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八重山旅行記④

4日目が始まる。

一番楽しみにしていた日

島の朝食

西表島で迎える朝。
西表島や石垣島は日本の南に位置するので日がのぼるのが遅い。
8時半出発に合わせて7時に朝食会場へ向かったがまだ外は真っ暗だった。
西表島への食料や物資は石垣島から船で届けられる。
山や川が土地の大部分の為、パイナップルや猪や手長海老やタコや貝は沢山取れるが、米やパンや野菜は島外からの調達に頼っている。
高速船やフェリーが天候理由で欠航してしまった場合は必然的に食べる物が不足してしまう。
そんな事を前提に朝食会場へ向かった為、そこまで期待値を裏切られた気分にはならなかった。

海老が立派🦐🦐

カヌー&トレッキング

この八重山旅行の一番の楽しみだったのがカヌー&トレッキング。
カヌーは初体験で運動音痴の私でも乗れるのかが不安だった。
服装は「濡れても良い動きやすい服装(腰まで濡れる事があります)」「虫に刺されるかもしれないので長袖長ズボンが好ましい」とこ事だったので、水着の上から水陸両用のレギンスを履き、上はラッシュガードの上からゴルフの時に着る上着を羽織った。
ロビーに集まると参加者の皆さんの服装を見て明らかに私だけ濡れる気満々の服装だと言う事に気付く。
Tシャツに長ズボン…あれ?
今日のガイドさんを紹介される。
女性のガイドさんと男性のガイドさん。
男性のガイドさんはTシャツに半ズボンに便所サンダルという軽装だった。
女性のガイドさんはしっかり長袖のラッシュガードにレギンスとショートパンツを合わせていた。
2人の服装が違い過ぎるので、今日のアクティビティの想像が全く出来なかった。
「腰まで濡れるって何なんだ?」と疑問と恐怖を抱きながらツアーが始まった。

添乗員のMさんが「私の独断と偏見で2つのグループに分けました!」と説明した。
私は「どうか女性のガイドさんであります様に」と願ったが、その願いは虚しくも却下され便所サンダルを履いたKさんというガイドさんが率いるBチームに配属された。
Bチームは、仲良くなった親子と埼玉さんご夫婦と大阪から来たというおばちゃん2人組と私だった。
心なしかBチームになった人たちは皆んな残念な様子だった。

カヌー乗り場の近くの駐車場に車を止め、靴を履き替えてオールの使い方の説明を受ける。
Kさんは凄く適当で、「右に曲がりたい時は左にかいて、左に曲がりたい時は右にかいてね〜」と説明をして直ぐに出発となった。

もう一方のAチームは私たちより先に到着していたのにも関わらず、Bチームが出発する時になってもまだオールの練習をしていた。
もっと色々教えて貰いたいとチーム員全員が思う中のスタートとなった。

出発

安全面での不安はあったものの、Kさんは全員の名前を覚えてくれて和気藹々と雰囲気良く川へ向かった。
Kさんは終始皆んなが楽しめるようにと話をしてくれ、デジカメで写真を撮りながらテキパキと進んで行く。

カヌー乗り場に到着し、一人ひとりカヌーへと乗り込む。
バラエティ番組の見過ぎなのか、ひっくり返ってびしょ濡れになる事を想定していたが実際には全くそんな事はなく安全な乗り物だった。
Kさんが後ろから押してくれてすい〜とカヌーが進む。
大してレクチャーを受けていなかったが見様見真似で漕ぐと意外と上手く漕ぐ事が出来た。
「少し行った所で待っててね〜」とKさんは言っていたが埼玉さん夫婦も親子ちゃんもおばちゃん達もどんどん先へ進んでしまう。
Kさんも自由だがメンバーも自由だ。

Aチームも後に続き様子を見ていると、ガイドさんが先頭を漕ぎながらマングローブや川の生き物の説明をしていて参加者の皆さんは一箇所に集まってその説明を真剣に聞いていた。

方やBチームはおばちゃんがマングローブに突っ込んで動けなくなったり、埼玉さん夫婦は先に進み、親子ちゃんと私は写真を撮り合ってぶつかって大笑いしたりとかなり自由に過ごしていた。
Kさんはそんな様子の写真を撮ってくれたり、おばちゃんを助けたり、たまに植物の説明をしてくれたりと良い感じに見守ってくれていた。
私たちBチームは早い段階で「Kさんで良かった」と思い直していた。

オールの持ち方違うのに教えてくれないKさん
沢山写真撮ってくれた
自由なBチーム
景色が素晴らしい

トレッキング

40分程カヌーで川の上流へ進むと、そこからはトレッキングで目的地「ピナイサーラの滝」を目指す。
Kさんは珍しい花や木の説明をしながら進む。
岩場が続く険しい道だった。
高齢の方でもこの道をすいすい歩いて行く。
写真を撮るのに夢中になっており、気付いたら最後尾にいた。

神秘的な景色
結構息切れします

ピナイサーラの滝

30分程歩くと滝の音とミスティな空気を感じ、最後の岩場を登ると目の前に滝が現れた。

51m 沖縄で一番高低差のある滝

滝が間近に見れる岩の上に登って写真を撮ったり、水場まで行って手を洗ったりと各々自由に過ごした。

一人旅って自分の写真がないから、撮って貰えるの有り難い
親子ちゃんともぱしゃり

お昼の時間になったのでこの辺りで昼食を摂る。
AチームBチームに分かれて、それぞれガイドさんが八重山蕎麦を作ってくれる。
私達が写真撮影をしている間にKさんはリュックの中からガスコンロ、お鍋、麺、お出汁、トッピングのお肉や小ネギ、どんぶりにお箸と次々に出して料理をしてくれていた。

笑顔で見守る埼玉さん夫婦
完成!
軟骨入り!

この八重山蕎麦はKさんが勤めている民宿のオーナーさんオリジナルの味で、後から聞いたらAチームの八重山蕎麦はもう少しさっぱりした味付けだったらしい。
Bチームの八重山蕎麦は鰹と昆布出汁に、軟骨も含めた豚肉と日本酒を圧力鍋で煮込んでとろとろにして合わせ出汁にしているそう。
昆布の旨味と魚介の風味と豚骨の脂味が良い感じに融合していて、今まで食べた八重山蕎麦の中でも一番美味しかった。
トイレが心配だったがあまりにも美味しかったのでスープも全て飲み干した。
他の参加者さんも皆んな「もったいない」と言って飲み干していた。

皆んなニッコリ

トイレが心配だったのには理由があり、このトレッキングツアーにはトイレがない。
参加者一人ひとりに「エコトイレ」なる物が配られ、草むらで用を足し帰るまで排泄物が入った袋を持ち歩かなくてはいけない。
このピナイサーラの滝にトイレスポットがあったので、どうしても我慢出来ない人は奥の仮設トイレスポットで用を足していた。

ひっくり返して使うんだって
風でひっくり返ったら終わり

あと20分位したら来た道を戻りますよとなり、各々写真を撮ったりトイレを済ましたりして過ごした。
するとAチームにいた添乗員のMさんがそわそわし始めた。

「どうしたんですか?」

と問い掛けると

「泳ぎたいなぁ…」

と子供の様に目を輝かして呟いた。
周りにいた人たちは驚いていた。
時期は2月の頭、つい3日前には石垣にも寒波が到来してダウンジャケットが欠かせない時期だった。
確かに運良く太陽が出て来ていたがそこまで暑い日ではなかった。
しかし石垣島に移住してから何年も経っているMさんにとっては「もう泳げる時期」なのかもしれない。
すると女性のガイドさんから

「泳ぐのは良いですけど、この後濡れた服でカヌー漕いで帰るの忘れないで下さいね。」

と言われてしまい、しゅんとしていた。
これまでの4日間、添乗員としてしっかり皆んなを引率していたMさんか珍しく童心に帰り楽しそうにしていたのが私は嬉しくて、しゅんとした姿はとても気の毒だった。

「Mさん、一緒に泳ぎますか?」

そう誘うと、彼女の瞳が再び輝いた。

「えっ!良いんですか?」

「せっかくなんで、思い出になると思いますし。」

何故なら私は今日、上から下まで濡れても良い格好で来ていた。
水着になる事は躊躇われたが、幸い水着の上にはラッシュガードと水陸両用の速乾レギンスを履いていた。
ここで泳がない手はない。

呆れ顔の女性ガイドさんを尻目に、参加者さんの拍手とカウントダウンに押されて2人で川に飛び込んだ。

川の水はサウナの水風呂の如く冷たく、でもとても気持ち良かった。
自然がない千葉で育った私にとって、川で遊ぶのは夢の様な話で良くよく考えたら37歳にして初めての経験だった。
何より、海と違って臭くなく、透明で気持ち良い。
余りにも気持ち良くて滝壺の辺りまで泳いだり潜水したりして過ごしていると、ふとギャラリーがややざわついている事に気付く。
既にMさんは寒さに参って岩場にあがっていた。

「おとうふさん、顔付けたんですか?!」

「潜水してる!」

どうやらMさんとの認識が違っており、彼女は肩くらいまで付けて平泳をしてすぐにあがったらしい。
少し拍子抜けしてしまったが、何となく場が盛り上がったので良かったと思った。
女性ガイドさんは相変わらず怖かった。

そんな2人の姿を見て

「うちもやる。」

と最年少のAちゃんも入水した。
こうなったら女性ガイドさんも呆れ顔で見守っていた。
Kさんは「良いね良いね〜」と言いながら写真を撮ってくれていた。

まじでカッパだった🥒
家族写真

4日目にして参加者さんの半分と打ち解けて、名前で呼び合い写真を皆んなで撮ったりと凄く仲良くなれた。
Kさんありがとう。

ビーチクリーン

濡れた髪を太陽で乾かしながら来た道を下って行く。
行きはかなり急斜面で大変だと思っていたが、帰りは楽ちんだった。
すぐにカヌー置き場に到着し、カヌーで外海を目指す。
次の目的はビーチクリーンだ。
西表島は海流の影響もあり、日本だけではなく海外からの多くのゴミが流れ付く。
今話題になっている海洋プラスチックは、そういったペットボトルや発泡スチロールが細かく砕けて魚や海亀が誤って食べてしまう事で問題になっている。
西表島のエコツアーを担当するKさんの様なガイドさんは一生懸命漂着ゴミを休日に拾ってはいるが、個人の力では限界があると日々悩んでいると話していた。
西表島のゴミ処理の限界もあり、拾ったゴミは船で石垣に運ぶ事になる。
石垣島でも処理出来ないプラスチックは埋め立てなくてはいけない。
全ての処理にお金が掛かり、専用のゴミ袋一つを処理するのに8,000〜10,000円掛かるので、補助金だけでは賄えないとの事だった。
イリオモテヤマネコやマングローブなどの自然を観光の売りにしている島の裏側には、漂着ゴミがぎっしり埋め尽くされていた。

Kさんと発泡スチロールを拾う
Before
After
あっと言う間に一杯に
帰って来てカウントもするよ

残念ながら漂着ゴミの9割が中国からの物だった。
過去に宮城の志津川湾でもビーチクリーンをしたが、その時は全て韓国製品だった。

漁業をする海域や空域にはシビアなのに、ぷかぷか浮かんで来るゴミにはぐっと堪えて拾って処理をする日本人はお人好しだ。

私が出来る事は少ないけれど、たまに足を運んでゴミを拾ったり、この現状や活動を沢山の人に知って貰えたら嬉しいなと心から思った。

SDGsいっとこうか


再び石垣島へ

ゴミのカウントと分別を終え、Kさんの民宿でシャワーを浴びて船に乗る支度をする。
大きなスーツケースは既に石垣港に朝送ってしまったので、小さなリュックに入れた替えの下着とTシャツとレギンスに着替える。
そう、TシャツとはあのオリオンビールTシャツだ。
まさか濡れる事はないだろうと思い、念の為の意味を込めて上下パジャマを持参してしまった。
更衣室からスマした顔をして出て来た私に参加者さんは次々と声を掛けてくれた。

「Tシャツ似合ってますね。」
「いつの間にそんな物買ったんですか?」
「泳ぐ気満々だったんですね〜」

と。
そしてそのTシャツを見て、親子のママEさんは

「初日にファミマでオリオン6本セット買ってるの見て『飲むんだ〜』って気付いてたよ〜」

と言ってくれた。
看護師さんからも

「真っ先にぐい呑み作るって宣言していてカッコ良かったです。飲むんですね。」

と話し掛けて貰えた。
更に神戸さんの奥さんからは、お化粧室の手洗い場で

「泳いだの凄い良かった!マーメイドみたいだったわ〜」

と何故かカッパの水浴びをべた褒めして貰えた。
ピナイサーラの滝で飛び込みオリオンビールのTシャツを着たら友達が増えた。
幸せな旅だ。

憧れのANAインターコンチネンタル石垣

そして4日目の夜は一番楽しみにしていたホテル、ANAインターコンチネンタル石垣に宿泊だ。

オリオンビールTシャツ(パジャマ)を着た私を筆頭に、トレッキング帰りの薄汚れた観光客13人+濡れた添乗員の団体は明らかにラグジュアリーホテルで浮いていた。
個人旅行で側から見て「うわ〜団体旅行だ。」と思っていたが、実際に中に入ってみると居心地が良い。
はとバスツアーとかも楽しめるかもしれない。

ANAインターコンチネンタル石垣は本館はかなり古いが、数年前に新館が増築されて凄くレベルが上がった。


↑クリックするとルームツアー見れますか


こっちでも同じルームツアー見れます

https://twitter.com/otofu_na_mental/status/1642184241307090945?s=21&t=jkUkS08xnosp9X4LuG2aFA

新館はベイビューと呼ばれ、1泊7万程する部屋が今回泊まれるとの事で、このホテルを目当てに参加したと言っても過言ではない。

ここは外国なのか

きっと外国だ
素敵な鏡あった🪞

動画と写真を見れば説明はいるまい。
幸せなステイを過ごせました。

旅の感想会

この日は最後の夜だったので、仲良くなった親子ちゃんと添乗員のMさんと4人で夕飯を食べに行った。
Mさんのこのツアーに賭けてる思いや今までの苦労話を聞き、私はこのツアーに参加出来て本当にラッキーだと実感した。
インターコンから車ですぐの居酒屋さん「かぁらや」を訪れた。

お刺身盛り
猪ちゃんぷるー
紅芋天ぷら
石垣牛
もずく天ぷら

4人で「ヨガの時に誰かいびきかいていたよね」とか「今日の朝ガイドのKさんが担当って知って不安になったよね」とか、今だから話せるあるあるを話しながら大爆笑しながらオリオンビールを飲んだ。

とても素敵な一日だった。

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