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監督をつとめたVR作品『告白の日』が公開されます。

東京レインボープライドの2日間(4/28・4/29)、会場となる代々木公園イベント広場にて、僕が脚本・監督をつとめたVR作品『告白の日』がご覧いただけることになりました。

本作は、『VR Angle Shift』シリーズで「ルミエール・ジャパン・アワード2018」準グランプリ・優秀作品賞をW受賞された「株式会社シルバーウッド」さんの新作です。色んなご縁が重なり、脚本・監督を僕にご依頼くださいました。

会場で観れるのは、TRP限定版として特別に編集されたものです。フルバージョンよりは少しシーン数を減らし、”間”の取り方が変わりますが、会場で観ていただくものとしてはこれ以上ない、素晴らしい出来に編集していただいています。

本作は一般公開されるのが今回が初めてで、僕としてはとても緊張しています。ですが制作期間の半年間悩みぬき、いくつも脚本を書き、最後は「これしかない」と信じ、仕上げたものです。

当初「これでいこう」と決まっていた脚本があったのですが、もう撮影に入らないと公開日に間に合わないというタイミングで、「やっぱり違うんじゃないか」とチーム内でなり、ギリギリのスケジュールの中、新たに書き上げました。

「これで外したら、チームをはずれるしかないな」

そう思っていた最終プレゼンの2日前、何も書けていないままに向かった(笑えなくて、笑った)大阪出張からの帰り、僕はふと新幹線の中で父親に手紙を書いてみよう、と思い立ちました。

父は60歳になるまで仕事しかしてこなかったような人で、僕は彼とほとんど話した記憶がありません。だから直接カミングアウトもしていなくて、おそらく、というか絶対僕がゲイだとは知っているのですが、面と向かってそういう話はしたことがありません。

でも最近彼は、僕が大阪に出張に行く度、僕を駅まで迎えに来てくれたり、送ってくれたりします。その間、僕らはたいした会話もしません。だけどもう昔みたいにイラついたりもしない。ほんの少しだけ雑談をして、いつも別れるだけです。

「ありがとう」、そう言うと彼はいつも「はいはい〜」と言います。

きっと彼は何を言えばいいのか分からないのだと思います。そんな彼に、今自分は何を言いたいのだろう。その興味から、筆を走らせました。

手紙は、止まることなく一気に書き終えました。

そして三度読み返し、このままプレゼンの場に持っていこうと決めました。皆さんに作品を観ていただいていない今、詳細を語るべきではないと思いますが、とにかく「これしかない」と思いました。

プレゼンの日、シルバーウッドのオフィスに僕は手紙1枚だけを持ち込み、「これを元にラストシーンを作りたいです」と伝えました。

皆さんは黙って手紙を読んでくれ、世界から音が消えた時間がじっと続きました。すごく晴れた、気持ちのいい朝でした。

しばらくして社長の下河原さんがふーっと深く息を吸って顔をあげ、左右にいたVRチームの黒田さん、大谷さんを見回しました。

「これでいこうよ」

これまで色んな仕事をしてきましたが、あの日あの瞬間は、この先も一生忘れません。

撮影は夏の暑い日、海の近くで行いました。

日ざしにジリジリと体力を奪われる中、撮影は深夜にまで及びましたが、チーム全員が「一瞬も気を抜くまい」という気概に満ちていて、胸が震えました。

ラストシーンは、その長さ・重さから何度も撮影できるものではなかったのですが、主演を演じてくれた成原さん、お父さん役を演じてくださった岩本さんが、今考えたら奇跡にも近いような集中力を見せてくださり、撮り終えることができました。

OKテイクを撮り終えた後、撮影の佐藤さんが「監督、これ以上はないと思います」と、まっすぐに目を見て言ってくださった時は、「あぁ、こうして皆で物を作るんだ。皆で覚悟していくんだ」と学び、背筋が伸びました。

僕が語るようなことではありませんが、ものづくりというのは、100点のものなんて一生作れないんだと思います。でも、だからこそ「これのはずだ」と皆で手を握り合って進み続けることで、作品に意志が宿っていくのだということを知りました。

そしてそうそう、ずっと撮影中は「監督」を呼ばれていました(笑)。

僕の性格上、そういった肩書きはどうにもくすぐったく感じてしまって笑いそうでしたが、そこで笑ってしまっては、皆さんの本気をバカにすることになると思って、一切笑わず「監督」としてやりきりました。どこの馬の骨かも分からないような僕を「監督」として立て、賭け、走り抜いてくださった撮影部隊、シルバーウッドの皆さん、そして役者の皆さんに心から感謝しています。本当にありがとうございました。

皆さんがただならぬ熱量で本作と対峙してくださることが僕は撮影中ずっと嬉しくて、「この先も、お前らのこと一生忘れねえからな!!」という、よく分からないテンションになりました(笑)。

というわけで、これを読んでくださった皆さま、ぜひ会場で『告白の日』、観てやってください。

LGBT当事者の方もたくさんいる会場で、あれを観ていただくことは、想像するだけでも心臓が口から飛び出そうなほど緊張するのですが、これが僕の魂をぶつけたものであるのは紛れも無い真実ですので、ごまかしたりせず、遠慮したりせず、「観てください」と言いたいです。観てください。

僕は二日間、会場にいます。ちょっと他にも仕事があるので、ずっとシルバーウッドさんのブースにいれるわけではありませんが、物陰にかくれながら、ブースを何度も見に行くつもりですので、見つけた方は声でもかけてやってください。

こうして公開する日を迎えるために、頑張ってきました。

この日が来てくれただけで、間違いなく、ひとまず生きてきてよかったです。本当に皆さん、ありがとう。

頑張ったー!

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