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ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1

 岡田斗司夫です。

 今日は、ニコ生「岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話」2019/08/12配信分のテキスト全文をお届けします。

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エッシェンバッハ家の屋敷はどこにある?

 こんばんは、岡田斗司夫のガンダム完全講座。今回で20回目ですね。『機動戦士ガンダム』の第10話「ガルマ散る」の解説の前編をお送りします。

 今日はもう、ちゃっちゃと進めていきます。明日からアメリカに行くのに、まだ全然、荷物の準備が出来てないんですよ。どうにかパスポートの存在だけは確認したんですけど。

 18日の日曜日のニコ生も、再放送なんですけど、頭とお尻に新撮の撮り下ろしの解説動画を入れなきゃいけないし、それをこの後に収録するので、今日はもう本当に、パニック、パニックなんです。「ヒーッ!」ですよ、本当に(笑)。

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 今回の「ガルマ散る」で、いきなり登場するのが、ガルマの彼女イセリナ・エッシェンバッハですね。

 解説動画の中では「このエッシェンバッハ家の屋敷はどこなのか?」という問題で、僕は悩んでいます。

 というのは、どうも『ガンダム』の公式設定では「ニューヨーク辺り」ということになっているようなんですけど、全体の流れから考えて、もしエッシェンバッハ家というのが旧家であって、アメリカの中でそれなりのポジションだというんだったら、ボストンやフィラデルフィア辺りの方がいいだろうし、そうじゃなくて、イセリナの立ち位置や、エッシェンバッハ市長本人の性格からすると、南部のテキサス辺りがまあいいんじゃないかと思うんです。

 まあ、その辺を悩んでおります。

 では、岡田斗司夫がどういうことに悩んでいるのかを見てもらうためにも、さっそく始めましょう。

 ガンダム完全講座、第20回「ガルマ散る」の前編の解説をお届けします。それでは、どうぞ。

ニューアークという街の謎

(本編再生開始)

 岡田斗司夫のガンダム講座。前回は第9話「翔べ!ガンダム」をお送りしました。

 「この第9話はドラマ的な分岐点だ」と、僕は言ったんですけども。登場人物のいろんな思惑とか、感情的な軋轢が、徹底的に圧縮されたところから一気に解放されて、タイトルの「翔べ!ガンダム」という展開に至る、と。

 そして、一気に状況が変わるんですね。新しい登場人物マチルダさんという人も現れて、ずっとギスギスしていた人間関係の中から、ようやっと「みんなで力を合わせよう」という兆しが現れる。

 こういう、ドラマ的な展開点なんです。

 ただし、ストーリー的には、そんなに大事な話ではないので、ガンダムの劇場版にしても、ダイジェストをやるにしても、ほとんど飛ばされてしまう回でもあったんですね。

 今回、取り上げる第10話「ガルマ散る」は、今度はストーリー的な展開点なんです。

 前回のような、ドラマ的に圧縮されているようなことはほとんどなく、それよりは、ストーリーがどんどん進んでいくんです。

 なので、今回は、ストーリーを時間順に見ながらですね、細かく細かく中を観察するという方向でお話を進めていきたいと思います。

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 一番最初、地球のジオンに占領された土地でのパーティの様子が映し出されます。

 しかし、テレビシリーズでは「ここが具体的にアメリカのどこなのか?」という情報は出てこないんですね。だから、僕もいつものように「どこだ」と断言することは出来ないんですよ。

 例えば、「グランドキャニオンが出てくる」とか「ミード湖がある」という場合は、「これはなんかカリフォルニア州なんだろうな」とか「カリフォルニア州とネバダ州の間くらいなんだろうな」と言えるんですけど。

 そもそも、ホワイトベースの進路自体がすごく不可思議なんですよ。

 というのは、地球に再突入して入ってきたので、アメリカ大陸と南アメリカ大陸があったとすると……。

(ホワイトボードに図説する)

【画像】南北アメリカ大陸図

【画像】大気圏突入方向

 普通、大気圏に突入する時というのは、地球の自転を利用するから、自転方向に逆らって入ってくることってまずないんですね。そんなことをすれば、突入角は深くなるし、あとは大気との速度差も大きくなるからです。

 なので、当たり前ですけど、ロケットというのは、ほとんど東に向かって打ち上げます。その方が、マッハ1の地球の自転速度を利用できるからですね。

 それと同様に、宇宙船が地上に帰って来る時も、だいたい、東に進む形の方向に再突入して帰って来るはずなんですよ。

 それを踏まえて、僕は、ホワイトベースも当然、西から東に向けて降りてきたと思っているんですけど。

 ところが、一般に売られている資料集とかを見ると、違うんですね。

【画像】日本への進路図

 物語全体でのホワイトベースの進路っていうのは、ここら辺にハワイがあって、ここら辺に日本があるとしたら、この後、アムロのお母さんに会いに行く「再会、母よ…」という回は「日本の小笠原諸島辺りが舞台だ」と言われているんですね。

 その後のマ・クベとの戦いでは、ホワイトベースは、アジアを横断して、オデッサというヨーロッパの東端の方に行き、さらにそこから、ベルファストというイギリスの方まで行って休憩するという回もある。

 つまり、ホワイトベース自体は、ずーっと東から西に向けて進んでるんですね。

 じゃあ、「再突入は西から東に地球に降りて来たけど、そこから方向転換して、東から西へ向かう進路を取ったのかな?」と考えりゃいいんですけど。

 でも、それにしちゃ不思議なことが多すぎる。

 まず、今回の「ガルマ散る」に出て来る、ガルマの彼女のイセリナのお父さん、エッシェンバッハさんというのは、設定によるとニューヤーク市の市長なんです。

 これは、現在のニューヨーク市のことでしょうね。……でも、また、ややこしいことに、アメリカには、ニューアークという街もあるんですよね。なので、どっちかわからないですけど。

 とにかく、「アメリカ北部の東海岸にあるニューヨーク市の元市長だ」ということになっていると。

 しかし、今回、ホワイトベースが隠れる屋内ドーム球場というのは、どう見ても、テキサス州ヒューストンにあるアストロドームなんですね。つまり、アメリカでも南部の方なんですよ。

 実際の画面の中に描かれている野球場を見ても、アストロドームの上の方についている特徴的な部分を描いているし、おまけにイセリナという人間の性格とか、もしくは、そのお父さんのエッシェンバッハさんの「言うことを聞かない娘を張り飛ばす」みたいな行動を見ても、これはどう考えてもアメリカ南部の話なんですね。

 なので、今回の「ガルマ散る」の舞台になっているのは、アメリカ大陸横断中に訪れた中南部での話であって。

 だからこそ、いわゆる露骨な身分差のようなものがまだ残っていて、奴隷制度の名残りがあるような、いわゆる南部美人として、「気が強いんだけど、夫に対しては献身的な愛情を注ぐ」というイセリナ・エッシェンバッハという娘と「娘に対してすごく強気な厳しい親父」としてのエッシェンバッハ元市長。

 そして、ニューヨークに本部を置いているガルマが、そのエッシェンバッハが支配している南部の街まで行って、パーティー開いているという、そういう構図なのかなと考えたりもするんですけど。

 まあ、富野さんが『ガンダム』という作品を、そこまで考えて作っていたかどうかもわからないので、若干の矛盾をはらんでいます。

 イセリナ自体は明らかに、アメリカの南部娘として特徴的に描かれているし、街自体も南部の描き方してると思います。あとはアストロドームも出てくるんで、どう考えてもテキサス辺りを舞台にした話なんですよ。

 でも、設定本を読むと「これはニューヨークの話だ」と書いてある。

 しかし、ニューヨークの話にしては、その次くらいの回から、急に日本の方に行っちゃうし、「どうなってんだよ?」って思うんですけど。

 まあ、「こういう矛盾に僕は悩んでます」という話を、最初にしておきますね。

「ガルマの持っていた資質」とは?

 まあまあ、そんなどこなのかをハッキリ断言できない場所で、ジオンが開いたパーティの様子が映されます。

(パネルを見せる)

【画像】ジオンのパーティー ©創通・サンライズ

 上の方にシャンデリアがあることから、この屋敷自体がすごく天井の高い、大きな家だというのがわかります。

 壁に掛けられている肖像画に描かれている人物が、デギン公王ですね。彼が、この話数で初めて出て来る、敵であるジオンの大ボスです。

 この屋敷は、ジオンが接収した、つまり、地球を侵略して占領した時に取り上げた屋敷なんでしょうね。たぶん、もともとは公民館か市民館だったのかもわかりません。

 では、「なぜ、こういうパーティーをするのか?」なんですけど。

 基本的に、征服者というのは、その土地を軍事的に征服したとしても、その次に民間人に対しても同じように強い態度に出ることはしないんですね。

 というのも、現地の人達が大人しく自分たちに従ってくれることが、支配者としては一番ラクだからなんですよ。

 ジオンは強大な軍事力を持っているんでしょうけど、そういった軍事力というのは、例えばニューヨークを征服したのなら、次は隣のメイン州なり、フロリダ州なり、別の地域を征服するために使いたいんですよね。

 さっさと、別のどこかに送りたいんですよ。そうやって、強い軍隊というのを次々と移動させて、戦争に勝たなきゃいけない。いつまでもニューヨーク市内に置いといて休暇ばっかり与えてたら、兵隊は兵隊で、段々と腐っていきますから。早いこと、別の戦地に移したい。

 ということは、現地の人たちが、テロリストになったり、反乱を起こしたりしたら、すごく鬱陶しいんですね。なので、こういうふうにご機嫌を取るパーティーをするんです。

 じゃあ、どういうご機嫌のとり方をするのかというと「いやあ、皆さん。ジオンが来たからと行って、トップにいるのが地球連邦からジオンに変わるだけで、皆さんの普段の生活には何も変わりはありませんよ?」というアピールを必ずやるんですよね。

 アメリカが日本を占領した時も、第2次大戦の末期の時には「アメリカ人が来たら、ヤツらは鬼畜米英だから、日本人は全員、手に穴を開けられて、そこに紐を通されて奴隷にされる! 女は全員レイプされることになる!」と言われてたんですけど。実際にやってきたアメリカ人は、すごく親切だったりしたわけですね。

 まあ、これは別に「全ての占領軍に例外なく共通すること」ではないんですけども。例えば、ロシアに占領されたベルリンは、みんなエグい目に遭いましたから。占領軍だからといって、みんなアメリカ軍みたいに優しいわけじゃなくて、ロシアみたいにエグいこともあるんですけど。

 だけど、基本的に優しくした方が、そこから先の占領政策というのはやりやすい。

 ということで「トップが変わっただけ」と思わせて、その象徴である肖像画をデカく置いて、現地の有力者を呼んで、ジオン軍の持ち出しでパーティーまで開いてしまうということをやっています。

・・・

 そんな中、ガルマに対して露骨にご機嫌を取ってくる人達が現れます。

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> パーティ出席者A:お父様のデギン公王は地球においでになるご予定は?
> ガルマ:聞いておりません。
> パーティ出席者A:おいでの際は、ぜひ何卒よしなに。ヒヒヒ……。
> パーティ出席者B:ヘヘヘ……。

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 こんなふうに言って、この2人はものすごい揉み手をするんですよ。

 そういうシーンがあった後、ガルマさんはシャアのところに行って、もう、思わず愚痴を垂れます。「あんなやつらは大嫌いだ!」ということを言うわけですね。

(パネルを見せる)

【画像】ガルマとシャア ©創通・サンライズ

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> ガルマ:連中は虫が好かん。
> シャア:しかし、やつらがあの木馬とモビルスーツの存在を知ったら、慌てるだろうな。

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 このシーンで、ガルマは「連中は虫が好かん」と言うんですけど。

 これまでのアニメの敵キャラの描き方だったら、こんなふうなお追従を言ってくる地球人に対しては、もっといい気持ちになって「そうだろう? そうだろう? 俺達ジオンは強いからな! ふはははは!」と言うか、もしくは「お前らみたいなおべっか使いは出ていけ!」と怒るといったような、感情に任せた行動を取っていたはずなんですよね。

 しかし、ガルマは、おべっかを使って「お父様によろしく」という者らに対して、笑顔で答えて、シャアのところに行ってから、こっそり「あんなやつらは大嫌いだ」と言うんですね。こういった矛盾があるんです。

 なぜ、ガルマの態度にこんな矛盾があるのかというと、ジオンは地球を軍事的に占領するだけでなく、支配しようとしているからなんですね。

 すでに軍事的な占領というのは、ある程度、終わっている。では、ここから先、何が必要かというと「破壊された街を、もう一度、組み立て直して復活させる」ということなんです。そうしなければ、地球を経営することが出来ないからですね。

 これまで、相手に負けを認めさせるために、散々破壊してきたんですけど。ここから先も破壊しっぱなしだったら、ジオンの支配に対抗するゲリラが増えてきたり、もしくは、相手をどんどん貧乏にさせるだけ。

 なので、ジオンとしては、出来るだけ早く、地球にもう一度、経済活動をやってもらって、生産活動をやってもらう必要があるんです。

 そして、今、自分が支配している北アメリカ大陸は、ジオンの中の優等生として……いわゆる「アメリカに占領された後の高度経済成長の日本」みたいに、どんどん金持ちになってもらわなければならない。そうなれば、「アメリカに逆らおう」などとは考えずに、「アメリカに追いつこう」と考えるはずだ、と。

 ジオンとしても、そうやって、地球に対して軍事力を見せつけて無理矢理言うことを聞かせるのではなく、「早くジオンに追いつきたいな」とか「俺達も宇宙に行って、ジオンに住みたいな」と思わせた方が絶対に得だから、そういうふうに仕向けようとしているんですね。

 なので、ガルマとしても、揉み手で近づいてくる嫌なヤツらを「ダメ!」とか「お前ら、あっちへ行け!」とは言えないわけです。

・・・

 この辺りが、ガルマのお兄さんであるドズル・ザビから見た、ガルマの偉いところなんです。

 というのも、ドズルには、そんなことが出来ないから。

 そして、長男のギレンは、もっと冷たいんです。

 後に、セリフとしても出てくるんですけど、「せっかく減った人口です。これ以上増やさずに優良な人種だけを残します。人類の永遠の存続のために、地球圏を汚さぬためにです」ということを言い出すんですね。

 つまり、ギレンはギレンで、地球の経営などということは考えずに、あくまでも「自分達が経営しやすいサイズに縮めちゃって、地球の人間なんか、ほとんど死んじゃってもいいんだ」という態度を崩さないんですね。

 言ってしまえば、それは経営者であって、王の器ではないんです。

 じゃあ、ドズルはどうなのかというと、彼は軍人の器ではあるんですよ。

 「絶対に勝つ!」とか「そのためには何でもする!」という軍人の器なんですけども、やっぱり王の器ではない。

 では、王の器とは何かと言うと。基本的に「そういうお追従を言ってくるヤツらを適当に相手にすることが出来て、なおかつ、地球の現地の女と婚姻関係を結べるような男」の方が、王の器なわけですよ。

 だって、一番良い経営方法は「地球の偉い名家の女と結婚すること」なんですから。そうしたら、「地球とジオンとは、もう対立関係ではなく、新しい1つの家族なんだ!」と言い張れるわけですからね。

 こういうことが自然に出来る人間というのは、やっぱり、なかなか少ないんですよ。

 ちなみに、イギリス人はこういうのが不得意です。

 同じ植民地経営をさせても、フランス人は「現地の女性をどんどん妻にする」のに対して、イギリス人は「現地の人間をどんどん登用して、支社長にまでするんだけど、絶対に現地の女と結婚しないし、彼らを自分達が持っている貴族制の中には入れない」んです。

 自分達が持っている会社システムの中には現地人はいくらでもいれるんだけども、自分達の仲間である血族、貴族組織の中には絶対に入れないんですね。

 ところが、フランス人というのは、貴族でも平気で現地の女性と結婚して、子供を作っちゃう。こういうオープンな考え方というのが、実はフランスとイギリスとの貴族制の考え方の違いでもあるんですけど。

 ジオンの中でも、おそらく、ギレン・ザビというのは「地球人の女と結婚する」とか、全然考えないんですね。それよりは「人口を減らしちゃおう」とか考える。

 でも、もし、ガルマがこの先まで生きていたら、どういう王になっていたのかというと、おそらくフランス型の「地球に住んでいる人達を、ジオンとの対立関係で考えるのではなく、自分が面倒を見る存在として考えた」のではないかなと、彼の結婚観からして、僕はちょっと考えたりしてるんですけど。

・・・

 まあ、ギレンは「増えすぎた人口を減らしたい」と考えるんですけど。

 ところが、もうずっと後の方の話で、彼ら兄弟のお父さんであり、ジオン最大の親玉でもあるデギン公王は、ギレンのそういった意見に反対します。

 なぜかというと、これまたずっと後に明かされるんですけど、デギン・ザビというのは、もともと、シャアのお父さんであるジオン・ズム・ダイクンという男を殺して、王座を奪っていたわけですね。

 ジオン・ダイクンを暗殺した理由には、もちろん、野心や恨み辛みがあったのかもわからないんですけど。やっぱり、殺す側にも大義というのがあるんですよね。

 それは何かというと「自分達の方が上手くジオンを導ける。こいつに任せておけば、ジオンはきっとダメになる」と思ったからなんですよ。

 人類は増えすぎた人口を宇宙に移民させた。つまり「地球連邦というのは、スペースコロニーというのをいっぱい作って、余った人間をそこに捨てた」と。

 「だったら、その宇宙コロニーの中で自分達が独立国を作ってやろう!」というのが、そもそも、ジオンの戦いだったんです。

 そこで、ギレンの言うような「せっかく減った人口です。その後も我々が管理して、少ないままにしましょう」というのは、実は、地球連邦とやっていることが同じになっちゃうんですね。

 そうなると、デギン公王としても「俺はいったい何のために、自分が尊敬していた上司であり、一緒に革命のために戦ってきた同士でもあった、ジオン・ズム・ダイクンを殺したんだ?」というジレンマに引っかかっちゃうんです。

 だから、そんなギレンの言うことに賛成することが出来ない。

 そして、「それが親父のコンプレックスであり、トラウマなんだ」と知っているから、ギレンはギレンで、親父のことを馬鹿にして、軽んじて、最終的には殺すようになってしまう。

 これが、『機動戦士ガンダム』の中に流れている、ザビ家一族の中での考え方の差なんです。

 こういうところが、ガルマの行動の端々にまで出てくるんですね。

 やっぱり、「デギン、ドズル、ガルマ」というラインと「キシリア、ギレン」というのは、考え方が根本的に違う人なんですね。

・・・

 今回、ガルマが死んだということについて、後にドズルはすごく悲しむんですよ。

 「あやつこそ、俺さえも使いこなしてくれる将軍にもなろうと、楽しみにしておったものを……!」って。

 これは、普通のガンダムファンの解釈では「ドズルは兄バカで、ガルマをかわいがっていたあまり、弟の能力がよく読めていなかったからだ」というふうに考えられているし、安彦さんの『THE ORIGINE』でも、そういうふうに描いてるんですけど。

 でも、やっぱりこれは、安彦さんなり、今のガンダムファンの、ガルマに対する過小評価だと思うんですよね。「ガルマを過小評価して、シャアをヒーローにした方が、お話がわかりやすい」から。

 こういうのを、僕は「バカ向けガンダム」と呼んでるんですけど。『ガンダム』をバカ向けガンダムとして解釈しちゃうと、そっちの方に行っちゃうんですね。

 「そうじゃない!」と。実は、ガルマというのは、王にとって最も大事な要素である「みんなに愛されて祝福される」という資質を持っていたんです。

 だから、「地球のエリートの家の娘と結婚する」なんて、大それたことも考えていた。

 だからこそ、「あいつこそ王になる器だ。軍人としての器はどうかわからないし、司令官として、政治家としての器はわからないけど、少なくとも、王としての器は自分よりは大きく持っていた」というのが、ドズルの読みだったんじゃないのかな、と。

 こういうふうに考えた方が、『ガンダム』というのは実りが多い作品になると思います。

(本編中断)

「ジオンの地球経営」について補足

 はい、というわけで、前半はここまで。岡田斗司夫の妄想を聞いて頂きました。

 このガンダム講座は「アニメというのは、普通に受動者としてボーッと見ているよりは、こういうふうに考えたり、いろいろ思ったりしながら見ると、もうちょっと面白くなるよ?」という妄想教室でもあるんですけども(笑)。

 前半の方で「ホワイトベースが、後にお母さんに会いに行く時に停泊するのは小笠原辺りだ」って言ってたんですけど。

 「再開、母よ」というのは、「ホワイトベースが小笠原諸島に着陸したので、アムロの故郷は鳥取なので、そこまでコアファイターのジェット機で行ってきた」というような話だったと思います。

 後は、ジオンの地球経営戦略なんですけど。

 解説の中で言った通り、ギレンは基本的に「どうせ地球人は皆殺しにするから」って考えているわけですね。だから、関心が薄い。どちらかという「自分達のリゾートとして、後に地球の自然だけを使おう」と考えていて、「地球人というのは別にいなくなってもいいよ」と思ってる。

 それに対して、ドズルは根っからの軍人だから「勝った後どうするか?」を考えずに、「どうやって勝つのか?」だけを考える。

 ガルマのお姉さんのキシリアは「まあ、資源とかを掘る時の労働力としては、地球人というのは大事なものですよね」というふうに、あくまでビジネスとして考えていて。

 で、ガルマ本人は「なんとか平和的に共存する方法はないのか?」と思って、同化政策としての結婚などを考えている、と。

 実は、この辺の「支配する一族は、現地の人と同化するために結婚とかを考える」みたいなことは、『ガンダムF91』などの、ガンダムの後期作品になると、富野さんも積極的に語り出すんですけど。この『機動戦士ガンダム』の頃は、まだ匂わす程度なんですね。

 では、無料放送はここまでです。ここから先は有料になります。

 ではでは、切り替えてください。

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岡田 斗司夫

1958年大阪市生まれ。社会評論家。ニコニコチャンネル「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」で毎週ライブ番組を配信中! https://ch.nicovideo.jp/okadatoshio-archive/

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