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ガンダム監督・富野の大予言!日本のアニメが中国に勝てない理由

 岡田斗司夫です。

 今日は、2019/11/24配信のニコ生・岡田斗司夫ゼミ「富野由悠季を語る 〜2010年11月講演感想戦」からハイライトをお届けします。

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(動画再生開始)

 こんばんは岡田斗司夫です。

 今日は、つい先ほどまでありました富野由悠季さんの『NHKカルチャースクール』の講演会を反芻し、それを元に勉強するという会ですね。

 今日の会の前半は富野由悠季を語るっていうことなんですけれども。先ほど挙手をしていただいたところ、先ほどの富野さんの講演を聞かれた方が、会場の中には4分の1いらっしゃるぐらいだったので、まず「富野さん自身の講演を振り返って復習する」ということから始めたいなと思います。

 では着席させていただきます。

・・・

 富野さんの講演を初めて聞いた方もいらっしゃると思うんですけども、あの、すごく笑顔がカワイかったんですよね。

 富野さんがあんなに笑う人だとか笑顔がかわいい人だっていうのは、僕も付き合い長いんですけども、最近になって発見して。「なんか最近、笑顔いいなあ」と思ったんですけど。

 あれは単にアニメ作る現場から長いこと離れたせいで、富野さんが丸くなったんですよね。昔はニコニコ笑ってたと思ったら次の瞬間には鬼のような表情でキレて怒鳴る怖いおじさんだったんですけど(笑)。

 最近は怒鳴らなくなって、いい人になって「普通に丸くなっちゃったのかな?」とも思ってたんですけども。

 しかし、講演がいざ始まるとですね、政治を語り、人類を語り、歴史を語るという、熱くなるおじさんでした。

 では、その富野さん自身の講演、『這い上がるために』っていうタイトルだったんですけど。そのダイジェストを今からちょっと話します。

・・・

 一番最初の富野さんの挨拶が……まあ、観客席を見て、すごいびっくりしてたんですね。で、客層っていうのは、まあ、だいたい今日の皆さんの感じです。

 なんか、富野さんにとってみればいつものお客さんだったんですね。言い方は悪いですけれども。

 で、富野さんはそれにですね、入って来るなりすごい衝撃を受けてて。「えぇっ!?」ていう顔をしばらく本当にしてて。で、おでこがもう真っ赤になっててですね。一番最初、冒頭の5分ぐらいがこの愚痴でした。

 「思ってた客と違う!」という。まるであの『M-1グランプリ』のダメだった時の笑い飯が「思ってたのと違う!」ってコメントをしたことがあったんですけど、あんな感じですね(笑)。

 今日、80人以上のカルチャースクールが満員だったんですけど。

 富野さん、なんかどうも「NHKの大阪カルチャーセンターだから、今日は主婦がいっぱい来るに違いない!」と思ってたみたいなんですよね。

 自分のアニメなんか見たこともない、主婦とかオバサマ、女の人が山ほど来て。なんか、そうは言わなかったんですけど、もうちょっと「ワーワー! キャーキャー!」みたいな感じをですね、予想してたらしいんですけども。

 もうね、俺、本当にね、喉まで出かかった言葉っていうのが「いい加減にしろ、富野由悠季! お前が大阪で講演したからといって、主婦が80人も来るわけねえだろっ!」と。

 そう思っていたら、講演が終わった後で会場から出てくる人のほとんどが、みんなエレベーター付近で同じようなこと話してたんですよ。「ああ、みんなあそこで引っ掛かったんだな」と思いました(笑)。

・・・

 富野さんは、とりあえずその主婦向け、アニメを見ない人向け、サラリーマン向けに作ってきたレジュメを、まあ、1回諦めて。

 そこからリカバーするために、北京大学で……つい昨日まで中国にいらっしゃったんですね。で、その時の話から始められて。それが40分ぐらい続きました。

 この話は面白かったです。

 あのね、北京大学での富野由悠季の講演会、というか公開講義みたいな形だったそうなんですけど。それは明治大学との共通の講座で『先端アニメ交流会』というような名前で「中国と日本、お互いが持っているアニメーションとかコンテンツビジネスに関しての先端的な講義というのを、それぞれ交換しよう」という話で。

 その交流会に日本からは富野さんが行ったんですね。日本から行ったのは富野さんと、あと付き添いで富野さんの奥様もいらして。さらにそのその付き添いで 明治大学側として明治大学の教授の藤本ゆかりさんというマンガ評論をやってるマンガの研究家の方もいらっしゃいました。

 この人は奇しくも、皆さんも今手元に持っているだろう、ちくま書房の『遺言』という本の編集者でもあるんですね。だから、北京大学でいったいどんなことがあったのか、また今度、藤本さんからも話を聞けると思うんですけども。

・・・

 富野さんは自分の中国での特別講義にすごいショックを受けてらっしゃいました。

 なんでかというとですね、600人くらいの教室が一杯になったそうなんですね。5年くらい前に人民大学という、それも中国でわりとトップレベルの大学なんですけど、そこで授業した時にはまだ400人行くか行かないかぐらいだったんですね。それが、600人の会場がほぼ満員になって。で、それも、ものすごい熱心なアニメファンばっかりだった。

 北京大学自体が学生数が4万人なんですね。ほんとに巨大な大学なんです。それも「マンモス大学だから偏差値もそれなりなんだろう」というと、そうじゃなくて。いわゆる中国の東大、ハーバードです。まあ人口が多いから。トップ中のトップ、とりあえず経済的にもトップだし、成績とかもトップの人間でないと北京大学なんて入れないわけですね。

 その北京大学にアニメ研というのがあってですね、そのアニメ研の人数だけで600人いるそうなんですね。俺ら、そんなの聞いたことないですよね?(笑)

 600人って言ったら、第6回か7回の『日本SF大会』の人数と同じです。たぶん昭和40年代、日本中のアニメファンを全て集めても、それくらいしかいなかったんですよ。

 北京大学という中国最大のインテリ層で、おまけに北京大学にいくような人たちですから、勉強できるだけでなくてエリート候補なわけですね。産業界とかビジネス界全体のエリート層として期待されて。中国じゅうの田舎とか都会からガーッと北京に集まってくるわけですね。

 それが、家の誇りとか名誉とか、一族とか地元の期待というのを背負って北京に来て、北京大学に行ったら、何を間違えたかアニメにはまってしまってですね(笑)。

 今や、ビデオ流出事件(注:尖閣諸島付近で起きた中国船籍との悶着を記録した映像が海上保安官によってYouTubeに流出されたという事件。2010年11月)とかで日中関係があやしくなっているところなのに、日本人の講演を聞きに来ている。

 これ、あとで富野さんに聞いたんですけれども。

 「あの尖閣諸島の事件が起こって、中国と日本とのありとあらゆる文化交流が全面的にほぼストップしてしまった」と。コンサートとかもぜんぶ中止になりましたよね?

 で、富野さんの講演会は、それ以降、初めて行われた日本人との文化交流なんだそうです。それぐらい北京大学はこの先端アニメ交流会をやりたがっている。

 なぜかと言うと、北京大学というところ自体が……エリートばっかり集まってるから「体制バンザイ! 中国共産党バンザイ!」の組織かというと、そうではなくて。中国の中でもかなり過激な学生運動の拠点でもあるそうなんです。

 政府としても「『ガンダム』の富野由悠季を見たいという学生の声を抑えてしまっては、また暴動になる!」という。おそらく、ほんとにそう考えたんですよ。

 で、そのおかげで、富野さんが講演する時には、どこか挙動不審な、なにかを隠し持っているかのごとく背広の懐部分が妙に盛り上がった人が、SPみたいに付き添っていたそうなんですね。なかなか面白いなと思いました。

 ……いや、これは楽屋話だった。やっぱり今のは忘れてください。僕の妄想です。はい(笑)。

・・・

 他の大学でもアニメ研というと、だいたい数百人規模だそうです。つまり、中国では、今、エリート層が行く大学の学生数が数万人規模になってきていて。その中でアニメ研というのが数百人。

 北京大学4万人のうち600人ってすごいですよね。北京大学の人口の1.5%がアニメ研に入っているということなんですね。

 そんなの聞いたことがないですよね。日本でも一番アニメやマンガが盛んだった1980年後半から90年代に入りかけの時でも、「大学生の1%が漫研、アニメ研に入る」なんて話、僕は聞いたことないんですけれども。

 だって、漫研、アニメ研に入るってことは、イコール「僕たちは日本の文化が好きです!」と宣言してるようなものだから。ある種、それを北京で宣言するのは危ないことだと僕は思うんですけれども、そういう危険を冒してまで入ってくるし、熱心に富野さんの講演を聞きに来る学生がそんなにいる。アニメ研がそんなに存在してるって、僕、びっくりしました。

 これ、中国じゅうの大学が、まあそういう感じなんだそうです。今、漫研、アニメ研に人がわんさか入っている状態で、それを見て富野さんは「なにかが変わりつつある」というふうに考えたそうです。

 まず一つ言えるのは、中国では富野由悠季の『機動戦士ガンダム』にしろ『海のトリトン』にしろ『ザンボット3』にしろ『伝説巨神イデオン』にしろ、どの作品も一度もオンエアされたことがないんですね。どの作品もDVDもビデオも売られたことがないはずなんです。

 ところが、北京大学の講演会に来ている600人の……一般公開の講座だから大学外の人も来てるんですけども。その人達は全員ガンダムを知ってるし、ガンダムを見てるし、富野由悠季という人を目当てに来てるんですね。

 変な話なんです。もし、中国が本当に世間やマスコミで言われてたりするように言論統制がとれていたり、中国共産党によって情報統制がされているとしたら、富野由悠季の名前を知ってるわけがないし、もし名前を知っていたとしてもそれを映像で見ているはずがないんですね。

 だけど、来てるやつのほとんどは富野由悠季のガンダムを通しで見たやつばっかりなんですね。

 富野さんはそれを見て、「中国における言論統制というのは、実はもうほとんど成立してないんだな」って考えたそうです。

 僕らはまだ「中国がネットに関しては抑圧してる」と考えがちですが。そりゃ、抑圧はあるでしょうし国家の制限はあるのでしょうけれども、完全な抑圧なんてできるものではないっていうのがこの一例でわかります。

 おそらく、世界で一番厳しい監視下……北朝鮮とかもっと厳しいでしょうけど、北朝鮮はそれ以前にパソコンとかそういうものの絶対数が少ないですから。そういうものが、ある程度は豊富にある国で。国民に対して中国共産党はかなり制限してるはずなのに、もう隠せなくなってる。抑えられなくなっている。

 諸外国に対して「中国共産党が情報統制をやっているんだぞ!」という、ジェスチャーとまでは言わないですけれども、そういう虚勢を張ってるだけの状態にジワジワとなりつつあるんだなあ、と。

 そういうことを、僕は富野さんの講演を聞いて感じました。

・・・

 もう1つ、富野さんが感じられたのは熱意のすごさですね。

 で、この熱意のすごさというものについて、富野さんは必ずしもポジティブな意味だけでは使っていませんでした。

 「この熱意のすごさ、層の厚さというのを感じると、僕は何とも言えなくなる」って言ってたんですね。

 どんなことかというと、彼らの同人誌を見たそうなんです。

 同人誌は、今はDTPとかが使えますから、すごくキレイな出来なんですけども。

 それを見てわかるのは「彼らがアニメがどれくらい好きか?」「日本のアニメをどれくらい知っているか?」ということ。

 それは『ガンダム』かも『エヴァンゲリオン』かもわからないし、そのほかのいろんな日本のアニメの作品も載ってたそうなんですけども。「どんなに好きか?」、そして「何かをやろうとしている」のが伝わってきたと。

 つまり、「単に好きで同人誌作ってるんです」というのではないんです。

 今の日本のアニメファンとかマンガ研究会とかを見たら……僕は自分自身が大阪芸術大学で教授やってるから分かるんですけども。マンガを好きとかアニメを好きだとかいっていても、最近の日本の学生の人っていうのは同人誌活動をあまりやらないんですね。

 それは「ブログがあるから」「ネットがあるから」とよく言われるけど、それだけではないです。何かを表現しようとしたら絶対に形に残したくなるんですね。

 だから、同人誌とか、もしくはブログにしても「どんどんデータを増やしていって~」ってやりたくなるはずなんですけども。そんなブログを作っている人がほとんどいないし、同人誌活動もアニメファンの数が増えているわりには盛んになっていない。

 つまり富野さんから見たら「日本のアニメファンは熱的に徐々に下がってきている」と。

 「ファンがヌルくなってる」という言い方よくするんですけれど、そう言うよりも、本当に「熱意全体が持ちにくくなっている」。

 たぶん、日本のファンだけ見てたら、それはよくわからないんです。

 中国に行って、北京大学の学生を見た時に、あまりに膨大な熱量をバッと浴びて「ああこれだ!」と富野さんは思ったそうです。「二十年くらい前に俺がガンダムやってた時と同じだ!」と。

 『伝説巨神イデオン』が終わった時に「アニメの受け手送り手接触キャンペーン」っていうのをやったんですね。富野さん自身も参加した。受け手送り手って何かというと、「アニメを見る側と作る側が対等な立場になって出会おうよ!」という当時のアニメ界ではかなり革新的なキャンペーンをやったんですよ。

 当時のアニメ界っていうのは、アニメを作る人とアニメを見る人の間にすごい距離があって。で、アニメのファンの人が業界に入るようなことはほとんど考えられない状態だったんです。

 その時代からアニメを作ってこられた富野さんが今、北京に行って「20年ぐらい前のあの当時の熱いアニメファンと同じようなやつらがいる! でも違う! 何が違うのかというと、こいつらは最精鋭のエリートで、おまけにこの大学だけで600人いて、そしておそらくこの国には何10万人といるんだ!」ということに衝撃を受けたそうです。

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 富野さんは「これはどうなるんだろう?」と話をしてました。はっきり言って「5年から10年後、日本のアニメ産業は負けるな」というふうに感じたんだと思います。

 富野さんも流石にそこでは言葉を選んで、「アニメ産業が負ける」っていう言い方はしていません。「このままではエラいことになる! このまま日本はずっとアニメの先進国で、彼らが作るアニメはチャチで、そして彼らは著作権とかを気にしないでパクリばっかりやっている、そういうふうに笑っていられる事態ではない!」という、すごく回りくどい言い方をされていました。

 一方で、講演の他の場所では「そのチャチに見えるアニメーションというのを、テレビでオンエアするためには、どれだけの手間が掛かるのかを僕は知っている。俺が昔作った『鉄腕アトム』を見てみろ! あれはテレビアニメじゃない。テレビマンガだ!」っておっしゃっていた。

 テレビマンガっていうのは何かっていうと。アニメは動くんだけど、マンガは止まった絵なんです。つまり、テレビでマンガを見せているだけ。「これが動いていないということは、作っていた当時から自分たちでもわかっていたから、テレビマンガという表現を使っている」って話をされていたんだけども。

 「その当時、東映動画の宮崎駿さんや高畑勲さんたちが『鉄腕アトム』をどれだけバカにしてたか」というのが、手塚治虫の伝記小説にはいっぱい書かれているんですよね。

 「動いてない!」「アニメじゃない!」「やっぱりマンガ家にアニメは作れっこないんだ!」「毎週一本テレビでアニメなんか作るのは不可能だ!」「あれはアニメじゃない!」「チャチだ!」っていうふうに笑ったって書いてあるんですね。

 で、今の中国国内で流れているものというのは、北京大学の大学生すらも「チャチだ!」って笑うようなものなんですけども。富野さんにしてみれば、それを毎週オン・エアーできる状態というのが、そろそろ、どういうことになるのかがわかるんです。

 今、中国では、平日、土日以外のウィークデイは夜も朝もアニメやってるそうです。これをもう何年も続けているそうです。この基礎力がずっと続いているっていうことは、日本のテレビ業界でいうと60年代末ぐらいの状態に徐々に徐々に近づいていく。「もうすぐブレイク・スルーが起こるであろう」っていうことは富野さんは自分自身の経験ではっきりわかっている。

 なので、ここから5年後、10年後、日本のアニメ界がおそらく負けるであろうということが、富野さんにはだんだん見えてきているんですね。

・・・

 もちろん、お話作りとか、内容とかキャラクターのセンスに関しては、日本にまだ分があるかもしれない、日本は勝っているかもしれない。しかし、それはどういう勝ち方か?

 僕、自分自身が思いついた例があったので、楽屋で富野さんにぶつけてみました。

 1960年代ぐらいにソニーが小型のラジオを作ってアメリカに輸出したんですね。

 その時、アメリカ人は感心しながら笑いました。「ああ、日本人は国土が小さいし国民も背が低くてちっちゃいから、ちっちゃい物を作るのが上手いよね。俺たち、こんなちっちゃい物は作れないよ」って。

 その当時のアメリカは大型のテレビ、大型のステレオ、大型の冷蔵庫と、ひたすら大きい物を作り、車もひたすら大きく作っていた。なので、日本から輸出されるコンパクトカーとか、もしくは小さいテレビとか小さいラジオを見て、ずっとアメリカ人は笑っていたんですね。

 でも、そんな小さい物を作る技術というのは、彼らにはなかったんです。「そんなものは別に必要ないよ。俺たちだっていざとなれば作れるだろ? そんなものは日本に任せちゃえばいいんだよ」と言いながら、徐々に徐々にアメリカの没落が始まりました。

 アメリカの家電製品の没落というのは、1970年代から80年代ぐらいにかけて、ついにアメリカの国内でテレビを作れなくなったという事件が起きたんです。

 もちろん、作れるんですけども、アメリカで作ったらとんでもなく高くついちゃうし、ブラウン管式のテレビを作る技術者がアメリカにはもういなくなってしまった。

 だからもう「テレビみたいなものは日本人に任せればいいんだ!」「アメリカは最先端のパソコンとか科学の先端やればいいんだ!」って。アメリカ人にしてみれば負け惜しみかもわかんない……まあ、今見りゃ負け惜しみなんですけど。その当時は「いや、住み分けだよ」みたいなこと言って。徐々に徐々に撤退していったんですね。

 その結果、アメリカの家電業界は1980年後半ぐらいから完全に日本に乗っ取られたような形になりました。現在ではそれがまた逆転してですね、日本が韓国や中国に乗っ取られたような状態になっているんですけども。

 おそらく、今、これと同じような状況が中国と日本のアニメ界で起こりつつあるんです。

 僕らからしてみれば中国のマンガやアニメというのはもちろん……1960年代当時のアメリカの家電業界の人からみたら、日本製品なんてロクなもんじゃないですよ。壊れやすいし安っぽいし音も割れるかもしれない。安いだけが取り柄で一杯作っている、てなもんですね。

 でも、そこからずーっと作り続けて、ずっと研究していったら、10年から15年くらいでアメリカ製品を全部ひっくり返すぐらいの力を持っていた。

 そして「この、日本が家電製品でやったようなことを、中国はコンテンツ・ビジネスでやろうとしているのではないか?」っていうのが、富野さんの読みです。

 だからこそ、北京大学の、最高学府の学生達が数百人アニメ研に入るような事態になっている。

 そして、彼らが5年後10年後……なんせ中国の東京大学、中国のハーバードですから、現場に入るんじゃないんです。彼らはプロデューサーになり、映画会社の重役になり、そして、それらを輸出するようなビジネスマンになって、中国のコンテンツ産業に参加してくるわけですね。

 で、「ははあ、なるほど! こういうふうに考えればいいんですか?」と富野さんに聞いたら、「そうです」って富野さんはおっしゃいました。

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 今の中国のアニメっていうのは、たぶん、中国の宇宙開発と同じようなもんなんですね。

 国策として、一気に先進国に追いついて追い越そうと考えている。だから、「世界最速のコンピューターを中国が作る!」「世界最高の宇宙開発も中国がする!」と。そして、「そのうちコンテンツ・ビジネス、マンガやアニメでも世界最高のものを中国がやる!」というような意志がある。

 これは逆説的に聞こえるかもわからないですけど。主語として「中国が」って言ったんですけども、そうでないほうが恐ろしいと思うんです。「彼ら国民一人一人がやりたくてやっている」というのが、この恐ろしいところなんですね。

 つまり、さっき言ったように北京大学のような場所自体が、全共闘時代の東京大学みたいなもんですから、学生運動の本場でもあるんですね。反体制で頭のいいやつが集まるところでもあるんです。だからこそYouTubeとか見まくって『ガンダム』を知ってるやつばっかりが集まるわけですね。

 そんな状況の中で富野さんは講演されてきた。

 これが「国策としてアニメを作ろうとするだけ」ならそんなに恐ろしくないんですよ。「国家をあげてアニメを作ろう!」なんて言われたら「そんなもんができるかよ!」って思うぐらいの反骨心は富野さんもまだお持ちなんですけど。

 そうでなくて、「ああ、こいつら一人一人が本当にアニメが好きなんだ。おそらく宇宙ビジネスも好きだろうし、おそらく世界最速のコンピューターも好きなやつらなんだ。そして、そういうやつが何100万人、何1000万人といて、その母集団の中で最優秀のやつらを集めてるのと同じ事なんだ」って。

 そういう意味で「自分たちが作っているアニメビジネス自体の足下が本当にグラッとするのを感じた」っておっしゃってました。

 日本という国が第二次大戦後、急激に工業化しましたよね。それまで農業やってたり、もしくは家内制手工業とか、あとは小さい町工場にエンジンが1台か2台あってそこで動力を回してたところから、日本中に一斉に小さい工場がいっぱいできて、戦後の日本の工業化、復興というのがあったんですけども。

 かつての日本が工業化したのと同じように、中国はものすごい勢いでコンテンツ化しようとしているというふうに、僕には見えました。

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9年前に予言された日本アニメの未来、富野由悠季2010年11月講演を語る

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・ガンダム完全講義34:第13話「再会、母よ…」解説Part1

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