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ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2

 岡田斗司夫です。

 今日は、ニコ生「岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話」2019/08/20配信分のテキスト全文をお届けします。

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フリップの扱い問題と『ガンダム』YouTube無料公開

(開演前の「これ、録画?」というコメントに対して)

 こんばんは。「生放送」の『機動戦士ガンダム』完全講座です。

 アメリカから帰ってまいりました。今日は8月20日ですね。第10話「ガルマ散る」の解説の後編をお届けします。

 『機動戦士ガンダム』の第10話「ガルマ散る」の後編というのは、いよいよこのガンダム講座も佳境に入ってきた辺りで。

 だいたい、これまでのガンダム講座というのは、フリップの使い方がバラバラというのかな? フリップを急にいっぱい使ったり、かと思えば全然使わなかったりしてたんですけども。この「ガルマ散る」と次の「イセリナ、恋のあと」くらいから、フリップを多用して解説するようになります。

 内幕を説明しちゃうと、『ガンダム』本編の画像の撮り方と、あと、撮った画像のプリントアウトのやり方に、ようやっと慣れてきて、上手くなってきた辺りなんですね。だから、この回くらいから、フリップを使っての説明が多くなってきたんです。

 でも、これも良し悪しで。フリップを多用していると、講座自体が、どうやっても「そのフリップの内容の説明」に頼ってしまうことになるんですよ。講座を行う上でのフリップの適当な枚数というのは、まだまだ難しい。

 ここから先も、ずっとガンダム講座は続くんですけど、フリップの数があまりに増えすぎると、もう本当に紙芝居をやっているみたいな感覚になっちゃう時もあるんですけど。

 「この回くらいから、だんだんフリップの数が増えていく」という話です。

 前にも話したんですけど、最近『機動戦士ガンダム』の本編が、YouTubeで毎週無料公開されるようになりました。

 で、ありがたいことに、Twitterとかを見ている人の感想を見ると、やっぱり『ガンダム』を初めて見る人というのが、もう、ビックリするくらい多いんですよ。

 なので、ぜひとも、この講座を……まあ副読本と言えるようなものではないんですけども。あくまで「こういう読み方も出来るよ?」という感じなので。そうやって見ていただければ本当に嬉しいなと思います。

 やっぱり、ずっと語られ続けるべき作品ですし、富野監督の代表作だと思うので、皆さんも、ぜひ『機動戦士ガンダム』を見てください。

 それでは、機動戦士ガンダム講座……まあ、「アメリカから帰って来てどうだ」ということは別にないので、それは最後の方で話そうと思います。とりあえず、ガンダム講座を始めようと思います。

 第10話「ガルマ散る」の後編の解説をご覧ください。では、どうぞ。

ホワイトベースの作戦とイセリナのセリフ解説

(本編再生開始)

 『機動戦士ガンダム』の第10話「ガルマ散る」の解説、後編です。

 前回は、ちょっと政治的な話というか、「ザビ家が今、地球上でどういう状況に置かれているのか?」ということについて、延々と話しました。

 今回はストーリー展開をザッと説明していきます。

 ええと、まあ、ニューヨークであろう都市を、深夜、ホワイトベースは隠れて進もうとしています。

 しかし、ジオンの戦闘機や空母は、街を上空から爆撃して、ホワイトベースを炙り出そうとしている。そこで、ホワイトベースはドーム型球場の中にバックで船体を入れて、なんとか隠れている。

 このままやり過ごしたいんだけど、絨毯爆撃をかけられているから、このままだったら爆破されてしまう。なので、なんとか反撃の糸口をつかみたいと思い、ガンダムを出撃させた。ガンキャノンもガンタンクも出した。これによって、なんとか、方法はわからないが反撃の糸口をつかもうとしている、と。

 一方、ジオン側では、ガルマ・ザビが、イセリナ・エッシェンバッハという女の人と恋をして「この作戦で手柄を立てさえすれば、この女を連れて俺は本国に帰って一緒になれるんだ!」と思う。と、同時に「軍人として、姉に対して誇れるような、親の七光りで地球連邦司令官だというのではなく、俺がやった手柄が欲しい!」という男の意地みたいなものを掛けて出撃する。

 ガルマはローラー作戦で爆弾を落としているんだけど、なかなかホワイトベースはみつからない。イライラしていたところに、ガルマの方は信頼しているシャア少佐から、「じゃあ、俺がモビルスーツに乗って出よう」と言われる。

 この時のシャアというのは「やってくれるか?」と聞くと、「いやいや、お前のためだよ。勝利の栄光を君に!」みたいな感じで、実に良い敬礼をして出て行ったので、この時のガルマはシャアを信頼しきっているんですね。

・・・

 ガンダムは、ホワイトベースから指示を受けて、攻撃を避けながらホワイトベースがあると思わせたい方向に向かって逃げ出すんです。

 しかし、シャアはその狙いにあっという間に気付きます。

【画像】ホワイトベースの狙いに気づくシャア ©創通・サンライズ

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> シャア:やるな、モビルスーツめ。我々をおびき出すつもりか。ということは木馬は後ろだな。なるほど、いい作戦だ。仇討ちをさせてもらおう。

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 実は、シャアは、ガンダムが逃げた先にホワイトベースがいないことを知っているんです。

 そして、「仇討ちをさせてもらおう」というふうに言う。ここで初めて、シャアの思惑が、ハッキリと言語化されて、セリフに出てきました。

 それまでは「シャアの目が不気味に光る」とか「実は影でガルマの悪口を言いまくっている」という、単なるネチネチ野郎だったんですけど。これによって「ああ、なんだ。こいつはこいつで敵討ちみたいな大義名分があったんだ」というのが、初めて視聴者に知らされるんですね。

 ということで、「仇討ちをさせて貰おう」とつぶやいた後、シャアはガルマに連絡を入れます。

 ガルマの方は、そんなこととは知らずに「待っていたぞ、シャア!」というふうに答えます。

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> ガルマ:待っていた、シャア!
> シャア:モビルスーツが逃げるぞ。その先に木馬がいるはずだ。追えるか?
> ガルマ:追うさ!

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 ここら辺、ちょっとわかりにくいので解説します。さっきからだいたいの話をしてたんですけど、実はこういう状況になってます。

(ホワイトボードに図説を始める)

【画像】ホワイトボード図説

 ホワイトベースは野球場のドームの中に隠れています。

 そこに、ガルマの乗ったガウ攻撃空母が迫っている。このままでは、他の航空部隊もやって来て、絨毯爆撃という、爆弾をガーッと落とされる攻撃をされるので、いずれはこの野球場にも爆弾が当たって破壊されてしまう。

 ガンダムは何かっていうと、ホワイトベースから発進して、こちらの方向に逃げているんですね。

 シャアはここで嘘を言うわけです。

 シャアはここにいて「あ、ガンダムだ!」と、ガンダムが逃げるのを見た上で、「ガルマ、ガンダムが逃げている方向に敵の戦艦がいるぞ」と言う。すると、ガルマはそれを信じて、パーッとそっちに行っちゃうわけですよ。

 こうなると、ガルマのガウはホワイトベースに対して後ろがガラ空きになるんですね。ホワイトベースは、そうやって敵に対して後ろから攻撃を仕掛けようと待ち構えていたわけです。これが、シャアが言った「良い作戦」なんですよ。

 アムロの思いも同じなんですよ。出来れば、ホワイトベースの射線、いわゆる大砲が撃てる範囲内に、敵の空母をおびき寄せたい。そうすることで、撃墜は無理だろうけど、とりあえず敵にダメージを与えて、この街から逃げ出したい、と。実は、それくらいのことしか、ホワイトベース側は考えていなかったんですね。

・・・

 しかし、ここで大変な事故が起こってしまいます。

 ホワイトベースの計画としては、その程度だったんですけど、敵はこれに実に上手く乗ってくれました。当たり前です。だって、シャアという、ガルマが最も信頼している部下が「ガンダムが逃げた方向に敵の戦艦がいるぞ!」と言ったんですから。

 腹心であるはずのシャアから「ガルマ、追えるか?」なんて言われたから、「おう! 行けるぞ!」と、「ついに俺も、姉ちゃんの鼻を明かし、武勲を上げて、一番好きな女を連れてジオンに帰れる日が来たんだ!」ということで、ガンダムを追いかけたんです。

 しかし、ガーッと進んで行った瞬間に、ガルマのガウは、後ろからホワイトベースの攻撃を一斉に受けてしまいます。

(パネルを見せる)

【画像】ガウのガルマ ©創通・サンライズ

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> ガルマ:……ど、どうした?
> ジオン兵:後ろから攻撃を受けました!
> ガルマ:後ろだと!?
> ジオン兵:も、木馬です、木馬が後ろから!
> ガルマ:……上昇だ! 上昇しろ!
> ジオン兵:無理です!

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 ガルマは「後ろから攻撃を受けたので、とりあえず高度を上げろ」と言うんですけど、「無理です!」と言われるんですね。

 ここでガルマは、0.5秒くらい考えます。

 「高度を上げられるか?」つまり「このままやり過ごして逃げれるか?」と部下に聞いたら「無理です」と言われたんですよ。この時、0.5秒の間に考えるのは「このまま不時着するか? 諦めるか? もしくは無駄死にするか?」ですね。

 このまま不時着しても助かるとは限らない。船が爆発しちゃう可能性もすごく高い。でも、パラシュートなり何なりで脱出したら、ひょっとしたら逃げられたかもわからないんですよ。

 だけど、0.5秒考えた上でガルマが下した決断は「180度回頭! ガウを木馬にぶつけてやれ!」というものだったんです。

 この瞬間、もう、ガルマは生きて帰ることを全て諦めて「どうせ撃ち落とされるんだったら、敵に体当たりしてやれ!」と決断するんです。

・・・

 すると、ここでシャアから無線通信が入ってきます。

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> シャア:フフフ……。ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい。

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 なぜ、シャアはこのタイミングで、そんな言わなくてもいいことを言ったのかというと、ガルマが「180度回頭だ! このまま空母を敵にぶつけてやれ!」と言って、空中で旋回するのを確認したからですね。

 この瞬間に、シャアは「ガルマは今、後ろから攻撃を受けてダメージを負った。そんな中で、脱出するとか不時着するではなく、敵に体当たりする方を選んだ。だったら、こいつはもう死ぬんだから、今から意地悪なことを言ってやれ!」と思ったわけですね。

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> シャア:ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい。
> ガルマ:何!? 不幸だと!?
> シャア:そう、不幸だ。
> ガルマ:シャア、お前は……!?
> シャア:君は良い友人であったが、君の父上がいけないのだよ! ハハハハハ……ッ!
> ガルマ:シャアッ! 謀ったな、シャアッ!

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 「君は良い友人であったが」というところは認めているんだけど、「あなたのお父さんが悪いんだよ」と。

 視聴者には相変わらず、シャアの復讐の理由は語られていません。すごく中途半端な状態です。

 ただ、これがドラマ全体の伏線として、ピーンと張られるわけですね。

 これまでの匂わせるだけというところから、「じゃあ、仇討ちをさせてもらおうか」「君のお父さんが悪いんだよ? 君は良い友人であったのにね」と言わせることで、シャアの行動の動機がハッキリしました。

 ガルマは「シャアッ! 謀ったな、シャアッ!」と言って、無線機をバーンと投げ捨てるんですね。

 ここで、音楽も盛り上がります。BGMも「チャラララン、チャンチャンチャン~♪」という、「パッパーン、パパーパ、パーン~♪」という明るい音楽の方じゃなくて、悲壮な音楽というやつが流れます。これ、まあ、登場人物が死ぬ時に掛かる曲なんですけど。

・・・

 ガルマは部下に「操縦を代われ!」と言って、自分で操縦桿を握ります。

 「私とて、ザビ家の男だ! 無駄死にはすまい!」と言って、自分でホワイトベースに向けて体当たりしようとするんですね。

 一方、ホワイトベースの方では、いつもブライトさんがいる場所の上の方の席に座っているオペレーターが「敵機1機、本艦に向かってきます!」と叫びます。

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> マーカー:敵機一機、本艦に向かってきます!
> ブライト:なんだと!? ……ま、まさか特攻か!? ミライ、上昇だ! 上昇しろ! 緊急上昇だ!

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 つまり、ホワイトベースの方では、誰もそんな覚悟をしてなかったんですね。

 シャアも、ガルマがそこまでするとは考えてなかったし、ホワイトベースもガウ攻撃空母を攻撃してダメージ与えたら、逃げるなり墜落するなりするもんだと思った。まさか、自分から船の向きを180度回転して体当たりするなんて、誰も思いつかなかったんですね。

 そして、ガルマがそれを思いついた瞬間に、実はホワイトベースは絶体絶命のピンチに陥ります。だって、これをされたら、もう助かる見込みがないんですよ。

 というのも、ガルマの乗った空母は、このままだと放っておいても、エンジンが破壊されていたとしても、ホワイトベースに直撃するコースにいるからです。

【画像】ガウのコース ©創通・サンライズ

 ガウ攻撃空母というのは、あまりにも巨大だから、ホワイトベースがいくら主砲を撃ったとしても、止めることが出来ないんです。事実、コックピットの辺りとか、エンジンの辺りにも、ガンガン命中しているんですけども、落ちるどころか、減速する様子すらない。完全に衝突コースなんですね。

 ということで、ブライトさんは「全員伏せろ!」と言って、ホワイトベースのブリッジにいる全員を伏せさせます。

 この瞬間、ホワイトベースのクルーは負けを確信してたんですね。「しまった! 体当たりされるとは!」と。そこまで読んでなかったのは自分達のせいなんですけど、もうこれダメだと思って「全員、床に伏せろ! 衝撃に備えろ!」って言うんです。

 しかし、そこで偶然、ガウの機内で爆発が起きて、左の翼がポキンと折れます。

 これ、本当に偶然なんですよ。それまでにも、何発も何発も弾は当たってたんですけど、ガウは落ちてくる勢いだけで飛んで来ていたんです。

【画像】ガウの左翼 ©創通・サンライズ

 そんな中、ガウの翼が根本からポキンと折れてしまった。この瞬間に、ガウは失速して、コースが変わるんですね。それまでは、ガウ攻撃空母とホワイトベースは直線上にあったところから、翼が折れたことによって失速して、ガーッと手前に落ちてしまう。

 その結果、浮上するホワイトベースの下を通り抜けてガウは落ちてしまうんですね。ガルマは「ジオン公国に栄光あれ!」と言って死んでしまいます。

 本当に、ガルマの攻撃が失敗したのは、偶然でしかないんです。

 偶然、ここで翼が折れてくれたからこそ、ガウ攻撃空母は失速して、コースを変えて落ちてしまったというだけなんですね。

・・・

 ガルマは最期に「ジオン公国に栄光あれ!」と言うんですけども。

 こういった時、彼の脳裏に再生されたのは、ジオン公国の栄光ではなく、大好きなイセリナの姿だったんですね。

 このイセリナの回想シーン、これが長いんですよね。

 普通、こういうのって、一瞬だけ、ほんのちょっと見せればいいものなんですけど。ここでのイセリナは、口を動かして、明らかに何かを言ってるんですよ。

 そして、それまでのイセリナの登場シーンと見比べてみればわかるんですけども、同じシーンがない。つまり、新作作画の書き下ろしなんですよ。

 ここで、イセリナの口元も見ると、声は聞こえないものの、何かやたらと長いセリフを言っているらしいことがわかります。

 こういう時、死の前の回想で見た恋人が喋ることというのは、大抵は「あなたのことが好きです」みたいなセリフなんですけど。

 これまでのイセリナのセリフで、このシーンに当てはまりそうなのは1つだけ。「私にはジオン軍も連邦軍も関係ありません。ガルマ様、ガルマ様」というセリフだけなんですね。

 このセリフだけが、このシーンで、イセリナが口をパクパクしている秒数にピッタリ合うんです。

 つまり、ガルマは「イセリナのために武勲を上げて、手柄を立てて、男になって、姉を見返して、ジオンに帰ろう!」と思ってたんですけど。イセリナは最初から「連邦軍もジオン軍も関係なく、あなたという個人が好きです」と言ってくれてたんですね。

 それに対して、ガルマは応えることが出来なかった。「ジオンの軍人として一人前にならないと、俺は君を連れて国に帰れないよ」と思っちゃったんですね。だから、「今、連邦の機密を手に入れるチャンスなんです。それに成功すれば、父とて私の無理を聞き入れてくれます」なんて言っちゃったんですね。

 あくまでも、自分の立場の中でしか相手のことを考えられなかったガルマと「そういうものを全て捨ててあなたのことが好きです」と言えたイセリナとの、格の差ですか。

 だから、ガルマが死ぬ直前に見た幻は、自分のことを認めてくれるかもしれない家族ではなく、自分がコンプレックスを持っていた「もっと軍人として頑張らなきゃいけない」とか「ザビ家の跡取りとしてやらなきゃいけない」というのとは関係なく、最初から「一個人として好きだ」と言ってくれたイセリナだったんですね。

 そんな「すごく良い女と、俺は恋愛をしてたんだな」という思い出だけを胸に抱いて、ガルマは散ります。

 「ジオン公国に栄光あれ!」と言った後で、そこを思い出すところが……僕も流石に、ここはシャアの言う通りだと思います。「甘ちゃんだ」と思いますけども。まあ、死ぬところだからいいじゃないですか。

(本編中断)

イセリナ後の流れと「ドラマの作り方」

 はい、ありがとうございました。無料はここまでです。

 イセリナはいかに良い女かということを語らせてもらいましたけど、その上で次回のタイトルが「イセリナ、恋のあと」なんですよ。もう、泣かせますよね。

 まあ、でも、このイセリナというのは、本当言っちゃえば、『ガンダム』全体の中では雑魚のキャラクターなんですね。まあ、雑魚ということもないんですけど、本編のストーリー上、関係ないような人。

 そんな人が復讐心に燃えて……それも「ジオンとか連邦とか、私には関係ありません。そうじゃなくて、2人で逃げましょう」と言っていたイセリナが、ホワイトベースやガンダムに対して復讐するというだけの話なんです。

 それを徹底的にイセリナ側から描いていく。

 その結果、どうなっていくのか? それがアムロにどんな影響を与えるのか?

 前回の「翔べ!ガンダム」は「それまで心の中でウジウジしていたアムロ・レイが、ようやっと振り切れて戦う気になった」という話なんです。

 しかし、そうやって戦う気になったおかげで、今回の「ガルマ散る」というのがあるわけですね。アムロが「僕が囮になりますよ!」とやる気を見せたせいで、そういったガンダムの頑張りなどもあって、ガルマは落とされることになった。

 そうしたら、アムロ達、連邦のホワイトベースクルーが全く知らないところで、イセリナという1人の女の人が復讐を誓って、ホワイトベースに戦いを挑む。それが「イセリナ、恋のあと」なんです。

 そして、それがあった後で、その次が「ジオンの脅威」という話なんですね。いきなりガルマ・ザビの葬式から始まって、新型モビルスーツ「グフ」が出てきて、アムロ・レイ最大のライバルであるランバ・ラルが出て来るという、この怒涛の展開。すごいんですよ、もう本当に。

 最初にも言った通り、ここら辺の話は、YouTubeで9月になったら無料で見られるようになるので、ぜひ『機動戦士ガンダム』を追いかけてみてください。

 他にも、Amazonプライムビデオだったら、そのまま全話見れますから、見て頂ければありがたいと思います。

・・・

 あとは「良い作戦だ。仇討ちをさせてもらおう」というシャアのセリフ。

 ここでシャアの目的が初めて明かされるわけですね。

 ただ、「シャアの目的は敵討ちだ」というのがわかるんですけど、その動機「じゃあ、ガルマ・ザビの父上の何がいけないのか?」とか「何があったのか?」という部分は、相変わらず、見てる人にとっては謎のままなんですよね。

 こういうドラマの作り方というのは、どちらかというと、今っぽいんですよ。21世紀になってからの海外ドラマのような作りなんですね。

 普通、アニメなどの敵討ちのシーンというのは、ドラマ的にはクライマックス&説明になっていて、謎解きを兼ねるはずなんですよね。

 つまり、復讐が果たされて、片一方がワハハハと言う時っていうのは「なぜ、私がこんなことを考えたのか? 俺の今ままでの思いの丈を知れ!」ということで、いっぱい喋って、そこで謎解きがされるというシーンのはずなんですけど。『ガンダム』では、そこは相変わらず説明されない。

 こういう展開方法、つまり「何か1つの事件があったら、その事件そのものが伏線になって次の謎解きへと進む」というのは、『ブレイキング・バッド』とか、『ゲーム・オブ・スローンズ』などの現代の海外ドラマと全く同じ作りになっているんですね。

 富野由悠季監督は、当時、「ロボットアニメで大河ロマン、日曜名作アニメをやりたい」というふうに、ずっと言ってたんですよね。

 当時のロボットアニメというのは「1話完結で、新しいキャラクターが出てきても、それはその回のみのゲストキャラで、放送順番を入れ替えても成立するようなものでなければいけない」という枠の中でしかやっちゃいけないと言われてたんです。

 だけど、富野さんは、それを外して、『アルプスの少女ハイジ』や、『母をたずねて三千里』、『赤毛のアン』みたいな、高畑勲がやっていたようなアニメを作りたいと、ずっと言っていたんです。

 そんな富野由悠季が、ようやっとやりたいことをやった。そういうアニメが『ガンダム』だと思います。

 あとは、今回の復習になるんですけども、どう言えばいいのかな? ……まあ、でも、こういう戦略論的なことは、終わってからまとめて話しましょうか。

 それでは、無料はここまでです。

 ということで、説明が長引きましたが、ここからは有料枠に入って、『機動戦士ガンダム』講座、第10話「ガルマ散る」の後半の解説を見て頂きます。

 準備は大丈夫ですね? それでは、後編の解説、どうぞ。

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