっくりと作っていくものなのだ。

電車に乗りこみスマホを見ていたら、クライアントからもう返事が返ってきていた。

「見積、ありがとうございます!よろしくお願いいたします。」

ほら、やっぱり考えすぎだった。これはどうやらいけそうじゃないか。

今日はいい一日だったなあ。
夕日はフィナーレに近づいて真っ赤だった。

#日記 #エッセイ

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