ガンダム完全講義31:第12話「ジオンの脅威」解説Part4
岡田斗司夫です。
今日は、ニコ生「岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話」2019/11/05配信分のテキスト全文をお届けします。
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ガンダムマンチョコ開封と本日の内容
こんばんは。今月から午後7時から始まることになったわけなんですけど、皆さん、間に合ってるかな? 大丈夫かな?
だいたい毎週火曜日は、生放送で、こういうふうにガンダム完全講座というのをやるわけなんですけど。いやねえ、7時、早いね。本当に、これを見ているみんなは仕事が終わってからだろうから大変だと思うんだけど。僕の方も、なんかドタバタしちゃって。まあまあ、その分、終わる時間が早いから、この間の日曜日も楽だったんですけど。
まあ、雑談はいいですね。始めましょう。
今日は『機動戦士ガンダム』の第12話「ジオンの脅威」の4回目ですね。
先週から始まった「ガンダムマンチョコをとりあえず1つ開けて、中のシールに描かれたキャラクターについて語ってみよう」というコーナーを、今日もやってみようと思うんですけど。
【画像】ガンダムマンチョコ ©創通・サンライズ ©LOTTE/ビックリマンプロジェクト
さっそく開けてみましょう。ここで何が出るかですよね、本当に。よっ。
(袋を開ける)
……ん? アハハ。実に微妙なものが出ましたね。ハロが出ました(笑)。
【画像】ハロのシール ©創通・サンライズ ©LOTTE/ビックリマンプロジェクト
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> 【ハロ】アムロがフラウに送ったペットロボットは簡単な会話や脳波レベル測定も可能! 回転の他 手足を使った階段昇降もできる!!
> 【地球連邦軍のウワサ】蹴飛ばされても壊れないくらい頑丈でホワイトベースではアイドル的存在とか?!
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いやあ、なんか意外なものが出たね。
そうそう。忘れがちだけど、ハロってフラウ・ボウの持ち物なんだよね。アムロが作ったんだけど、それをフラウ・ボウにあげてるから。そんな設定だったね。
このハロというのは何かというと、まあ当然、当時のロボットアニメには「必ずペットみたいな動物が出てこなければいけない」というルールがあったわけですよね。
例えば、魔女っ子モノだったら「猫が一緒についてくる」とかあるじゃないですか。あれと同じで「主人公のチームには必ずペットがいる」っていうのが、もう定番だったんだけど。『機動戦士ガンダム』も、そんな当時の子供向けのアニメーションなんだから、ペットが必要なわけですよ。
そんな「毎週必ず、マスコット的なペットを出さなきゃいけない」という、スポンサーや放送局からの大変厳しいお達しがあった上で、富野由悠季が「いい加減にしろ! 宇宙時代にペットか!?」ということで考えたのが、ハロというロボットなわけですよね。
本編中も、なかなかいい味を出していると思います。
さて、今日は第12話「ジオンの脅威」の第4回目の解説なんですけど。ついにアムロのガンダムと、ランバ・ラルのグフとの戦いがスタートします。
しかし、アムロは今、精神的にかなり疲弊してて、逃避してて、半ばボケたような状態になっているわけですね。そんな状態で、果たして戦えるのか?
今回も、戦闘シーンは画面フリップを使いながら、ちょっと立体的に解説しようと思います。
この、無料の講座の終わりにも、ちょっと追加で解説をしますので、楽しみにしてください。
それでは『機動戦士ガンダム』講座、第12話「ジオンの脅威」、第4回目の解説のスタートです。どうぞ。
ガンダムとグフの「忍者合戦」
(本編再生開始)
ブライトさんが「援護しろ!」と言ったのはどういうことなのかというと、崖の上にジオンのモビルスーツが3機いたわけですね。
(パネルを見せる)
【画像】ジオンのモビルスーツ ©創通・サンライズ
このモビルスーツめがけて、ホワイトベースが主砲とかをバンバン撃ったら、崖の上にガーンと着弾して、もう土煙だらけになるんですね。
それを見たアムロは「よーし、行くぞ! 砲撃をやめてくれ!」と言って、崖の上へポーンと飛んで行きます。
この辺りで、アムロは完全に回復しています。
やっぱり、リュウの「とにかく行っちまえばなんとかなる」とか、ブライトさんの「とにかく行かせろ!」という判断は、わりと正しかったわけですね。
「生命の危機に瀕してショック症状にあるやつを治すには、もう一度、生命の危機に落とせばいい!」という、よくよく考えたら、これ、70年代の、スポ根アニメみたいに見えるんですよね。「死ぬほど特訓したら死ぬほど強くなる」という、全く理屈にあってないんだけど、納得力だけはあるというやつですね(笑)。
しかし、アムロが崖の上に飛び上がって行くと、もう、そこに敵はいないんです。
どうなっているのかというと、実は、いつの間にか敵は崖から降りていて、崖の上で目立つ位置に降り立ったアムロを、下から一斉に砲撃するんです。
アムロは「しまった!」と言います。3機がかりで狙い撃ちされているので、ガンダムは後ろへ吹っ飛ばされてしまいます。
こんな感じですね。ガンガンと敵の攻撃が当たって、顔にも弾が当たって、後ろへ吹っ飛ばされるんですね。敵の銃撃をくらって、必死に盾で防ぎながら後退します。
ランバ・ラルの戦いのやり方の面白いのは「ガンダム1機と戦う時に3対1で当たる」というように、自分の有利を崩さないところなんですね。
一番最初も「ザンジバルとシャトル2機 vs ホワイトベース」という3対1の関係の時に、ホワイトベースを釘付けにしている間に、自分達が最も隙を晒してしまうモビルスーツ発進というプロセスをこなしてしまう。次に、ガンダムが出てきた時も、絶対に3対1でしか戦わない、こういうふうに、有利な状況を、先に先に作ってしまう。
それに対して、アムロは、いつもいつも後手後手に回っていて、ランバ・ラルが作ったシチュエーションの中、「こういういうふうに戦うぞ」という手の中に巻き込まれて、その中でゴチャゴチャしているだけなんですね。
完全に、格の違いというか、戦略を先に立ててお膳立てした上で戦うやつと、ただ単にそこに巻き込まれるやつの差が出ちゃいます。
あとは、まあ、これはガンダムファンの中ではよく言われることなんですけど。
今回、ガンダムはガンダムバズーカを持って出撃したはずなのに、3機の攻撃を盾で防ぐカットで手に持っているのはビームライフルなんですよね。
『機動戦士ガンダム』って、こういう間違いがわりと多いんですけど。こんなに良い回でも、肝心のところで間違えるという。なかなか惜しい間違いですよね。
・・・
ガンダムが吹っ飛ばされ、アムロくんが「うわあーっ!」と叫び声を上げると、次のカットでランバ・ラルがすごい冷静な声で「アコース、クラッカーだ」と言うんですね。
この、パニックになったアムロの叫び声と、ランバ・ラルの部下への冷静な指示という、この対比が、やっぱり『ガンダム』の上手いところです。
もちろん、アムロくんが吹っ飛ばされて「うわあーっ!」て泣き言を言う時に一瞬入るカットでは、コクピットの中のアムロは、いわゆる上手(画面右)から下手(画面左)に向いて叫んでいます。
そして、次のカットでのランバ・ラルは下手側から上手を見ながら部下に指示をしています。
(ホワイトボードに図説する)
【画像】ホワイトボード
こんなふうに、こういうところでも、ちゃんと上手下手というのを守っていると、見てる人間が混乱を起こさないんですね。
主人公のアムロは、常に上手から下手に向いている。それに対して、アムロに攻撃を仕掛けるジオンの側は、出来るだけ下手から上手へ向いて話している。こういうふうにしておけば、「今、どんな話が進行しているのか?」ということに、あまり誤解が起こらないというのかな? ブレがないんです。
こういうことも、ちゃんとわかりやすくやってくれています。
このラルの言うクラッカーという武器自体は、大したことはないんですよ。ただ、このシーンの作画が好きなので、4カットを並べてみました。
(パネルを見せる)
【画像】投げるザク ©創通・サンライズ
まず、「アコース、クラッカーだ」と言った瞬間に、アコースという部下が乗っているザクが、手に持っていたクラッカーという武器を、大きく腕を振りかぶって、もう本当に『巨人の星』で星飛雄馬が大リーグボールを投げるような振りかぶりで投げます。
【画像】飛ぶクラッカー ©創通・サンライズ
次のカットでは、空中を飛んでいくクラッカー。
【画像】アムロのアップ ©創通・サンライズ
次のカットで、それを見たアムロが「なんだ!?」と言います。
【画像】爆発するクラッカー ©創通・サンライズ
そのクラッカーがどんな武器かというと、最後のカットで、クラッカーが爆発して、周りに爆発を撒き散らす。
これだけの武器だから、実は大したことがないんですけど。
ここでやっぱり僕が上手いなと思うのは、空中を飛んでいくクラッカーの間に、アムロの「なんだ!?」というセリフを入れることですね。
おそらく、実際の戦闘中、このクラッカーという武器が、ザクの手を離れて飛んでくる滞空時間は、もう1秒か2秒くらいだと思うんですけど。その間に、アムロの「なんだ!?」という顔を入れることによって、戦闘の流れが中断されているんですよ。本当は、投げてすぐに爆発した方が、スピーディーなんですけど。
しかし、ここにアムロのカットを入れることによって「戦争が主観的になる」というのかな?
こういうロボットの戦闘シーンって、テレビで見ている側にとっては、いつの間にか他人ごとになっていくんですね。
なので、表現をエスカレートさせるしかない。例えば「胴体を切る」とか「相手の腹を突き破って、血が出る」とか。そういうふうにして、見ている側に対して「ほら、これはあなたの出来事なんですよ? 痛そうでしょ? ドキドキするでしょ?」ということで、どうにか主観的にドラマを作ろうとするんですけども。
それに対して、富野さんのやり方は、ここで「なんだ!?」というアムロの顔を入れ、一言セリフを言わせることで「ああ、アムロから見たら、今、不気味な武器が向こうから飛んで来ていることしかわからないんだ!」ということで、ドキドキ感を出すんですね。
こういう、テレビアニメのフレーム、常識を守った上で、戦闘シーンを組み上げて行くところが『ガンダム』の上手さだと思います。「新兵器が飛んでくる」という数秒の間に、ちゃんと1つのドラマを作っているんですね。
この「なんだ!?」というセリフもそうですし、「敵の新兵器だ!」というセリフもそうなんですけど。今回は、ザクも新兵器を繰り出してくるし、グフという見たことない新型モビルスーツも出てきます。
そして、実は、ランバ・ラル達も、後で分かるんですけど、ガンダムに関してのデータを上から何ももらってないんですね。
だから、お互いに目に映る全てが新兵器というか、全てが秘密兵器。そんな、相手が何をしてくるかわからない状態での戦いなんです。
僕はこれを「忍者合戦」と呼んでいるんですけど。『伊賀の影丸』に、忍法十番勝負という「お互いにどんな忍法を使うのかわからない者同士が術を掛け合う」という戦いがあったんですけど。今回ね、もう完全に、ノリが忍者モノなんですよ(笑)。
そこら辺がハッタリの効いた頭の悪いアニメーションになっていて、すごく面白いんです。『ガンダム』というのは、そういうものを載っけてくるんですね。
・・・
ガンダムはこのクラッカーでやられて、崖の下に吹き飛ばされます。その隙に、いつの間にか、また崖の上に移動しているグフは、ガンダムに上から飛びかかります。
地形の高低差を利用するラル。逆にアムロの方は、自分が崖の上にいた時は下から狙い撃ちされて不利。次に、崖の下にまで降りたら、今度はランバ・ラルが上から飛び降りて来て不利と、どこまでも地形の優位さを使わせてもらえないんですね。
全てはラルが事前に考えた「こういうふうに戦おう」というプランの上で踊っているだけにしか過ぎないわけです。
さて、やっと出てきました、グフ。グフがヒューンと飛んでくるんですね。
(模型を使って解説する)
【画像】グフとガンダムの模型
僕、アニメを見ててびっくりしたんですけど、真上から、さっきのムチをビューンと振り下ろして、ガンダムが持っているガンダムバズーカに絡みつけるんですよね。で、完全にムチがピーンと伸びた状態のカットが映る。
このシーン、一応、アニメ界では「名シーン」と言われているんですけど。よくよく見たらマヌケなんですよ。『ガンダム』のプラモデルのコンテストとかでも、このシーンを再現している人がいるんですけど、やっぱりマヌケなんですね(笑)。
まあまあ、上から飛びかかられた瞬間に、ガンダムはすかさず上を向いて、頭からバルカン砲をバーッと撃つんです。
流石のラルも、ここで初めてビックリするんですよ。それまで、すっとナメきっていたガンダムに対して、真上から攻撃してやろうと思ったら、そいつは頭を上に向けて、おでこから機関銃を撃ち出したんですから。
バルカンの弾がバーッとグフに当たると「こ、これは……!」とつぶやきます。そんなとこに武器があることを知らなかったからですね。ガンダムに関するデータをラルはもらってなかったからです。
だけども、すぐさま持ち直したラルは「しかし、ヒートロッドに耐えられるかな!?」と、例の鉄のムチをビュンと出して、ガンダムの持ってるバズーカに絡みつける。
するとアムロは「はっ!」と言うんですね。その瞬間、ムチから電流がバーッと流れます。
ムチから電流が流れた瞬間に、アムロはガンダムバズーカを投げ捨てる。と、同時に、盾を構えるんですね。
(パネルを見せる)
【画像】盾を構えるガンダム ©創通・サンライズ
次の瞬間、電流によってこのバズーカの中に収められていた弾薬がドーンと爆発するんですけども、ガンダムはとっさに構えた盾のおかげで助かる。もし盾がなかったら、ガンダムもたぶん壊れていたはずです。
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> ランバ・ラル:やる! あのモビルスーツのパイロットめ! よくも自分のバズーカの弾の爆発でやられなかったものだ!
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それを見たラルが、こんなセリフを言います。いちいち戦闘中に相手のどこが優れているのかを解説してくれるわけですね。
こういうシーンって、普通は、誰か他に解説役がいるものなんですけど。ここでも、リュウとかブライトさんが解説しても良いんですけども。今回は、お互いに解説し合うことで、1対1の臨場感を出しています。
ここで、ランバ・ラルもガンダムに乗っているアムロのことをすごいと思うんです。自分と戦っているのが、実は14歳の子供だということに気が付いていないんですね。
これをやっているからこそ、後で「子供が乗っていたのか!?」という、ランバ・ラルの後のセリフが、すごく活きてくるわけですね。
最初、ランバ・ラルは相手をナメてたんですけど、「あんな所に武器がついているのか!?」っていうガンダムという機体への驚きの次には「バズーカが爆発するとわかった瞬間に持っていた武器を自ら手放して、即座に盾を構えた」ということで「あいつ、やるよ」と。
これから未知の敵と戦うという時に、武器を手放すという判断の速さ。盾を構えるという判断の速さ。そして、それが弱冠15歳の少年だったということで、ラルの驚きは、この後、どんどん明らかになっていくわけです。
・・・
ラルが「よくも自分のバズーカの弾の爆発でやられなかったものだな!」と言うと、直後に部下から「ラル様、右から!」と、無線が入ります。
「なに?」と言って右を見ると、ガンキャノンがボーンボーンと弾を撃ってるんですね。
そして、さらに「もう1台出てきました!」と言うと、「うっ……あれもモビルスーツか!?」って言うんですよね。
ラルが「えっ? あれもモビルスーツなの?」と言った物がなんなのかと言うと、はい、これですね。
グフの絵の上から「あれもモビルスーツなのか!?」と言うラルの顔のアップが、画面分割で映されると、次のカットで出てくるのが、この、いかにも弱そうな、腕をダラーンと下げたガンタンクなんですね。
【画像】ガンタンク ©創通・サンライズ
こんなのが、キャタピラをキュルキュル言わせながらやってくる。「ちょっと待てよ!」と。「俺達、ちゃんと2本足で走ってるじゃん? 真面目にロボットじゃん? だからモビルスーツなのに。なにあれ? 戦車なの?」っていう(笑)。
で、ガンタンクが映ったと思ったら、次はリュウのアップのカットになって「ハヤト、急げ! 援護射撃をしてやってくれ! アムロが心配だ!」というセリフに入るんです。
実は、この一連のカットの流れが何のためにあったのかと言うと、「アムロとランバ・ラルの1対1の状況に、ここでやっと第三者のリュウが入ってくる」という流れを説明するためなんです。
ここでの「もう1台出てきました!」「あれもモビルスーツなのか!?」と言うときの「一度、立っているグフとザクを見せてから、その中に乗っている人間の顔を画面分割で見せる」というのは、実は段階寄りなんですね。ジワジワと寄って行っていくという演出法です、
まあまあ『ブレードランナー』で言うと、「一番最初はタイレルビルが見えて、そこの部屋の中に段々とアップになって行って、その中の1室でおじさんが外を見てボンヤリしている」みたいに、段々と寄っていくことで、主観に入ってくるようにしています。
このシーンも、簡単な寄りというのを4段階でやってるわけです。
(本編中断)
ジオンの派閥と「忍者合戦」について補足
はい、無料はここまでです。
いや、もう、楽しいですよね。『機動戦士ガンダム』って、本当によく出来た話で。
今回のランバ・ラルが採った戦法というのは、いわゆる経済学で言うところの「ランチェスター戦略」というやつですね。ランチェスター戦略というのは「必ず相手の3倍の兵力で戦う」という考え方なんですけど。
素人というのは、作戦というものについて、ついつい「どのように戦うのか?」と考えちゃうんですけど、そうではない、と。本当の作戦というのは「戦場では必ず、1の相手に対して、こちら側が3になるように」と、数の力だけで考える。そうすれば、もうそれだけで勝てるんだ、と。
まあ、孫子の兵法をヨーロッパ人風に言うと、ランチェスター戦略というやつになるんですけども。
ランバ・ラルが、最後の方でちょっと慌てふためいていたのはなぜかと言うと。それまで、自分は常に1対3の有利さで戦っていたつもりだったのに、まさかホワイトベースから、ガンダム以外のモビルスーツが出てくるとは思ってなかったからですね。
もちろん、ガルマはガンキャノンやガンタンクとも戦ってたんですよ。ということは「そこで得ていたはずのガルマの情報が、ランバ・ラルには転送されていなかった」ということがここでわかります。つまり、ジオンの本国内の、ちょっとドロドロしている感じがここで出ているんですよ。
またそれを、ガルマの葬式の回でやるから良いんですよね。ガルマの葬式の大式典が行われるというエピソード中で「これまでは、ずっと一枚岩に見えていたジオンも、実はそうではなくて、情報というのをそれぞれの派閥同士で隠して、他に見せないようにしている」ということがほのめかされる。
ランバ・ラルも、最初から3機あるとわかっていれば、やり方も違ってたんでしょうけども。今回のように、勝てると思ってやり始めたら、案外、向こうも強くて、新兵器を持っていて、おまけにモビルスーツが3機もあったんです。
「しかも、3つ目のあれはなんだ?」って(笑)。
(ガンタンクの模型を見せながら)
【画像】ガンタンクの模型
この、腕がダラーンと下がった状態で出てくる所が、僕、マヌケで好きなんですけども。こんなのが、キュルキュル言いながら出て来るわけですよね。
まあ、その結果、ガンタンクも出てきて3対3になってしまったので、ここから先、ランバ・ラルも「もうちょっとだけ手合わせして、今回は引き上げよう」と考えたわけですね。
・・・
あと、ここでのやりとりを整理すると。
もともと、ランバ・ラル達は崖の上で待ち構えてたわけですね。「崖の上の高い位置から下に向けて攻撃する」という有利なポジションで、一番最初に出てきたガンダムに対して攻撃したわけです。
それに対して、ホワイトベースが援護射撃をして、ランバ・ラル達はバンバン撃たれる。しかし、そのせいで土煙が上がって、何も見えなくなってしまった。
そんな中、アムロはガンダムで「よーし、もう砲撃やめてくれ!」と、同じ崖の上の高さに上がっていく。
すると、いつの間にか、ランバ・ラル達は下に降りていて、崖の上で丸見えになっているガンダムに狙いを定め、一斉に砲撃する。
攻撃を受けて崖から落ちてしまったガンダムに対して、ランバ・ラルはもう一度、崖に上がり、ガンダムの上の位置を制して、下に向かって攻撃しようとする。
しかし、そこでガンダムが、上を向いてバルカンを撃ったので、驚いてムチを繰り出す。
アムロはそのムチの攻撃を、ハイパーバズーカを出して防いだつもりなんだけど、そのムチに電撃が走る。
「このままではバズーカの中の弾が誘爆してしまう!」ということで、アムロは素早く手を離して、盾を構え、そのおかげで、バズーカが爆破した時も耐える事が出来た。
この、ものすごい丁々発止のやりとり。これを、僕は解説の中で「忍者合戦」と言ったんですけども。
昔、『BSマンガ夜話』をやっていた時に、夏目房之介さんといしかわじゅんさんが、よく「これは忍者合戦だな」って言ってたんですよ。
どういう意味かと言うと、「こういった超人的な能力を持った者同士の戦いの絵的な見せ方といういうのは、少年マンガのごく初期のうちに、ほぼ出尽くしている」ということなんです。まあ、白土三平とか、いろんな人がいるんですけど。「こういった絵的にカッコいい見せ方というのは、横山光輝が『伊賀の影丸』の時代に、ほぼ完成させている」と。
つまり、そこから先のアニメとかマンガにおける、超能力者同士の戦いとか、ロボット同士の戦いのシーンというのも、よくよく見ると、昭和30年代から40年代の前半までの忍者モノで完成された見せ方を、いかにしてもう少しカッコよく見せるか? 動かすか? ということで出来ているわけですね。
今回の『ガンダム』も、よくよく整理して見てみると、完全に、昔、少年サンデーに載ってた『伊賀の影丸』と同じようなやりとりを、すごくスピーディにやっているだけなんです。そこにビックリするわけですね。
以上、ちょっとだけ解説を加えました。
では、無料はここまでです。ここから先は有料枠になります。
今のところ押され気味のガンダムとグフの戦いがどうなるのか? 後半の解説をお楽しみください。
それでは、どうぞ。
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・ガンダム完全講義1:虫プロの倒産とサンライズの誕生
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・ガンダム完全講義4:第1話「ガンダム大地に立つ!!」解説
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・ガンダム完全講義8:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part2
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・ガンダム完全講義12:第6話「ガルマ出撃す」解説Part1
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・ガンダム完全講義13:第6話「ガルマ出撃す」解説Part2
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・ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1
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・ガンダム完全講義15:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part2
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・ガンダム完全講義16:第8話「戦場は荒野」解説Part1
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・ガンダム完全講義17:第8話「戦場は荒野」解説Part2
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・ガンダム完全講義18:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part1
https://www.amazon.co.jp/dp/B07W4324WF
・ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2
https://www.amazon.co.jp/dp/B07WDBZXPB
・ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1
(https://www.amazon.co.jp/dp/B07WVPWQSC
・ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2
https://www.amazon.co.jp/dp/B07WZSYS3C
・ガンダム完全講義22:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part1
https://www.amazon.co.jp/dp/B07XRHR39N
・ガンダム完全講義23:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part2
https://www.amazon.co.jp/dp/B07Y1YCMMB
・ガンダム完全講義24:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part3
https://www.amazon.co.jp/dp/B07YCDY3ZG
・ガンダム完全講義25:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part4
https://www.amazon.co.jp/dp/B07YMSF49X
・ガンダム完全講義26:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part5
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・ガンダム完全講義27:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part6
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・ガンダム完全講義28:第12話「ジオンの脅威」解説Part1
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・ガンダム完全講義29:第12話「ジオンの脅威」解説Part2
https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZRH57HW
・ガンダム完全講義30:第12話「ジオンの脅威」解説Part3
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