"最近の漫画"

もういくらか前のことだと思うのだけれど、サンデーの『マギ』が終わった。終わっても僕にとっては最近の漫画だ。
いつの間にか同作者の次回作まで始まっているらしい。それでも最近の漫画だ。
明確なラスボスがいないままラスボス戦が終わるのは盛り上がらなかったけれど、最後にカシムについて言及しつつ総括する流れは良かった。
始まりと終わりで筋が通っている構成は良くできた作品の証だと思う。

『東京喰種:re』も終わった。予想どおりの路線ではあったものの、
予想していたより随分と優しい感じで終わってしまった。
元々バトルシーンはよくわからないことが多かったので、ラスボス戦に特段の期待を寄せてはいなかった。
でもなんだ二福、今まで散々ウザくてやり方のウマいヤツとしてヘイトを稼いできた割には、カタルシス弱すぎないか。
何故最後急激に可愛そうな奴になってあっけなく終わっていたんだ。悪役を全うしろよと思った。

そこまで含めてウザいやつだというベクター的なキャラクター造形だとするならば、
二福は一転してとてもよいキャラクターになるのだけれど、作者の真意がどこにあるのかわからない。
だからこの件はまあいいや。

『七つの大罪』も佳境に入っている。
未だにラスボスが誰なのかハッキリしないんだけど、最新巻での展開では魔神王でも最高神でもない感じ。
(本誌の展開はわかってません)
あったとしても『ダイの大冒険』の鬼眼王バーン、『ARMS』のバンダースナッチ、『FF10』のエボン=ジュみたいな実質イベント戦みたいな演出とストーリーの着地点としての消化試合をするだけになりそう。
ゼルドリスでもマエルでも可愛そうな奴だからラスボスにしちゃうとそんなに盛り上がらずに終わっちゃう気がする。後どれくらい続くのか、そしてどのように終わるのか、読めないけれどほぼ確実に優しい系END。

『マギ』といい『東京喰種』といい優しいラスボス戦が流行ってんのかな。
『七つの大罪』はここまで正統派の少年漫画できたんだしどうか最後も盛り上がるバトルをやってくれ。

そんな中『進撃の巨人』は殺伐とした方に振り切っているね。
謎は種明かししちゃったし、初期にあった面白さは大分なくなってしまったように思う。
ライナー側の話もやってこれまた善悪がわからない展開になっているけど、
サシャが殺されちゃったし、もうエレンは修羅道を突っ走っていくしかないのかな。
エレンに責任の一端があるみたいな描かれ方だから、認めないためにもエレンは余計殺伐としていくだろう。
こればっかりは世界が優しさに包まれて終わり、なんてできないだろうけれど、個人的にはあんまり後味悪くなるのも好きじゃないんだよなあ。

『ワンパンマン』は半分ギャグ漫画だと思っていたけれど、ここへきてガロウがかなり良い。
唯一ガロウと友好関係を築きそうだったチン子供も、デスガトリングらのヒーローをボッコボコになぎ倒していくガロウの姿にビビりまくっていて、最早心配などしていないにも関わらず、怪人が勝つところを見せてやると宣言。
ヒーロー狩りの根拠が弱すぎやしないかと思っていたんだけれど、違うな。あれはテコの原理だ。

読者のリソースを描写に活用する手法だ。
あの宣言で、ガロウが本当に戦っているのは最早ヒーローではないことがわかる。
「たまには悪役が勝ってもいい」「怪人だって頑張っている」という意見、主張、想い。そのために戦っている。
ヒーローではなく、彼の思いを否定したクラスメイトや多数派の空気や同調圧力と戦っている。

これだけではただの悪役で、超強い悪役を生み出すには半分ギャグとはいえ回想での根拠が弱すぎる。
でももし、読者の中にある「本質的にそれと似通った体験」を活用してキャラメイクをしているとするならば、一点ガロウは名悪役となる。それどころか彼はダークヒーローとしての立ち位置を得る。
誰にも応援されない中、まるで誰かを勇気づけ励ますヒーローであるかのように叫んだ「怪人が勝つところを見せる」という宣言は、ガロウのヒーローとしての口上であると思う。あの描かれ方は完全にヒーローのものだった。

同じ善悪の境界を曖昧にするコンセプトなのに評価が180度違っていうことに自分でも驚いたんだけれど、
アンチヒーローとしてのキャラクターが『ヒロアカ』の死柄木弔と差別化できているのがすごいね。
90度違うというか、コンセプトはかなり近いはずなのに両者被らずに自分の道を行っている。
ちなみに『ヒロアカ』はバトル編が一段落したらまとめて読むようにしている。
『青エク』の新刊はまだ読んでいないためなんとも言えない。
ジャンプだと『約束のネバーランド』も追っているけど、これについては気が向いたら別にして書こうかな。

『ラディアン』はアニメになったのがウソのように家の近所の本屋にも職場の近所の本屋にも新刊が売っていなかったので、昨日アマゾンで注文した。プライムだけどまだ来ていないよ。

と、まあこれらが僕の思う「最近の漫画」である。最近の漫画と言いつつ終わってしまったものもある。
そういやtwitterをやっていなければ通常の僕の守備範囲ではないけれど『累』も終わったじゃないか。
最近のものと思っていた漫画が次々終わっていく。
相変わらず『ワンピース』と『ハンターハンター』は終わる気配がないけれど、これらはこれらでキリのいいところで一気に読めばいいかという気がしているし、『血界戦線』と『ドリフターズ』については完結するまで読みたくない。

この辺りまでにタイトルを挙げた漫画を一応追ってはいるんだけれど、どうにも時間感覚がバグっているよなーって思う。ここにはちょっとした危機感と、それより結構大きめの焦燥感がある。時代のペースについていけていない。
『めしにしましょう』だって、もう始まって2年経っているらしい。2年だって? はぁ!?

もっとも、今となっては流行った漫画をすべて追おうとするだけでも一苦労だろう。
漫画が多様化して増えまくったからだ。僕は基本的にバトル物を中心に読んでいるんだけれども、
増えまくった雑誌がそれぞれとりあえずバトル物も載せるもんだからそれだけに絞ってもパンクしてしまう。

ゴールが遠すぎたら球を入れようという気にすらならないわけで、そうやって遅れていくのだ。
きっとそうだ。そうに違いない。
断じて俺が加齢によって体感時間が加速して戻ることのできない暴走域に入ったなんてことはないはずだ。

新しいものを入れていかないと脳は衰えていく。
黒木瞳や大地真央や平子理沙の美容の秘訣はわからないけれど、荒木飛呂彦が若いのはおそらく好奇心のせいだ。好奇心を持って新しい刺激を入れ続ければあまり老けない。そういう話は体感として割と正しいように思える。

よって最近の漫画についていけないのも、新しい漫画の刺激を入れていないからに違いない。
とにかく新しい漫画で、面白いバトル物を読まねばならない。
なるべく人間の精神が、それもどちらかというと恵まれない側の人間の精神が現れているものだと望ましい。
そうでなくても、バトルシーンの迫力や能力の斬新な使い方なんかで目を引くものであれば気に入る確率はそれなりに高い。
単なる中二病は好ましくない。少なくとも「そういうもの」として一歩引いて消費する以上のことはしないだろう。

もしかしたら今もなにか新しい名作が生まれているのかもしれないし、
僕の知らないところでオタク学科バトル漫画専攻の必修科目は追加されているのかもしれない。
何かあったら教えてください。とにかく新しいものに触れ、脳を刺激し、老化を食い止めねばならぬのです。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。