第23期スタンダード神防衛戦を終えて

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■はじめに

こんにちは。スタン神の酒井です。
MOではotakkunという名でプレイしています。

先日のスタン神決定戦で勝利し、3期目の【スタンダード神】に在位することができました。

神側だからこそできたデッキ選択や採用カードに関しての考え方を記載します。防衛後かなり時間が経ってしまいましたし、直近で禁止改定もありましたので、読み物としてふわっと読んで貰えたら幸いです。


■使用デッキ(エスパーレジェンズ)について

デッキリスト

■現状のスタンダードの認識

普段スタンダードにはあまり触れていない。そのため直前のStandard ChallengeとPTの結果を確認して現在のメタゲームを把握した。

グリクシス⇒ラクドスへ
3ターン目の《寓話》が環境を定義しており、序盤のマナトラブルを避けるため青を抜いたラクドスミッドレンジ多く存在していた。ネイサン選手をはじめとするPT参加者の多くが使用しており、流行っているようだった。

ラクドスに立ちはだかる5色ランプ
一般にランプデッキはミッドレンジに強いため、ラクドスを強く意識されたメタゲームになっているのだろうと考えた。
※実際には現在は5色ランプは既に減少しており、そこまで見る必要は無かった。

エスパーレジェンズ、白単の減少
エスパーレジェンズはラクドスに狩られ、白単はランプに対して相性が悪いことから、結果として減っていたのだろうと予想した。実際に神挑戦者決定戦の上位を見てもそのようなことが伺える。

青白兵士の躍進
Frank Karsten氏のツイートが流れてきて、高い勝率を出していた。
案外勝つのか…?しかし今更別のデッキを握るリソースは避けなかったため深堀りすることは避けた。

・日本人はミッドレンジを好む
日本人はミッドレンジデッキを好む傾向にある。
例えばパイオニアでは、Magic Onlineや海外PTQの結果よりも国内大会の方がラクドスの使用率が高い。今回のスタン神でも同様に、ラクドスないしグリクシスミッドレンジは非常に使われやすいと考えた。スタン神に出るようなプレイヤーは競技フォーマット(=現在ではパイオニア)をプレイしている可能性が高く、カードの大部分がパイオニアのラクドスミッドレンジと共通していることも理由の一つだった。


■神のデッキ選択

結局エスパーレジェンズを選択した。
選択した動機は使い慣れていることでデッキの最大値を狙える、これに尽きる。80点のプレイのラクドスよりも95点のプレイのエスパーを使った方が勝ちやすいだろうと考えた。
自分が挑戦者決定戦に出るのであれば恐らくラクドスを使っていただろうが、1度勝てば良い神決定戦は普段のトーナメントとはシステムが全く違う。多少立ち位置が悪かろうがどうにでもなると思っていた。

神側のメリットを挙げてみる。

・デッキ公開制
 ⇒リストを散らすことで対戦相手へ負荷をかけやすい。逆に他のプレイヤーは挑戦者決定戦を勝ち上がる必要があるため、そこまで意識した構築にし辛い。

・挑戦者決定戦で勝ち上がってきたデッキと戦う
 ⇒メタゲーム下位のデッキは勝ちきれず淘汰されやすいため、メタ上位だけを意識したデッキ構成にすれば良い。今回は仮想敵をラクドス・5色ランプ・青白兵士に絞っていた。

・メインマッチ2本を先に行う
 ⇒サイド後に大幅に弱くなるがメインが強いデッキ(コンボやアグロなど)が有利となる。エスパーレジェンズもアグロデッキの部類であるため、どちらかというと恩恵を受けることができる。

エスパーレジェンズは長いトーナメントを勝ち抜くには向いていなかったが、一度勝てば良く、しかも多少こちらが有利な状況でプレイできる。もしラクドスを持ってきていたらミラーマッチをすることになっていたので、スタンダードをやりこめていない私にとって結果的に良い選択となった。

ラクドスと5色ランプはMOやPTの結果から、また日本人の競技プレイヤーはラクドスのような腕の出るミッドレンジを好む傾向にあることから、60%くらいの確率でラクドスが勝ち上がってくると想定していた。実際に想定は当たったが、よもや最強クラスの最強のラクドスが残ってしまうとは…


■寓話中心、先手有利を攻略する

《寓話》禁止前のスタンダードは《寓話》とどう向き合っていくかが求められている。今回も《寓話》を使わない側に回るため、対抗策を考えた。《寓話》によるアドバンテージを得られる前に有利な盤面を作ることだ。

今回の神決定戦の使用デッキには4枚の《スクレルヴ》を採用している。元々このカードはどちらかというと嫌いなカードだった。序盤に出しても殴る出番は少なく、手札が増え辛いエスパーでは無駄に1枚分のカードを場に出してしまうことになりかねない。しかしレジェンズの立ち位置は以前よりも微妙なものとなっていたため、《スクレルヴ》《サリア》《ラフィーン》と動くことよる、所謂ブン回りの勝ち方を残したかった。
先手で必ず勝ちたいという気持ちが前回の防衛戦よりも強く出ていた。

前回も書いたが、後手で対抗できるのが《サリア》《呪文貫き》であり、クロックを残すという意味では《サリア》に託すしか無かった。相手の除去がずれ、《寓話》の設置が3ターン目ではなくなった時に勝機は訪れる。そのためにも《サリア》から守ってくれる《スクレルヴ》はやはり必要であった。


■強く意識して採用した《呪文貫き》

このイラストすき

今回のリストはメインから《呪文貫き》を2枚採用している。《寓話》に対して当たる点もそうだが、現在のラクドスではミラーを想定するためにゴールを《絶望招来》《チャンドラ》《多元宇宙の突破》と重い非生物呪文に寄せていることから、序盤詰めても1枚で捲られてしまうようなカードに対してけん制の意味で複数枚取っている。同様に4Cランプに対しても負け筋となる《太陽降下》に対して上手く刺さってくれるカードだ。
サイドからは《軽蔑な一撃》をちらつかせることで《呪文貫き》をケアした上でキャストされる呪文を打ち消すことを想定としていた。


■挑戦者が決まってから

世界王者が使うラクドスミッドレンジと対戦することが決まり、より一層対戦が楽しみになった。大きなプライズを賭けて強い人と対戦をする時が私にとってマジックで最も好きな瞬間だ。配信でも話していたが、10本先取でも100本先取でも構わないくらいやる気と期待感に溢れていた。

当日の昼。私が所属しているさとレイサロンのメンバーの一人にスパー相手をお願いして、勝ちパターン/負けパターン、対戦相手の想定されるサイドイン/アウトを3マッチこなして把握した。自分のサイドプランは本番のゲーム感やプレイスタイルに応じて変える為、ふわっと考えておくにとどめた。

対戦相手の使用するラクドスミッドレンジはミラーマッチに重きを置いており、《強迫》と《銀行破り》が4枚ずつ採用されていた。これはエスパーレジェンズ側からしたら好都合だった。《強迫》は殆どが当たらないし、序盤の《銀行破り》は大したの脅威とならない。当日はメイン2本取った後、サイド後の先手時に勝って防衛することを想定した。

■試合中の話~プレイミスと反省~

4ゲーム目、1T青白ファスト→2T白黒スローと置いたことでピアスを読んで…というシーンがあったと思うが、他にも色々と考えていた。考えていたが、結局プレイミスをしてしまっていたので反省が残った。

初手は下記の7枚(たぶん)
青白ファスト
白黒スロー
公有地
デニック
ラフィーン
呪文貫き
軽蔑的な一撃


この手札が来た時に考えていたことはこんな感じだった。
・《寓話》にピアスを当てたいが、どうプレイしても絶対にバレる
⇒寓話には当てさせてくれないと思うが、腐らせたくはないからテンポを取るため早めに使いたい
・除去がハンドになく、序盤の展開が出来ない
⇒展開すると寓話→4or5マナのアクションが打たれるため相手のシェオル定着は負けを意味する
⇒そのためには、《寓話》の定着を遅らせること(あわよくば消したい)
⇒クロックを置きながらシェオルに対抗できるようにする(この初手だとストロークを合わせるしかない)

しかし考えすぎて結局正しくないプレイになってしまっていた。
毎ターンアンタップインすることができるマナ基盤であったにも関わらず
、2T目にあえてスローをタップインしている。「どのみち2ターン目までは呪文貫きを構えるターンであるから、少しでも相手に手を読まれないように事故っているように見せよう」という気持ちの表れだった。
1-2ターン目にピアスを構え、3ターン目にデニック+ピアスを構えるというプレイを取った私は、エンド前に相手の布告にピアスを使わされ、フルタップで相手の4ターン目を迎えてしまった。寓話を気にするあまり、シェオルの存在が抜けてしまっていた。恐らく正しいプレイは3ターン目もパスで《軽蔑的な一撃》《呪文貫き》の両面構えだったように思う。その後、常に2マナを構えながら徐々に生物を置いていくプレイにしていた方が裏目が少なく、初手のカードを最も生かせるプレイだったと考えている。

結論4ターン目にはシェオルは出なかったものの、後手でクロックの展開が遅く、打ち消しをすべて吐いてしまったこともあってそのゲームは敗北した。恐らく正しいプレイをしていてもあのゲームは敗北していた可能性が高いと考えているが、それでも相手をどう誘導するか、逆に誘導された上で薄い勝ち筋をどこに見つけ出すかという判断をもっと早く出来るようになりたいと思う。

■サイドボードガイド

ふんわり考えて、あとは雰囲気で決めていた。
解説でも言われていたが、サイドカードを入れすぎるとクリーチャーが減ってしまい、動きがもっさりする。そうすると対戦相手の《寓話》をはじめとするアドバンテージカードによって差が生まれてしまうので、サイドカードの入れ過ぎには注意するようにしていた。
《喉首狙い》《軽蔑的な一撃》《救済の波濤》は概ね入れるカード
《復活したアーテイ》《放浪皇》は相手のプレイを見て入れるカード
《否認》は概ね入れないであろうカード

今回で言うとこの辺り。今回は世界王者が対戦相手なので、リストに書かれているカードは全てケアしてくると考えていた。そこでケアされると強く使えないカード(具体的には大きく構える必要がある《復活したアーテイ》《放浪皇》)をサイドインすることはやめていた。(《放浪皇》を5ゲーム目のみ1枚入れたのを記憶している)

頻繁にサイドアウトしていたのは《ローナ》、《ロラン》《切り崩し》《ルーデヴィック》辺りで、《サリア》は一度も抜いていない。非生物呪文が増えて扱い辛いのはその通りだが、このデッキはやはり押し付けることが強いく、可能であれば構えるよりも展開を優先したい。


■スタンは先手ゲー?

今のスタンダードは先手の押し付けが強い。これは間違いない。
だがそれだけで勝敗が決まるほどにマジックは単純じゃない。私はこのゲームでの勝率を上げることは無数に訪れる分岐をより正確に当てられるかが重要だと考えている。
これを分かりやすく伝えるために、少しイメージをして欲しい。
※期待値の話を出すので少し長くなります。

あなたは先手で1ターン目は土地を置いてゴー。
2ターン目、ドローした後のあなたの手札は
・土地2枚
・サリア
・デニック
・ラフィーン
・切り崩し
・呪文貫き

だったとする。その後のターンで引くカードは考えず、場にある土地と手にある土地で好きな色が出るとする。

この時、先手2ターン目には《デニック》か《サリア》をプレイする分岐が生まれる。(あるいは《切り崩し》や《呪文貫き》を構える選択肢も存在するが通常それはしないだろう)

どちらが正解だろうか。恐らく殆どの局面では《サリア》を出すべきだ。先にサリアを出しておく方が相手の行動に負荷をかけ、動きを止めている隙に次の生物をドロップしていくことが可能となる。

返しのターン、相手は《税血》をプレイしてきた。その返しの3ターン目はどう行動しよう?
①《ラフィーン》を出して《サリア》で殴る
②《デニック》を出して《呪文貫き》を構える
③《サリア》を守るために《税血》を《切り崩し》する
選択肢はこのくらいだろうか。

私であれば①の行動を選択するだろう。しかし、相手の《寓話》がちらつくので②の行動でも良いかもしれない。
※相手は返しに《税血》で《サリア》を落とすから《呪文貫き》が使えるようになる。
もし2マナを払って《税血》を《切り崩し》する③の行動をしていたなら、あなたの場には依然としてサリアのみが場に置かれ続けるだけであり、十分なクロックを用意できない。良いプレイとは言えないだろう。

今回の選択肢のどれが正しいかは重要ではなく、こういった無数の選択肢の中から最も勝利しやすくなるような択を選択し続けることが現代スタンにおいて重要であるということを強く言いたい。下記のような図が広がっていくイメージだ。なお、図に記載している確率や期待値は全て適当である。

イメージ。これが無数に展開されていく。

図の確率や期待値は適当なので、これから出てくる数式には実際のゲームとは関係ないものと理解した上で読んで欲しい。
仮にこれが正しいものだったとする。2ターン目に出すべきだったのが《サリア》なのか《デニック》なのかを改めて考えよう。その後起こりうる事象の勝利期待値を足し合わせていけばよい。

2ターン目の行動が《サリア》の場合はその後の行動は5通りだ。
サリア⇒税血⇒ラフィーン:0.4×0.8×0.8 = 0.256
サリア⇒税血⇒デニック:0.4×0.1×0.7 = 0.028
サリア⇒税血⇒切り崩し:0.4×0.1×0.5 = 0.02
サリア⇒切り崩し⇒ラフィーン:0.6×0.6×0.7 = 0.252
サリア⇒切り崩し⇒デニック:0.6×0.4×0.7 = 0.168
これらを足し合わせて0.724、すなわち72.4%の勝利期待値となる。

2ターン目の行動が《デニック》の場合はその後の行動は4通りだ。
デニック⇒税血⇒ラフィーン:0.4×0.9×0.7 =0.252
デニック⇒税血⇒サリア:0.4×0.1×0.3 =0.012
デニック⇒切り崩し⇒サリア:0.6×0.8×0.6 =0.288
デニック⇒切り崩し⇒ラフィーン:0.6×02×0.7 =0.084
これらを足し合わせて0.636、すなわち63.6%の勝利期待値となる。

…だから2ターン目の行動は勝利期待値の高い《サリア》のプレイが正しいと言える。ただし実践ではこの分岐が無数に続いているから勝利期待値は見えないし、行動されうる確率も不明である。そのため結局は数字ベースでは無く感覚ベースとなってしまうが、「相手がこのプレイをして来たらこうしよう」「相手にこういうプレイをさせれば自分にとって有利に働きそうだ」といった考え方が大切であり、予め勝利への道すじを予測しておくことが正しい選択肢を選び続けることに繋がる

カードパワーが高まった現在だからこそ、1つのミスが命取りとなる。あなたが有利デッキ相手なのに運悪く負けただけと感じていたとしても、気付かぬうちに分岐を誤っていて、70%で勝利するはずが60%に落ちており、40%を引いて敗北していたのかもしれない。

相手が有利なデッキの時は多少ミスをしても勝てる場合があるが、不利なデッキに勝つためには、より多く正しい選択をして相手が選択を間違えることを待つ必要がある。それが狙えないほど強力な相手の場合は、ブラフやサイドボードなどで分岐をより多く用意してミスを誘導させ、自分の勝利期待値を上げるべきだ。

今の「先手ゲー」と呼ばれる所以は、この勝利期待値がどの分岐を選んでも高くなる=勝ちやすい傾向にあるからだと考えるが、後手だからといって勝利期待値が0%になることは無い。自分自身の取った選択肢が正しいものであるのか、もう一度振り返ってみることが大切なのではないだろうか。そして後手の自分が最適なプレイをできた時に、先手の相手のミスを見つけ出し、勝利期待値の高い分岐に誘導していくことにマジックの楽しさが詰まっていると私は感じている。


■試合を終えて

配信ページ
お互いにいくつも先の手を予測しながらプレイし合えた良いゲームが多かった。先手で押し付けて勝っていたと観ればそれまでだが、そうではない部分も配信から感じられたかと思う。こういうマジックをまたやりたいので、今後も色々なフォーマットでチャンスを掴んでいきたい。

応援してくれた方、ありがとうございました。これからも結果を残せるように自分らしいマジックをしていきたいと思います。


■最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。
思考の部分が中心となっているのでレジェンズを握ろうという方の参考になっていたかは分りませんが、何かほんの少しでも響いてくれる部分があったなら幸いです。

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