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ショートストーリーVol.1 もどかしい時代

今回はちょっと趣向を変えて、ミニストーリー形式で、私たちが思い描く『オタクコイン構想』について、お伝えできればと思います。

通勤・通学中もしくはお休みの前などの読み物として、肩の力を抜いてご覧いただければ嬉しいです。

「——このアニメ、面白かった。」

 上京してから数年が経った。残業帰りに買ったおにぎりを食べながら迎える、深夜1時半。明日は出社が早いので、寝不足は確定している。ああ、休みたい。

 キャラデザインを担当された方は昔から好きだったので、少し奮発して画集を買いたい。物語の続きも気になるので、原作も揃えたい。ただ、どちらもあと1週間、給料日までは我慢である。

 ぼんやりと天井を仰いでいたら、ふいに新作アニメの告知が流れはじめた。先ほどまで見ていたものとは内容や作風は異なる。しかし、とてもきれいだ。そういえば、他に予定されているアニメはどうなのだろう。

 どうなのだろう。

 ——「明日のことは考えるな」という人もいれば、「明日のことは翌朝に考えれば良い」という人もいる。「なにを言っているんだ。明日のことは2週間前からカレンダーに書いてあるだろう。」という聖人も世の中にはいるというが、本当だろうか。ともあれ、どれが正しいということもないのだろう。私のこの瞬間に限って言えば、明日のことは考えない。そういうことにした。

 画面を切り替えながら、夜食の片づけをする。冷蔵庫に食べなければならなかった生肉の存在を見た気がするが、さほど気にはしない。着座をして、目を細めながら来期のアニメの一覧をながめる。情報が簡単に、たくさん手に入ることは今日の文明の素晴らしいところだ。なかなかに氾濫気味ではあるが、この円滑性の価値は揺るがない。

 個人の意見をつらつら書いているサイトもチェックする。まとめサイトは俯瞰するにはよいが、たまには毒のあるレビューも読みたい、と思う。情報の発信も膨大なものになり、人の意見がフラット気味に見えるのは、見ている側の私の目が麻痺をしているのだろうか。

 なんにせよ、いくつかの一覧性の高いサイト、気に入っている個々人の文面に目を通して、来期観たいアニメをリスト化。それから、満を持して鑑賞に臨む、というのがここ数年来の習慣である。もちろん、限られた時間の中で見るものはどうしても厳選せざるを得ないということもあるが、それ以上に、まとめる過程を通すと選んだものに愛着が湧いてより楽しめる、というのが私の自論である。

 昇進すればこういった時間も少しはゆとりが持てるのだろうか。ある程度、金銭的なゆとりはでる、と思いたい。時間については不透明だろう——時間はひねり出すものだ。という母の言葉がちらつく。

 重たいまぶたを持ち上げながら、リストの作成に取りかかる。

 ここ最近はファンタジー作品ばかりを見ていた気がするので、たまにはほのぼのした日常ものが観たい。舞台設定は退廃的な世界観などがよいのだけれども、あるかしら。そして、相変わらず『学園もの』は多すぎやしないだろうか。

 とあるカテゴリを眺めていると、なんだか似たようなアニメが並ぶ。あまりに異色であるとその域をでるということもあるかもしれないが、それを加味してもだ。

 これは「とあるカテゴリ」に限った話ではない。そして、今に始まったことでもない。よくよく考えると不思議だ。なぜ同じようなアニメがつくられるのだろうか。面白かったアニメの、望まれている続編を差し置いてまで。ファッションのような流行とも、なんだか異なる。

どうして——。

 どうして、似たようなアニメがつくられているのか。どうして、1クール12話のアニメが多いのか。どうして、オリジナルの作品は少ないのか。どうして、Blu-ray/DVDはあんなに高価なのか。どうして、こんなに観きれないほどのアニメ作品がつくられ続けているのか。どうして、素晴らしい作品を作っている人たちの生活が豊かになりづらいと言われているのか。どうして、ハリウッド映画は世界で大ヒットするのに、日本のアニメが世界で大ヒットする話はあまり聞かないのか。どうして、どうして、どうして。

 アニメを取り巻く、これらの「どうして」の根っこ。それはアニメ制作における『お金の集めかた』にあると、私たちオタクコイン協会は考えています。

 深夜アニメを例に挙げると、12話×30分枠の1クールにかかる制作費用はおおよそ『3億円』。この費用は反響がどの程度になるか分からない状況のもと、ひとつの会社で背負うには大きすぎるリスクとなります。

 そのリスクを分散するためにできたのが『製作委員会方式』。現在主流の『お金の集めかた』です。

 ひとつのアニメ制作にさまざまな会社が参加。参加する会社は、アニメ配信会社、グッズ・Blu-ray/DVDの販売会社、ゲーム会社など。そして、それらの会社で『3億円』の負担しあう形をとり、作品がヒットしなかった場合に備え、リスク分散を図りました。この仕組みにより、たくさんの作品を作り出すことができるようになりました。

 しかし、この仕組みができてから25年の年月が経過。さまざまな課題も出てきました。

  ① ネット配信の主流化にともなう、Blu-ray/DVDの販売不振。『製作委員会方式』そのものが成り立たなくなってきている

  ② 作品がヒットしてもスタジオに金銭的なリターンがないことが多い。アニメを制作する現場の人たちの生活が豊かになりづらいと言われている

  ③ ゲームやグッズが売れるようなアニメ企画など、ビジネス視点での作品制作が定番化。ファンが望む作品、クリエイターがつくりたい作品が制作しづらい

  ④ 世界中にたくさんのアニメファンがいて、海外にもたくさんの関連会社があるにもかかわらず、日本国内に閉じた仕組みになっている。作品がヒットしても海外の大作など——たとえばハリウッド映画——と比較すると、スケールが小さくなってしまっている

  ⑤ 作品の権利の所在や各権利の窓口がクローズドで、権利を活用したい会社や個人に対しての権利運用がなめらかでない

 『3億円』を負担してくれる「会社」は、アニメ制作にとって貴重、かつ重要な存在です。そして、そうした「会社」のビジネスがうまくいくことが、これまでの『製作委員会方式』を成立させるための大切な要件でした。

 もちろん、ビジネスそのものは否定されるべきものではありません。——人は価値があると思ったものにお金を払います。感情移入をしたもの、感動したもの。人の心を動かすものづくりそのものは、決して否定されるべきものではありません。

 ただ、「ビジネス」視点でのものづくりが先行しているこの状況。「製作委員会方式」を成立させるためのこの状況。これは本来あるべき「ファンとクリエイター」の関係性が変わってしまったと言えるのではないでしょうか。

インターネットで世界中の情報が飛び交いはじめて久しい今日。”ブロックチェーン”によって『価値の移転』についても動きが加速しはじめています。オタクコイン協会はこの”ブロックチェーン”の特性を活かし、アニメ制作に必要な『お金』をあらゆる国の境界を越えて、世界中のファンから集めることができると考えています。

世界中のファンからアニメ制作に必要な『お金』を集めることができたら。

そうすると、なにが起こるでしょう?

——そう。「アニメが、本来の姿に戻る」のです。

ショートストーリーVol.2 もどかしい時代:

ショートストーリーVol.3 もどかしい時代:


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