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おとねえ✖️鈴珠 【ヴァンパイアパーティー】

鈴珠…福原陽一(ふくはらよういち)
男性40〜55歳くらい。大手食品企業『福来』の二代目社長。

おとねえ…雪村ことり
女性25歳くらいに見える。アルビノのヴァンパイアマッサージ師。

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鈴珠
「俺はその夜、部下に勧められて夜しか営業していない派遣型マッサージ師を頼んだ」

(扉の開く音)

おとねえ
「こんばんは〜初めまして雪村ことりと申します。福原陽一様、新規のお客様ですね。よろしくお願いします」

鈴珠
「(息をのむ)…あ、すごい髪だな…」

おとねえ
「はい…私は生まれつきこうなんです」

鈴珠
(マッサージ師の雪村ことりはキラキラ光をはねる長い白髪(はくはつ)
と、透けるような白い肌、赤みがかった薄茶色の瞳をしていた)

鈴珠
「アルビノ…初めてみた。だから、夜しか営業してないのか?」

おとねえ
「はい、そうなんです。太陽の光を浴びると、日焼けどころか、火傷に近くなってしまうんですよ」

鈴珠
「なるほど…」

おとねえ
「では、施術を始めていきますね。薄着になってうつ伏せに寝そべっていただけますか?」

鈴珠
(彼女の施術はハーブボールという、選び抜いた薬草を詰めた丸いガーゼの玉を、温めては身体に当てて、コリをほぐすというマッサージだった)

鈴珠
「あ、あったかい」

おとねえ
「うわ、こんなに冷えて固まってる人、久々に見ました💦どうしたらこんな石みたいになるの?お仕事何されてるんですか?」

鈴珠
「あー、俺は一応、社長業を…。福来って食品会社で社員をまとめてる…」

おとねえ
「え!福来??有名な会社ですね!私チキンヌードル好きですよ!よく食べます」

鈴珠
「意外…」

おとねえ
「え?」

鈴珠
「いや、少し驚いた。人間離れした風貌から、めっちゃ普通の人間っぽい話が出てきから…」

おとねえ
「なんですか?その言い方は?んもう、わたしは化け物か何かだと思ったんですか〜?」

鈴珠
「いや、言うのもなんだが、美しくて妖精とか女神っぽいって、冗談抜きで思った」

おとねえ
「あらあら、ふふ。ありがとうございます。足ほぐしますね。少し痛いですよ〜」

鈴珠
「!?いた、いたたたたっ!!もっと、もっと優しく!!」

おとねえ
「すみません、普通の人はそこまで痛くないんですが、福原さんがこれでもかってくらいカチコチの冷え冷えさんでして💦ある程度ほぐせば、気持ち良くなりますから」

鈴珠
「本当かっ?!」

おとねえ
「はい、がんばってください。私もがんばってほぐします」

(ペタペタとハーブボールを当てる音)

鈴珠
「あー、気持ちよくなってきた。すごいな。久々に身体が柔らかく感じる…」

おとねえ
「今までが人間の身体してなかったんですよ。石ですよ。石。すごい長年休まず働いてきた身体なんですね。身体があちこちで悲鳴あげてました」

鈴珠
「そうなのか?」

おとねえ
「はい、もっと自分の身体を労ってくださいね。身体が可哀想です」

鈴珠
「そうだな。でも休めない。たくさんの社員を抱えてるからな」

おとねえ
「…身体、壊れちゃいますよ?」

鈴珠
「身体に無理させても、向こう半年休めない。ちょっと気がかりな案件も抱えてるから」

おとねえ
「半年…!?病気になって死んでしまいますよ!」

鈴珠
「んな事言われてもな」

おとねえ
「…なんでそんなに無理なさるんですか?なんでそこまで…」

鈴珠
「…福来食品を食べてくれる顧客と、福来を一緒に支え、俺を慕ってくれる部下のために、今俺が壁にならんといかん状況でな」

おとねぇ
「壁…?」

鈴珠
「ああ、ここだけの話しだ。
一部の社員が今の不況にかこつけて、商品の衛生面や質を下げようとしてる動きがある。
本当に問題が起こる前に、その指示してる差し金が誰なのか突き止める必要があるのさ。」

おとねぇ
「え…あらあら」

鈴珠
「会社ってのは社内政治の舞台だ。
休まず出社して睨みを利かせてないと、どこにも悪い派閥…というかズルい派閥が、のさぼるものさ。
そんな時に俺が休んで舞台に上がらないわけにはいかんよ」

おとねぇ
「……あの、もし、もしほとんど無敵の身体になれるなら…。
半年どころか、一年、いや数年、数十年、休まず働いても大丈夫になれる方法があるなら、試してみたくないですか?」

鈴珠
「…そんな方法あるのか?」

おとねぇ
「はい、あります。ひとつだけ。ヴァンパイアになるんです。」

鈴珠
「へ?ヴァンパイア?」

おとねぇ
「私、アルビノに生まれただけじゃなく、極度の虚弱体質に生まれて、昼どころか、夜も出歩けないほどでした。私は25の時とあるヴァンパイアに噛んでもらい、ヴァンパイアになりました」

鈴珠
「え…?君がヴァンパイア?」

おとねえ
「おかげで今では元気で歩き回れるし、こうして働けてます」

鈴珠
「……………」

おとねえ
「あ、すみません💦信じられませんよね💦わ、忘れてください」

鈴珠
「待った。その話だが」

おとねえ
「は、はい💦」

鈴珠
「昼間も動けるのか?」

おとねえ
「へ?」

鈴珠
「だからヴァンパイアだよ。ヴァンパイアになったら、夜しか働けないとかじゃ、話にならん」

おとねえ
「あ…私がアルビノなだけで、他のヴァンパイアさんたちは普通に昼間働いてます」

鈴珠
「なら大丈夫だ。少し強めのニンニク注射と同じだ。今は大切な福来を守るためなら、神でも悪魔でも、仏でも、なんならヴァンパイアにだって頼りたい気分だったしな」

おとねえ5
「…分かりました。上を脱いでください」

(しゅるりと服を脱ぐ音)

おとねえ
「ハーブボールで温めてほぐして、さっきより柔らかくなった首筋…。
今なら、噛みやすそう…。…んあ」

(ガブリ)

鈴珠
「ーーっ、くっ!っこれは…やば」

(ごくごく じゅるり)

鈴珠
「はあはあ…、ははっ結構、効く…!」

おとねえ
「ふは…、はあはあ。…お疲れ様です。ごちそうさまでした」

鈴珠
「はあはあ、すごい…!身体に力がみなぎってくる…!!
どうもありがとう!」

おとねえ
「いえいえこちらこそ。…これからはお互いのメンテナンスというか、血を吸い合うためにも、月イチでマッサージに呼んでくださいね」

鈴珠
「ああ、よろしく頼む。…これで明日からも戦える!!」


(終わり)

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