深淵から君らを言祝ごう

この前すっごく久しぶりに大学の先輩とちょこっと話した。
当時の面々はみんな忙しくて、ほとんど会っていないという。
勿論その人も忙しい側。
皆さんそれぞれ立派になって、それぞれの今をご活躍中。

僕はもともとバリバリ働きたいタイプではないけれど、
彼らともう二度と道が交わらないのだと思うとほんのり寂しくなりもする。

今になって思う。
あの頃の彼らは既に、各々行くべき場所を見定めて、着実に歩みを進めていた。

たまに見かける「毎日の天声人語を書き写しています」みたいな人、あれだってそうだ。
以前は地図や仏像の塗り絵をする人と同じ括りで認知してたけど、
あれもそういう一歩だったんだ。

僕も大学時代にアレをやっていれば……と思う。
もっとマシな文体を身に着けていたろうし、
もっと人の興味をそそる何かを書けていたかもしれない。

昔からやりたいこととか特になくて、
将来の夢を聞かれても頭が真っ白で、
何のイメージも持っていなかったから、
仕方ねーなと思ってトータルではいくらか軽くなってくれる。

ただ漠然と、イヤな奴から加害されない場所に行きたかった。
人生の目標なんてものが僕にあるとするならそれだった。ザ・やさしい世界。

そんな場所はこの世にないと分かってからは、
行きたい場所はなくなって、目標は完全に無。ゼロ。null。

人間関係から便益を得られないのと、
イヤな奴の食い物にされるリスクがないのとだったら、
圧倒的に後者がよい。
優しい世界がないのなら、人間関係そのものから退出しようとなる。

人と関わりたくなかったんだから、
会わないのも別にいいじゃんとも思う。

同じく過去志向の友達とは関係が続いている場合もあるけど、
そんな中からも結婚する奴が出たのは寝耳に水だった。
驚きと祝福と、ちょっとばかりの寂しさがあった。みんな進んでいく。
僕はここにいる。

今日は『ダイの大冒険』の放送日で、待ちに待った「閃光のように!」の回。
いったい何年待ったのか。
悔し涙が顔を真っ赤に腫らした日々も、全てに絶望した見渡す限り灰色の日々も、
「閃光のように!」のシーンを胸にやってきた。今もやっている。なんとか今日も生きている。

もう会うこともない皆へ、この場所から、皆の今を、皆の今を、ささやかに、おめでとう。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。