見出し画像

『天空の城ラピュタ』解説:3つの「ラピュタ遺跡」を掘り返す

 岡田斗司夫です。

 今日は、2019/09/01配信のニコ生・岡田斗司夫ゼミ「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」からハイライトをお届けします。

----

 ということで、じゃあ『天空の城ラピュタ』の話に行きましょう。

 今日は『ラピュタ』の特集です。でもね、内容とかテーマは、2018年の1月7日と1月14日の回で、わりと語り尽くしてるんですよ。

・岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス

・岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界

 なので、今回は、ちょっと別方向から話してみようと思います。

 これは、『ラピュタ』に登場するスラッグ渓谷の、宮崎さんがわりと初期に描いたイメージボードです。

(パネルを見せる)

画像1

【画像】スラッグ渓谷 © 1986 Studio Ghibli

 今回、話したいのは、このパズーの生まれ育ったスラッグ渓谷の話なんですよ。「そもそも、このスラッグ渓谷というのはどんな場所なのか?」ですね。

 『ラピュタ』というのは、もともとは、宮崎さんが、かなり昔にテレビシリーズとして企画していたお話だから、このスラッグ渓谷に関しても、何時間もの、テレビ放送何週間分ものエピソードが詰まっているんですよね。

 『天空の城ラピュタ』という作品は、劇場アニメとして作られることになり、カットされてしまったんですけど。本編の中には、そういった「考えたんだけど、カットされてしまった」とか「時間の都合で入らなかった」みたいなアイデアとかエピソードがいっぱいあるんです。

 そういうのを僕はラピュタ遺跡って呼んでいるんですけど。ラピュタの中にまだ残っている初期のアイデアが、本編中にチラチラ出てくるんですよね。

 そういうラピュタ遺跡について、今回は話してみようと思います。

 『ラピュタ』って、すごく話しやすいアニメなんですよ。

 なぜかというと、高畑勲がプロデューサーやってたからなんですね。

 高畑勲は、『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』でプロデューサーをやったんですけど。イコール、どういうことかというと「宮崎駿にかなりツッコんだ」わけですよね。

 例えば、当初はラピュタの全体像が見えなかったところに、高畑勲が「全体像を見せないと話にならない」と説得して、見せるようにさせたとか、そういう高畑勲の考え方がかなり入っているんです。

 それ以降、『トトロ』と『火垂るの墓』で、2人がお互い別々に監督をするようになってからは、そんなにキツいプロデューサー的な縛りがなくなってしまったので、宮崎駿としては、高畑勲の目を気にしながらも、わりと自由に作れるようになったんですけど。

 なので、『ナウシカ』と『ラピュタ』って、お話としての背骨がすごく強いんです。だから、かなり色々と語れるんですよね。そういう意味では「なぜ、これが入らなかったのか?」という、本編内に残された遺跡を見つけやすい作品になっています。

・・・

 今回は、このスラッグ渓谷を説明するにあたって、こういう簡単な地形の模型を作ってみました。

(模型を見せる)

画像2

【画像】スラッグ渓谷模型

 この谷に住んでいる人にとって、この鉱山というのがどういう場所なのか?

 なぜ、こういうふうに、街が谷の色んな場所に点々と存在しているのか? 底の方にまで存在しているのか?

 なんで、こういう鉄道が走っているのか? パズーの家はこのてっぺんにあるのか? この巨大な穴、この鉱山はどうなっているのか?

 そういういろんな謎が、この地形図を作ったことによって解ける部分もあります。

 他にも、スラッグ渓谷の「スラッグ」とは何だろうかという問題もあるんですけども。こういったスラッグ渓谷の話が、今日語るラピュタ遺跡その1です。

・・・

 次に、その2は……ちょっとこれ、小さいんですけど、ラピュタ自体の模型ですね。

(模型を見せる 株式会社さんけい みにちゅあーとキット ラピュタ城)

画像3

【画像】ラピュタ模型

 これが、クライマックスの舞台になっている天空の城ラピュタです。

画像4

【画像】ラピュタ模型裏

 これを見るとわかるんですけど、この裏側の部分が崩落しています。この不完全さを見て「かつてはどんなすごい城だったのか?」と考えた人もいるんじゃないかと思います。

 『ラピュタ』の設定っていろいろ発表されているんですけど、不思議なことに、このラピュタ自体のサイズはどこにも書いていないんですね。

 なぜかと言うと、映画の中で、サイズ的に矛盾する描写がいくつもあるからなんです。だから、決めようがない。

 しかし、今回の講座では、画面上のいろんな証拠から、ラピュタのサイズを特定することに成功しました。

 その結果、「映画に登場するラピュタのサイズは、直径なんと1760mで、東京の中心にある皇居とか、あと大阪城とほぼ同じサイズである」ということがわかりました。

 しかし、そんな巨大に見えるラピュタですら、実は、大崩壊した後の姿なんですね。そもそも、このラピュタというのは、2500年前に大空に浮かび、この地上の全てを支配していたはずなんですけど。それは、今の崩れたラピュタではないんですよ。

 当時の完全体としては……うーん、どう説明すればいいかな? 「完全体」というと、思わず『ドラゴンボール』で説明したくなるんですけど(笑)。

 完全体のラピュタというのは、なんと直径5.4kmで、高さが3.7km。ほぼ富士山と同サイズなんですね。幅としては、富士山の宝永山あたりまでを含めた全て。高さとしては、富士山より100m高い。それが、完全体のラピュタだと考えてください。

 そうですね。今のラピュタとかつてのラピュタは「フリーザさまの一番最初に車椅子みたいなのに座っている時と、最終形態くらいの強さの差がある」と思ってくれればいいです。まあ、フリーザ様の例えではサイズの差はあまりないから、言っても無駄ですね。

 ラピュタ遺跡その1がスラッグ渓谷だとすると、その2はラピュタそのもの。2500年前に空中に存在した、天空の巨大なラピュタというのを完全再現しようと思います。

・・・

 ラピュタ遺跡その3はポムじいさんです。

(パネルを見せる)

画像5

【画像】ポムじいさん © 1986 Studio Ghibli

 このポムじいさん、実は、かなり重要なキャラクターなんですよね。

 パズーとシータがスラッグ渓谷の地下で会う、人のいいお爺さんなんですけど。この爺さんの重要性に気が付いている人が、ほとんどいないんですよ。

 例えば、ポムじいさんの登場するシーンって、5分もあるんです。124分の映画の中で、まるまる5分あるんですよ。すごく長い。

 セリフの分量で言えば、パズー、シータ、ドーラ婆さんに続いて4番目にセリフが多いんです。実は、悪役であるムスカよりも多い。つまり、それくらい重要なキャラクターなんです。

 おまけに、このポムじいさんが出て来るシーンは、パズーとシータとポムじいさんの3人しかいない。すごく重要なポイントなんですね。

 実は、このポムじいさんこそ、『天空の城ラピュタ』に登場する最重要キャラクターなんです。

 宮崎駿は、とにかく124分という尺に収めるために、いろんなお話とか設定とか、登場人物のセリフを削りに削ったんですけど、やっぱり、このポムじいさんの出番は5分以下には削れなかったんですね。

 では、そんなポムじいさんというのは、何者で、何を象徴するキャラクターなのか?

 これはポムじいさんが登場する、ほとんど最後のカットなんですけど。

(パネルを見せる)

画像6

【画像】パズーとポムじいさん © 1986 Studio Ghibli

 ポムじいさんが残される真っ暗な穴と、パズーが「さあこっちだ!」とシータを誘う地上の光溢れる世界。この何気ないカットで、宮崎駿は何を伝えようとしたのか?

 ラピュタ遺跡その3は、謎のキャラクター、ポムじいさん。この謎を徹底的に追ってみようと思います。

・・・

 あと今日の都市伝説ですね。

 毎回毎回、ちょっとした、ちょっと不思議な話や怖い話、都市伝説の話をしているんですけれども。今日の都市伝説は幻の空中帝国についてです。

 ジョナサン・スウィフトが18世紀に書いた『ガリバー旅行記』の中に出てくるのが、空に浮かぶ王国ラピュータなんですけど。その他にも小人ばかりの国リリパットや、巨人の住むブロブディンナグというのが登場するんですよ。

 この『ガリバー旅行記』というのは、当時、アフリカとかアジアで発見された小さい人種とか、あとは巨人族の骨が次々と発掘されたという事件に大きく影響されてるんですね。

 ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』というのは、一応、政治風刺であったり、社会風刺を目的に書かれたものではあったんですけど、決して元ネタがない話を書いていたわけではないんです。

 じゃあ、この空中帝国ラピュータというのは、一体どんな元ネタがあったのか? 空に浮かぶ王国というのも、何か現実の事件をモデルにして作られた話だったはずなんです。

 では、空に浮かぶ王国というのは何だったのか? これを話してみようと思います。

 これは、当時の『ガリバー旅行記』に載ってたイラストなんですけど。

(パネルを見せる)

画像7

【画像】ラピュータイラスト

 磁石で浮かぶラピュータ。後は、そのラピュータという小さい島の下にある巨大な島がバルニバービという、ラピュタに支配されている島です。

 アジアの果て。アジアの東の果てにある謎の国・日本の、さらに東の海に、バルニバービという大きな島があって、その上にラピュータという、直径4.5マイルの空に浮かぶ島が浮いている。

 実は、これにはモデルになった実際の事件があるんです。

 中世の初め頃、10世紀になる前のフランスでは「雲の上に人間が住んでいる大陸がある」と信じられていたんですね。

 「そこに住んでいる人がいる」と、本当に信じられていたし、その目撃談や、それどころか貿易の記録まで、多数残されています。

 そんなふうに、歴史上、本当にあった空の上の王国の話とかを、都市伝説として紹介したいと思います。

・・・

 あと、今日のプレミアム放送、放課後の時間は、一応、予定としては「岡田斗司夫の妄想劇場」ということで、『ラピュタ2』、『続・天空の城ラピュタ』というのを語ってみようと思います。

 実は、本編の中にいっぱいヒントが入っているんですけど。それをちょっと妄想してみる、と。

 あと、『ラピュタ』の生まれた場所。宮崎駿が『ラピュタ』のアイデアを考えるために使っていた隠れカフェの正体というのを、まあ、放課後の時間には紹介してみようと思います。

 それでは、ここまでが目次です。では、『ラピュタ』語りを始めます。よろしくお願いします。

----

 記事全文は、下記のnote記事もしくはKindle電子書籍でお読みいただけます(有料)。

ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!

https://note.mu/otaking/n/n906ff18639c8

岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密

https://www.amazon.co.jp/dp/B07XPM5C91

ゼミ、マンガ・アニメ夜話 電子書籍販売中!

AmazonのKindleストアで、岡田斗司夫ゼミ、岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話の電子書籍を販売中です(「岡田斗司夫アーカイブ」でもご覧いただけます)。

【ジブリ特集】

・岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス

https://www.amazon.co.jp/dp/B07XPTT676

・岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界

https://www.amazon.co.jp/dp/B07XPT5L55

・岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密

https://www.amazon.co.jp/dp/B07XPM5C91

【月着陸特集】

・岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VPW46ZB

・岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VS3K6SW

・岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VMS997D

・岡田斗司夫ゼミ#291:アポロ宇宙船(前編)〜地球が静止した1969年7月21日とアポロ11号の打ち上げ

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VX6D6VH

・岡田斗司夫ゼミ#292:アポロ宇宙船(後編)〜月着陸と月面歩行

https://www.amazon.co.jp/dp/B07W59YB8L

【岡田斗司夫ゼミ】

・岡田斗司夫ゼミ#287:『アラジン』特集、原作からアニメ版・実写版まで徹底研究!

https://www.amazon.co.jp/dp/B07TVBZQ8J

・岡田斗司夫ゼミ#288:映画『君の名は。』完全解説

https://www.amazon.co.jp/dp/B07V5LX7F5

・岡田斗司夫ゼミ#289:NASAとLINEの陰謀、スパイダーマンをもっと楽しむためのガイド

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VC4QFBP

・岡田斗司夫ゼミ#290:『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと、『巨人』世界の地理

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VHH4PGP

岡田斗司夫ゼミ#293:『なつぞら』特集と、『天気の子』解説、“禁断の科学”の話

https://www.amazon.co.jp/dp/B07WGJG52X

・岡田斗司夫ゼミ#294:『千と千尋の神隠し』の不思議な話と、幽霊、UFO、怪奇現象の少し怖い話特集

https://www.amazon.co.jp/dp/B07WSKDM2G

・岡田斗司夫ゼミ#295:終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」

https://www.amazon.co.jp/dp/B07X3ZJN6S

・岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病

https://www.amazon.co.jp/dp/B07XCTJSPJ

【ガンダム完全講義】

・ガンダム完全講義1:虫プロの倒産とサンライズの誕生

https://www.amazon.co.jp/dp/B07TV2JC9L

・ガンダム完全講義2:ついに富野由悠季登場!

https://www.amazon.co.jp/dp/B07TVBMSQG

・ガンダム完全講義3:『マジンガーZ』、『ゲッターロボ』から始まる映像革命

https://www.amazon.co.jp/dp/B07V3KDJV2/

・ガンダム完全講義4:第1話「ガンダム大地に立つ!!」解説

https://www.amazon.co.jp/dp/B07V7TCPSG/

・ガンダム完全講義5:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VC5B38D

・ガンダム完全講義6:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VC777QW

・ガンダム完全講義7:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VB2HBVT

・ガンダム完全講義8:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VC41HS8

・ガンダム完全講義9:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part3

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VMT9F71

・ガンダム完全講義10:第4話「ルナツー脱出作戦」解説

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VMRT2QY

・ガンダム完全講義11:第5話「大気圏突入」解説

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VT4CNL3

・ガンダム完全講義12:第6話「ガルマ出撃す」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VQZGNSF

・ガンダム完全講義13:第6話「ガルマ出撃す」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07TTBGCZQ/

・ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07V2FKQB6/

・ガンダム完全講義15:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VFDQVKW

・ガンダム完全講義16:第8話「戦場は荒野」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VMKW2W5

・ガンダム完全講義17:第8話「戦場は荒野」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07VTLMMZ7

・ガンダム完全講義18:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07W4324WF

・ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07WDBZXPB

・ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1

(https://www.amazon.co.jp/dp/B07WVPWQSC

・ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07WZSYS3C

・ガンダム完全講義22:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07XRHR39N

----

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
 なお、ニコニコチャンネル「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」(月額2,000円+税)では、テキストのほか、毎週日曜の「岡田斗司夫ゼミ」生放送とゼミ後の放課後雑談、毎週火曜の「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画、過去のニコ生ゼミ動画、テキストなどのコンテンツをアーカイブサイトから自由にご覧いただけます。

https://ch.nicovideo.jp/okadatoshio-archive

ここから先は

0字
毎週、「岡田斗司夫ゼミ」および「岡田斗司夫のマンガ・アニメ夜話」のテキスト全文をお届けします。

ニコ生で配信中の「岡田斗司夫ゼミ」のテキスト全文をお読みいただける有料マガジンです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?