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あの、夏の日5

モデルのおじさんと私は、とても仲良くなりました。電車で、顔を合わせるのですから、何気に話をするワケです。

どうして、京都でバーテンをしていたのか?
何処の出身かとか?聞いたりしました。

「九州から来たんだよ。市役所で、働いていたんだけど、
子供が亡くなって、嫁さんとの仲が上手くいかなくなって、
何もかも嫌になって、ふらっと家出してきたのさ。」

「ふーん、そうなの。」

「そのあとは、大阪の釜ヶ崎で、日雇い労働者をしていてね。
しばらく、何も考えずその日暮らしで、
前の生活を忘れることにした。
それから、新聞広告で、バーテンの仕事を見つけて、
京都まで来たっていう事かな。」

「へー、そうなの。」

私は、釜ヶ崎がどういう所かも、想像つきませんでした。

「子供さんが、いれば家出しなかった?」

「しなかったと、思う。」
私は、それ以上は聞きませんでした。


おじさんは、趣味でクラッシックギターを習っていると教えてくれました。
「一週間に一回先生について習っているけど、
なかなか上手くならないよ。」
一度聞かせてくれた事があります。

禁じられた遊び
アルハンブラの思い出


おじさんは私たちのモデルをしながら、
別のところのデッサンの会には、
週に一度一緒に、参加していました。
夜だったので、会が終わると、すぐに帰ってしまうのでした。
多分、奥さんが帰宅する前に家に帰らないと、
いけなかったのかもしれません。

モデルに来ている女の人の中には、仲良くなった人もいました。
モデルさんは、休憩時間に話をする人もいるけど、
気難しそうに全く話さない人もいます。

「電話番号を、教えてよ。」

「なんで。」

「着物とか、浴衣の撮影会するから、
その時に人手がいるから、電話するかも知れない。
今度、観光客向けに撮影会があるから。
5人ぐらい女の子集めないといけないんだ。」

「ふーん。」
彼女は、モデルの傍、派遣の仕事をしているみたいでした。

「XX日、着物の撮影会があるけど、、。どうかな?」

「うーん。また考えとく。」

私は、知らないところに行くのが好きではなかったので、
断るつもりでした。

でも、仕事は断るつもりでしたが、
彼女の事はモデルさんの中でも、
独特の色気があって、やさしそうだったので、
私は、嫌いではありませんでした。

他の人が、モデルに来ても、なーんだこの人か、、、。
描く気がしないなぁと思う時も多かったのです。


ある絵を描きに来ている男性は、
別のヌードモデルさんと仲良くなり、
近くの遊園地にスポーツカーで、遊びに行く姿もありました。

その男性は、絵を描きながら女性を物色しているみたいでした。
チラチラと、女性陣の方を見て、気のあるそぶりを見せていました。
格好といえば、芸術家風。
他の人達は、ジーンズにTシャツでした。
あ、おじさんは、サムイです。

他の男性陣は、陰で
「少し売れているからって、なんだアレ。
女を引っ掛けに来てるだけじゃねぇか。」
と、悪口を言っていました。

確かに、男性は既婚者だったので、
真面目に絵を描いている人達には、
少し奇異に映りました。


おじさんの頭部のモデルは、半年ほど続いたと思います。
それぞれ粘土制作の人たちは、石膏で型を取り始めました。
私は、その間する事がないので、自宅で本画の制作をし始めました。
下絵を元にして、和紙の上に描いていくのです。

学校の制作と違って、批評する人もいない状態で、
コツコツ制作するのは、
根気と何か他の人と違うアイデアがいるよなぁと、
思っていました。

第5わ 終わり

最後まで、読んでくださって有難うございます。
また、遊びにきてください。







最後まで、読んで下さってありがとうございます! 心の琴線に触れるような歌詞が描けたらなぁと考える日々。 あなたの心に届いたのなら、本当に嬉しい。 なんの束縛もないので、自由に書いています。 サポートは友達の健康回復の為に使わせていただいてます(お茶会など)