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ガンダム完全講義33:第12話「ジオンの脅威」解説Part6

 岡田斗司夫です。

 今日は、ニコ生「岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話」2019/11/19配信分のテキスト全文をお届けします。

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ガンダムマンチョコ開封

 こんばんは、岡田斗司夫です。

 今日は『機動戦士ガンダム』完全講座、もう33回になります。第12話「ジオンの脅威」の第6回、ようやっと、このエピソードが終わりますね。

 今日も、いつもの通りガンダムマンチョコを開封するところから始めましょう。

 そろそろ、シールがダブりそうな予感がしているんですけど。ダブらなきゃいいなあ。

(袋を開ける)

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【画像】ガンダムマンチョコ ハヤト ©創通・サンライズ ©LOTTE/ビックリマンプロジェクト

 さて、何だろう? ……おお、ハヤト・コバヤシですね。なんかちょっと嬉しい。ついに出たメインキャラという嬉しさです。

 しかし、ハヤト・コバヤシって、言われてみれば、リュウ・ホセイのような見せ場もなく、カイ・シデンのような後で解釈して「ああ、これ面白いな」というキャラでもなく。ハヤト・コバヤシって、もう富野由悠季自身が、途中から「なんでこんなキャラ出したんだっけ?」と言うようなヤツなんですよね。

 まあ、後に『Zガンダム』の頃から良い味を出して来るし、後は『ガンダム』の後半、ホワイトベースが宇宙に上がってからは独自性みたいなものも出てくるんですけど。今のところは、まだ「ハヤトでなけりゃいけない」というキャラクターじゃないですね。

 一応、「なんでも素直に従ってくれる」という感じなんですけど、それでも、アムロが脱走したあと、まあ拗ねて、カイ・シデン達と一緒にホワイトベースを脱走するという回もありますので、一筋縄ではいかない、いわゆる単純ないい子というだけのキャラではないということは確実ですね。

 どうしようかなあ? まあ、ハヤト・コバヤシに関しては、プレミアムの時までに話すことを考えておきます。

 じゃあ、今回は「ジオンの脅威」の最後ということで、いつも通り、無料の終わりで追加の解説をします。

 それでは『ガンダム』講座、第6回解説のスタートです。どうぞ。

ギレンの演説はなぜ「アニメ史上、最もすごいラストシーン」なのか

(本編再生開始)

 次に、ホワイトベースの中にもう一度カメラが戻って、ギレンの演説を聞いているアムロのシーンになります。

 ギレンは「戦いはこれからである! 我々の軍備はますます整いつつある! 地球連邦軍とてこのままではあるまい!」と演説を続けているんですけど、これを覚えている人は、あんまりいないと思います。

 なぜかと言うと、もう、この部分は、バックグラウンドでかかっている適当な演説だからですね。

 ここでのメインは何かと言うと、アムロとフラウ・ボゥとのやりとりです。

(パネルを見せる)

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【画像】アムロとフラウ・ボゥ ©創通・サンライズ

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> フラウ・ボゥ:アムロ、大丈夫?
> アムロ:心配かけたようだね、大丈夫だよ。
> フラウ・ボゥ:頑張ってね。
> アムロ:ありがとう。

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 思い出してほしいんですけど、この12話の前半でのアムロは「ベッドで膝をかかえて、目が真っ白」だったんですよね。

 そんな状態があったからフラウ・ボゥは心配してたんですけど、それに対して「もう大丈夫だ」というのを見せるために、こんなやりとりをしている。つまり「アムロとフラウの間にはちゃんと温かい人間関係がある」ということになります。

・・・

 すると、ここでカットが変わります。さっきから徐々に徐々にギレンの顔がアップになってきていますけど、ついにここまで来て、どーんと顔のドアップになります。

(パネルを見せる)

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【画像】ギレンアップ ©創通・サンライズ

 ついにこれくらいのアップになって「諸君の父も兄も、連邦の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ! この悲しみも怒りも忘れてはならない! それをガルマは、死をもって我々に示してくれたのだ!」と大演説します。

 この「それをガルマは死をもって我々に」と言う時に、一瞬だけ、式典会場に居並ぶジオン国民の映像が映るんです。

(パネルを見せる)

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【画像】ジオン国民 ©創通・サンライズ

 これ、僕、頑張って映像を途中で止めたんですけど、3分の1秒だけ映るんです。この辺、上手いんですよ。

 この3分の1秒というのを、僕らは「8コマ」って言うんです。

 フィルム映画というのは、1秒間を24コマに割って作ります。まあ、実際は今はもうビデオの時代だから、1秒間は30フレームなんですけど。この『ガンダム』の当時は16ミリフィルムで撮っていたので、1秒間は24フレームなんです。

 8フレーム、3分の1秒というのは「ギリギリ、何かがわかるための秒数」なんですね。

 だから、すごい速いカット割り、例えば『エヴァンゲリオン』のオープニングとかで、パッパッパと絵が変わるシーンというのは、よくよくみると8コマ、3分の1秒で切り替わっているんですね。

 3分の1秒に満たない場合は「そのシーンを見せるつもりがない」ということ。反対に、3分の1秒を取っているということは「一瞬だけでも見せたい」ということなんです。

 「それをガルマは死をもって教えてくれた」と言う時に、3分の1秒だけ大観衆を見せることで、絵の広がりを作っている。ギレンの顔に段々と寄っていく演説の最中にこんな絵が急に入るから、バッと広がっていくような感じになるんですね。

 このギレンの演説というのは、演説の内容だけでなく、こういった演出とかカット割りによって、すごく盛り上がっているような印象を作っているんです。

 だから、ギレンの演説だけを切り取っても、僕はそんなに大したもんではないと思っているんですよ。

・・・

 この大観客が一瞬映ったあと、カットが切り替わります。

(パネルを見せる)

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【画像】ギレンとガルマ遺影 ©創通・サンライズ

 ここまで引いて、さっきのギレンのドアップ顔のサイズに近いくらい、ガルマの遺影をドーンと映して、その前で手を広げているギレンを映す。

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> ギレン・ザビ:我々は今、この怒りを結集し、連邦に叩きつけて初めて真の勝利を得ることが出来るッ!

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 この演説に対して、さっきまで2人っきりの世界でぼんやり世間話をしていたアムロとフラウは、思わず注目しちゃうんですね。

 徐々に徐々に、アムロにも、ギレンが何を言っているのかが理解できて、思わず聞き入ってしまうんですよ。

 それまで、ホワイトベースの人たちも、この演説に対して「敵が演説してるってよ?」という感じで聞いてたんですけど。この辺りから、段々と聞き入ってしまって、目が離せなくなっていきます。

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> ギレン・ザビ:この勝利こそ、戦死者全てへの最大の慰めとなる! 国民よ立て! 悲しみを怒りに変えてッ! 立てよ国民! ジオンは諸君らの力を欲しているのだッ!

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 この演説、僕の記憶の中では「立てよ国民!」って言ってる時って、てっきりギレンのアップが映ってるような気がしてたんですよ。

 たぶん、皆さんもそうだと思います。「あそこって、ギレンの顔のアップじゃなかったっけ?」って。でも、確認してみてください。違うんですよ。

 これ、ずーっと、アムロとフラウの2人の横顔だけのシーンなんですよ。

 かなり長い「この勝利こそ、戦死者全てへの最後の慰めとなる! 国民よ立て! 悲しみを怒りに変えてッ! 立てよ国民! ジオンは諸君らの力を欲しているのだッ!」というセリフの間、ずっとこの2人の横顔なんです。

 ここで、フラウ・ボゥが後ろから不安そうにアムロの二の腕をつかむ。すると、アムロは振り返りもせずに、フラウ・ボゥの手を握り返す。フラウの不安にアムロは安心を与えている。

 これは、前半で出てきた「ランバ・ラルの不安にハモンが安心を与えている」というシーンと対をなしているんですね。

 「不安で手がぎゅっとなってしまったところに、自分の彼女・彼氏が手を当ててくれると、安心してちょっと緊張が解ける」というシーンを前半で入れているのは、後半のこのシーンのためなんですね。

 アムロとフラウのシーンがあるからこそ、その映像的な伏線として、ハモンとラルのシーンがある。

 これから後のランバ・ラル編では、ハモンとラルの中にアムロが入っていく時には、必ずフラウ・ボゥもついてくるんですけど。それも、これが理由なんですね。「この2組の男女が対になって表されている」と。

 「戦死者全てへの慰めになる」と聞いたアムロは……12話の前半までのアムロ君が目を真っ白にしていたのはなぜかと言うと、「ガルマ様の仇!」という、前回のイセリナの言葉を、ずっと思い出していたからですね。

 でも、「戦死者全て」と言われても、もう、アムロはイセリナを振り返らないんです。自分がこれから戦う相手を真っ直ぐ見つめて、フラウの不安に手を握ることだけで返すという、かなりの決意を見せています。

 なぜかと言うと、「ここでもう一度、また目が白くなっちゃうくらい過去を振り返るアムロに戻ったら、フラウ・ボゥが死ぬことになる」ということがわかっているからですね。

 なので、戦いを決意して、ちゃんと男の顔になっている。それを見せるために、横顔だけで演説のクライマックスシーンを見せているんですね。

・・・

 というわけで、「立てよ国民! ジオンは諸君らの力を欲しているのだッ!」というところまで、ずーっとアムロとフラウのカットを見せていたところから、やっとここで「ジーク・ジオン!」と叫ぶギレンが映ります。もう、本当に記憶の中と違うでしょ?

 すると、さっきの国民大集合の絵になって「ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!」というふうに、ここから先は、アニメの最後の1秒まで「ジーク・ジオン!」というセリフが続きます。

 この「ジーク・ジオン!」というセリフを、もうね、『ガンダム』の12話ってすごいんです。こうやって見せるんですよ。

(パネルを見せる)

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【画像】ホワイトベースのクルー ©創通・サンライズ

 「ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!」と言う毎にカットを変えて、この中継を見ているホワイトベースのクルー、それぞれの顔を見せていくんです。

 まず、ブライトさんと、その後ろにいるアムロとフラウ・ボゥ、そして、リュウ。この現場で戦っている者達と、司令官の立場として「ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!」というのを見せる。

 次に、立場が中間的なミライさんを見せる。この人は戦うことが嫌いで、ブライトさんたちみたいに、そこまで戦うことを決意しているわけでもない。だからと言って、アムロみたいに不安定でもない。どちらというと、かなり性格的に安定しているミライさんが「ジーク・ジオン!」というのを見る。

 そして、ここでセイラさんが映ります。彼女は、後に「実はシャアの妹だった」ということが明らかになってくるんですけど。セイラさんは、この「ジーク・ジオン!」を聞いている最中に、思わず見ていられなくなって目線を落とすという演技をやっています。

 で、ようやっとアムロの顔のアップになって「これが、敵……」という一言だけセリフを言うんです。

 さて、ずーっと「ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!」と叫ぶ群衆を見て、アムロが「これが、敵……」と呟くと、ここで「何を言うか!」とブライトさんのセリフが被ります。

 やっとここで言い返してくれるんですよ。

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> ブライト:何を言うか! ザビ家の独裁をもくろむ男が、何を言うのか!

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 それを聞いたアムロは、もう一度、さっきの顔で「独裁?」と、小さく呟きます。

 でも、画面から聞こえてくるのは、相変わらず「ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!」という大合唱。

 「ダッタダー、ダッタダー、ダッタダー~♪」という、ちょっとバロック調の繰り返しの音楽が掛かり、音階が上がるようで上がらないまま、ひたすら引き伸ばしながら場を盛り上げてきます。

・・・

 そして、12話のラストシーンこれですね。

(パネルを見せる)

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【画像】ラストシーンのホワイトベース ©創通・サンライズ

 「ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!」という声だけが響く中、太平洋上にあるホワイトベースが、アジアの方向へ向けて飛んでいくという描写で終わるんです。

 この、主人公側の船が夕焼けに向かって飛んでいく時に、敵の人民の「我々は虐げられていた! 今こそ立ち上がるのだ! ジーク・ジオン! ジオンに勝利を!」という声が延々とかかり続けるという、演出のセンス。

 僕は、アニメ史上、最もすごいラストシーンだと思うんですけども。

 このすごさというのは「ギレン・ザビの演説を延々と聞かせている時に、それぞれ誰の思いを見せるのか?」にあるんですよ。

 一番最初は、戦いが終わって呆然としているアムロの顔、「見逃してくれたのか……?」というところから始まって。演説に入ると「敵には敵の理屈があるんだな」というのがアムロにもわかるようになっていく。

 次に、シャア・アズナブルのイラついた指先が映り、彼が酒を煽っている様子が映る。なぜ酒を煽っているのかというと「自分がやったことに対して自信がないから」なんですね。

 これ、僕も最初に見た時には全くわからなかったんですけど、テレビ版の『ガンダム』を何回か通して見ているうちに「あっ!」と気がついたんです。「あっ、これ、シャアはイラついてたんだ」と。

 じゃあ、それまで「シャアはニヒルな性格で、ガルマを陥れたことに対して後悔も何もしていない」と思い込んでいたのはなぜだろうと思ったら、当時のアニメ雑誌がそう書いていたからだったんですね。アニメックとかアニメージュとかで「シャアの人物像はそういうものだ」というふうに当時のアニメライターとかが言っちゃったもんだから、僕もそれを鵜呑みにしてたんです。

 でも、40超えて、50超えてから『ガンダム』見ると「これ、違うわ」というのが初めてわかってきて。「ああ、それだったらこんなカットを入れるはずがない」と。

 だって、劇場用のアニメやテレビアニメ、同時に何本もアニメを作った経験があれば、1秒の絵を作るのがどんなに大変かというのがわかるからです。「指先をこう動かす」とか「口の端を上げる」という演技をアニメーターに描かせるためには、全部、口でその理由を言わなきゃいけないんですね。

 「なんでここで笑うんですか?」と言われたら、「シャアはちょっと悔しいからです」と言わないと、そういう演技を付けてくれないんですよ。でないと、笑い過ぎちゃったり、笑っているのがわからない程度の演技にされちゃうから、演出意図というのを口で言わなきゃいけない。

 でも、アニメーターというのは、それを受けとったら絵に描くだけだから、もう二度と証拠は残らないんですね。

 僕らは、そういった演出意図を知らされないまま、出来上がった映像素材というか、完成作品だけを見せられている。そして、この解釈は自由なもんなので、「シャアはニヒルな性格だ」みたいな、すごい手軽な解釈に走っちゃうんですね。

 でも、よくよく見てみると、これ、すごいことをやっているんですよ。

 まず、ずっと言ってるんですけど、アニメの中で敵の演説を丸々やったのってたぶん、これが初めてで。さらに言えば、ここからは、もうないんですよね。

 『逆襲のシャア』でも、シャアの演説というのをやってるんですけど。あれ、よくよく見ると、あんまり意味のないことを言ってるんですね。

 意味がないというのはどういうことかと言うと、「なぜ、これを観客に聞かせなきゃいけないのか?」という、演出上の意味があんまりない。『ガンダム』シリーズっていうのは、年を経るにつれて、演出的には退化しているんですよ。

 でも、この頂点の時というのは「なぜ、このギレンのセリフを聞かせなきゃいけないのか?」にも、ちゃんと理由がある。

 まず、「ジオンの側にも理屈があるんだよ」ということを、小学生・中学生くらいの視聴者に教える。

 次に、高校生・大学生くらいの視聴者には、ジオンには主張があって、そこに一部の理があるからこそ、ブライトさんはイラッとして「ザビ家の独裁をもくろむ男が何を言うのか!」と話をズラさないと、指揮官としてやってられないんだ、ということを教える。

 もうちょっと年齢が上がってくると、この「ジーク・ジオン!」という敵が叫ぶ独立の言葉を聞かされている者の立場になって「この中で戦争をしなきゃいけないのが、いかに切ないことなのか」という気持ちがわかってくるんですね。

 こうやって、何層にもわかるようになっているんです。

 もともと手塚治虫が始めた虫プロというスタジオに集められた人材というのは、一番最初は「手塚治虫の作りたいアニメを作りたい!」と思って集まったんですけど。

 徐々に徐々に「手塚先生のアニメよりこっちの方がいい!」と言い出して、自分達のオリジナルのアニメを作ろうとしだしたんです。

 そんな、もののふ達、サムライ達が作っているから、本当に一筋縄ではいかないアニメなんですよ。

 その頂点が、アニメ史上、最もすごい「敵の独立の叫びというのを主役の船の上にかける」という、この第12話のラストシーンだと思います。

 これ、劇場版ではもっとカッコよくなってきて。劇場版では、ここでカット切り替わって、一面に広がる雲海が映るんですよ。

 ホワイトベースというのは、ザンジバルと嵐の下で戦っていた。実は雲の下の暗い風景の中で戦っていたんですね。

 で、このジオンの演説が流れる中、ホワイトベースがガーッと上昇していくと、雲の上に出る。

 すると、ホワイトベースのブリッジの部分に、太陽の光が真横から当たって、雲の海の上に巨大な十字架を作るんですね。

 そこで『砂の十字架』というテーマ曲が「ライリー、ライリー~♪」って始まるんですけど。この曲がね、合わないんですよ(笑)。

 何が不幸かって、これが合ってれば、劇場版『機動戦士ガンダム』の1のラストは、本当に名シーンになったと思うんですけど……いや、演出的には100%良いんですよ。たぶん、テレビ版より良くなってる。

 「ジーク・ジオン! ジーク・ジオン!」という中で、ホワイトベースのブリッジが雲の中からせり上がってきて、そこに太陽の光が当たって雲の上に巨大な十字架を作るという、カッコいいことをやっておきながら、音楽が転調してマイナー調になって「ライリー、ライリー、ライリー、ラー~♪」ってなっちゃうから、見ている人間の気分が削がれちゃうんですね。

 やっぱり、ここでも、テレビ版の「チャッチャチャー、チャッチャチャー~♪」という、バロック調の繰り返し音楽の中で少しづつ上げていくという盛り上がりが、絶対に正解だったんですね。

(本編中断)

ブライトのセリフについて補足

 はい、お疲れさまでした。無料版はここまでです。

 これが、ホワイトベースなんですけど。

(模型を見せる)

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【画像】ホワイトベース模型

 このブリッジ、いわゆる首から上の部分だけが、劇場版では雲の上に上がって来るんですね。で、どんどん上昇してくるんですけど。

 この首から上が出てきた時に、ちょうど両側の耳みたいに見える部分と上のアンテナを真横から太陽が照らしているもんだから、雲の上に巨大な十字架が出来ていくというシーンがあって、これがメチャクチャカッコよかったわけなんです。

 歌に関しては、その後、僕がやしきたかじんさんに「あの頃の富野さんは調子に乗ってたんだから、許してください」と言ったエピソードなどもありますが。まあ、そんな感じです。

 「ジーク・ジオン!」の時に、ブライトさんは「何を言うか!」と思わず言い返したんですけど。

 ブライトさんの言う「ザビ家独裁をもくろむ者が!」というのは、これは単なる悪口であって、論点のすり替えなんですよね。ザビ家の独裁であろうがなかろうが、ギレン・ザビが言っている「連邦軍、けしからんよね!」という論旨は、いささかも揺るがないわけですから(笑)。

 ギレンは「連邦軍、許せないよね! 酷いよね! 連邦軍が許せないから我々は立ち上がった!」と言っているわけで、この立ち上がり方が独裁であろうがなんであろうが、本来、連邦側のブライトさんには文句を言う筋合いはないんですよね。

 では、なぜ、ブライトさんはそんなことを言うのかと言うと。あのセリフは、ブライトさんが軍の教育で教えられた連邦側のプロパガンダを言っているだけなんですよ。

 ジオンはジオン側のプロパガンダを大きい声で演説してるだけだし、それに対してブライトさんが言い返したのは、ただ単に連邦側のプロパガンダだけ。

 このすれ違いが、やっぱりカッコよかったというか「大人のアニメを見せていただいたなあ」という感じがしました。

 後半では、この演説の演出的な意味と、またドラマ的な意味、その辺などを語りながら、第12話「ジオンの脅威」を、締めて行こうと思います。

 ここから先は、後半の有料放送に入ります。

 では、後半を開始してください。どうぞよろしくお願いします。

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