僕のtwitterは凍結されたけど『呪術廻戦』が面白い

 アニメが始まった『呪術廻戦』が久々にお気に入り。
 週刊少年ジャンプの連載作で、成り行きで身体に呪いの王を宿してしまった少年が、呪術師の学校に入学して、呪霊(≒妖怪)と戦っていくストーリーだ。
 導入部分こそ『BLEACH』に似るが、全体的に『幽遊白書』と『NARUTO』の影響が色濃い。

 例えば、作品を形作る厚みや体温や鼓動と言ったリアリティ
 『幽白』のセリフは、名言としての体は為さないような何気ない一言が、リアルな重みを持って読者の心に残る。『呪術廻戦』が描く世界観も、同様な何気なさの積み重ねの上に座し、『幽白』のそれに似た重心の鼓動が確かに感じられる。
 少年漫画好きとしては作者に「ありがとう」を言いたい。

 『呪術廻戦』の一般的な人気の秘訣は、念入りに練られた世界観、緊張感ある展開、そして時代に合った一足飛びのテンポ、といったところだろうか。
 そこへ最後に僕が付け加えたいのが「世界観とリンクした敵キャラクターの魅力」だ。

 この漫画、敵キャラクターの魅力度が、おそらく現行のジャンプ内で筆頭格なんですよ。
 僕が注目してる悪役は他に死柄木弔やトガヒミコといった『ヒロアカ』勢と、WEB連載の『ワンパンマン』のガロウがいるのだけど、本作の夏油傑・漏瑚・真人の3名はその層に食い込む。

・夏油傑
 作中最強五条悟の学生時代の相棒。離反後は呪力を持たぬ人類の殲滅を掲げて暗躍する。邪悪思想を覆う飄々とした笑みが不気味な人物で、短期連載時から度々仙水と言われてきたが、過去編にて、相棒よりずっと出来た人格と、心が擦り切れるまでの過程が丁寧に描かれて読者の同情を呼んだ。
 そしてそのタイミングで明かされたある事実に、僕はまんまと一本取られたと、作者のその構成力に脱帽してしまったことをここに告白いたします。
 本編では裏方が多いけどアニメ組も要チェックだ!

・漏瑚
 火山頭の特級呪霊(幽白におけるS級妖怪)で、本作のダークさの一端を担う作品のマスコット。
 人間の負の感情には偽りがなく、そこから生まれた呪霊こそが人間にとって代わるべきという思想を持ち、それに殉じようとするイカれた矜持が行動原理のすべて。
 現実の思想犯を参考にしたと思しき描写と、恐ろしさの中にどこかコミカルな一面を持たせることで、「人間と相容れぬ呪いという異形」の存在に妙なリアリティが受肉している。
 「作戦の健闘を祈る」と言うところを、自らの思想になぞらえて「千年後の荒野でまた会おう」と言ってしまう殉教者気質がまさに本物という感じがする。久々に震えたセリフで、このキャラは最高。

・真人
 主人公が打倒を掲げる当面の敵。『ジョジョ』の3部で承太郎が言ったような、「邪悪な奴とはどんな奴か」を徹底して煮詰めたのだろう最高に最低なキャラクター。
 純粋に害悪を楽しみ、しぶとく、強く、こんなにも倒される姿が待ち遠しい悪役は『ダンガンロンパ』の江ノ島盾子と『遊戯王ZEXAL』のベクター、あとは変化球だが『オルフェンズ』のイオク以来に思える。
 呪霊なのに人の姿をとり、そいつが一番邪悪っていうのがさ、徹底してるんだよね。世界観の擬人化。

 本作の魅力はなんといってもこの3名の悪役の悪行なのだ。
 味方サイドは贔屓キャラとネタキャラを除いて地味なのだが、敵サイドは徹底してしぶとく嫌らしく描かれ、どこまでも邪悪に容赦なく暴れてくれるから面白い。次はどのように害悪を振りまくのか、活躍から目が離せない。
 こいつらが居ること、こいつらが生まれる世界があること、こいつらに壊される営みがあること。
 序盤に主人公が死ぬロケットスタートの効果が切れてからは、ほぼそれで持っている。

 同一の敵キャラクターと度々交戦し、何度も撃退しながら敵も脅威度を増していくパターンは、冒頭に挙げた悪役の面々とも共通している。
 従来のジャンプで敵キャラクターが厄介になっていくパターンは少なく、一つの新たな王道が生まれつつあるダイナミックな躍動を感じずにはいられない。
 特に真人の成長速度は恐ろしく、あと一歩で打ち損じそれまでの奮戦を強化の肥やしにされる展開は我がことのように悔しい。

 しかしそれも、成長した主人公達の見せ場ためのお膳立てに違いない。
 本来はウィークポイントであるはずの味方サイドの地味さも、五条悟が圧倒的にワンマンで無敵なことも、敵キャラクターの魅力で期待に変わる。敵キャラクターの魅力イコール作品への期待値なのだ。

 少数の天才的な大人達が状況を食い止めている間に、次世代の少年少女らは友情を育み、悲しみを乗り越え、鼓舞し合い愚直に成長していく。そして彼らがついに天才を超え、協力して脂の乗り切った邪悪を祓う。これぞ少年漫画的なアツい展開ではなかろうか。今後を期待せずにはいられない。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。