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大丈夫、それが夏! 【生ニラ玉】

ニンニク、ニラ、ネギ、ラッキョウ、エシャレット、とにかく匂いの強い野菜が大好物で、料理の仕事をしているのをいいことに多少臭ったところでなんの問題にもならないだろうと決め込んで昼夜を問わず口にしている。

飲食店のレシピ開発の仕事では、特にランチメニューに匂う料理は要注意。ともすればお客様からのクレームにも繋がりかねず「おいしいから」だけでは商品になりにくい。加えて、休憩時間もランチにかける予算感もある程度決まっている方が多いので、速さもコスパも絶対条件。そうして店側としてはそれに応えるべく提供スピード重視、コスト重視、万人受けする無難さ重視になって近隣の店同士で値段もメニューも似通ってくる。多くの飲食店にとっての永遠の悩みどころだと思う。

それが夏!が来た途端あまりの暑さにクサいも昼だからも何もかも吹っ飛んで、突如あの匂う野菜たちがスタミナ食材として解禁になるからおもしろい。
〜スタミナフェア〜ならデパートのレストラン街にあの匂いが立ち込めているのが想像できるし、スタミナ丼ならニンニクかニラは必ず入っていそうな気がする、そして臆せず食べればきっと元気が湧いて来る予感がする。
中でも緑黄色野菜としても代表格のニラは、ちょっとやそっとじゃ色褪せない力強いみどりが料理に映えるし、野菜として量もたっぷり食べられ、火通りも早いから火の側に長く立ちたくない真夏の台所向きの素敵な野菜だと思う。加えてスタミナ。もう言うことない。

そしてニラの料理といったら定番中の定番ニラ玉は、中華屋にあり居酒屋にあり、ニラと卵の2つの材料にちょっと味をつければ大抵おいしくできるから家庭でも作りやすく、オイスターソースか醤油味かの炒めタイプも、甘辛い出汁で煮る玉子とじタイプも、どっちでもどうやってもおいしい。もう言うことない。

今日はもう一つその折衷タイプ、茹でたニラと生卵で仕上げる生ニラ玉。つるりとした食感にくっきりとした色のコントラストも夏の気分、炎暑のスタミナ補給に打って付けのちょっとクセになる料理です。

◾️生ニラ玉の作り方◾️

【使った材料】
●ニラ…1束、食べたいだけ
●オイスターソース…20g〜
●ごま油…5g〜
●出汁…10g〜
●炒りごま…好きなだけ
●卵…1個、生食可能な鮮度の良いもの
●醤油…少々

夏の料理は適度な「水分」もおいしさの一つ。水の使い方、考え方一つで、ニラと卵たった2つのメイン食材で作る潔い料理もよりおいしく。

①卵黄の醤油漬けを作ります
まず小さな容器に醤油をちょこっと入れて、そこに卵黄だけを入れて、さらに上からも醤油をちょこっと入れて、ラップをして冷蔵庫で置きます。
この後ニラは茹でるから水気が加わってくる、こうしておくとねっとりと濃度が出て茹でたニラとのからみがとってもよくなります。

醤油の量は卵黄が完全に浸るほどだとしょっぱくなるので、なんとなく醤油の色が回ったくらいで十分。そのうち卵から出てきた水分で行き渡ります。
1時間後くらいからもうこってり感は出てくるから、色々やり始める前に真っ先にこれをやっておけば、漬ける時間はそんなに気にしなくて大体大丈夫です。時間を長めに置く方が身は締まるけど、ニラとからまないようでは仕方がない。適当にほどよく、あとは好みで。

この卵黄醤油漬けは、ごはんの友はもちろん、冷奴、刻んだオクラなんかと食べてもちょっと気が利いた感じがする優れもの。
残る卵白は、お味噌汁やチャーハン、玉子焼きなんかに入れて使い切っています。

②ニラを茹でます
お湯を沸かして塩少々を入れ、ニラを3cm長さくらいに切って、根元の方から順に入れて茹でます。
一見柔らかそうなニラだけど繊維が結構強いから、短めに切って少し柔らかいかなと思うくらいに茹でる方がこのお料理では食べやすい。ちょっとくらい長く茹でてもニラのみどりはそうそう簡単には褪せないし、しっかり茹でる方が甘さも出てくる。

つまんで食べてみて柔らかくなっていたらザルに上げて湯を切り、できるだけ広げてから軽く塩を振っておくと後で水っぽさが気にならなくなります。

私はよっぽどアクが気になる野菜でない限り、茹でた野菜を水にさらすことはほとんどせず、あと水気を絞ることもあまりしない。
この場合ならまだ熱いうちに一度くらい箸で上下を混ぜ返せば、下の方にたまった水気もまた湯気になって飛んでいくのでただそれに任せて置いておくだけ。

料理屋では、それ以上火が入らないようにアクが回って黒ずんだりしないようにと、特に青物は水に取って色止めすることが多いけど、水に取れば当然新しい水が付いて味が薄まる。
それを和食なら味付けした出汁に浸してお浸しに、洋食ならソテーにと、まだまだ先があるから一旦色や固さを保つようにけじめをつけておくことが重要になるけど、家の料理なら茹でたらもう仕上がりの方が近いと思うし、そこからまた仕事を増やさないのが気楽でいい。

絞れば当然水分は減る、けどよっぽどうまくやらないと野菜自体のおいしい水まで出ていってしまって今度は筋っぽさが目立つようになるから、まずは自然に湯気を飛ばして気になるならペーパーで表面を軽く押さえるくらいで十分。
水分の多そうなモヤシもいつもこうして、ナムルでも中華風の和え物でもしっとりふっくら仕上がります。

③ニラの水気が切れたら和えます
ボールにオイスターソース、出汁少々と、ごま油、炒りごまを合わせてから、水気が切れたニラを入れて和えます。
オイスターソースは商品によって大分味の濃さが違うので、量は味を見ながら好みで加減してください。

出汁は香りとおいしい水気を足すために。夏の料理はちょっと水分が多いかなと思うくらいがつるりとして食べやすい。

④で、完成です
和えたニラをお皿に盛り付けたら、真ん中に卵黄の醤油漬けをのせて完成。
卵黄をのせるときは漬け醤油ごとでもいいし、しょっぱそうなら卵黄だけでも。さらにごまを振ったりそのへんは食べる人のお好みで。

一口ごとにタレと卵黄をしっかりからめながら食べ進める。
これが生卵だと割った途端にたちまち流れてタレに溶けていなくなってしまうから、しっかり存在し続ける卵黄に、醤油漬けにしておいた自分を褒めてあげたくなる瞬間です。

今日の友は、氷なしでつくる本格ホッピー。
東京では熱狂的ファンが多いホッピー、しかしその一方で東京人でも謎に思っている人が多いのもまたホッピーという飲み物。簡単に説明すると、ビアテイスト清涼飲料としての商品名がまずホッピーで、今だとそのホッピーで焼酎を割って飲む飲み方が一般的。
今度はこの焼酎割りをお店で頼むときにも「ホッピーちょうだい」となるから段々ややこしくなってきて、さらに「中おかわり(焼酎だけください)」とか「外もう1本(ホッピーが足りなくなりました)」といった独特の言い回しがまた謎を呼ぶよう。

知ってみれば割りに単純な話だけど、昔はそういうことを熱心に指導してくれる先輩方が周りにたくさんいて、お陰で若い頃にそれらの作法を身につけた私のホッピーキャリアは長く随分と飲みました。

いざ割ろうにも継ぎ足せる隙間がほぼないほどジャブジャブに氷と焼酎を入れてくれる素敵なお店もありますが、この日はホッピーとグラスと焼酎の3つをしっかり冷やす「3冷」スタイル。焼酎は下町で絶大な人気を誇るキンミヤで。
言ってしまえばニラ玉とホッピーなんだけど、なんだか急に小綺麗なおいしさに。

お酒との相性はもちろん、ごはんにのっけて生ニラ玉丼もおいしいし、水洗いして締めたそうめんと食べる「生ニラ玉そうめん」もつるりと夏らしくおすすめ。
そうめんの分ニラを和えるタレを少し多めにしておくか、かんずり・柚子胡椒・豆板醤など、塩気のある辛味を添えて補うのも食欲が湧く。

そもそもスタミナ野菜はあの匂いこそが疲労回復・滋養強壮に役立つ成分に由来しているそうで、そんなことは言わずもがな、誰もがみんな知っているはず。
だから匂って大丈夫、それが夏!

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。

[生ニラ玉の作り方]の動画をYouTubeに投稿しています。合わせて見てもらえたら嬉しいです。


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