こんにゃく見出し01

スーパーのスター #1 【こんにゃく】

特に今日使うというわけでもないけど、買い物の荷物が少な目ならなんとなく買っておこうかなと思うものの一つにこんにゃくがある。
スーパーだと冷蔵の棚に置かれているものも、表示を見れば加熱殺菌済みで常温保存できるものも多いから保管に気を使わなくていいし、賞味期限も長くてあるとなんとなく気が休まる。

以前イベントの仕事で、山形郷土料理の代表格の一つ[芋煮]を作る機会があって、こんにゃくにまつわる思いもよらない指摘を受け驚いたことがあった。
芋煮は主に東北の各地で親しまれている里芋とこんにゃく、ネギ、たっぷりのきのこなどを煮る具沢山の汁物で、中でも山形内陸部で熱狂的に愛されているのが牛肉入りで甘みのある醤油味タイプ。
牛、あまから、これだけですでにおいしいことが予感できるし材料が特に珍しいこともないからまずは試作をしてみたところ、山形出身の人から唯一言われたのが「味はおいしい、ただ、その黒いこんにゃくだけがどうしても気になる」。
聞けば山形のこんにゃくは白いという。一方東京の板こんにゃくは黒っぽいのが一般的。こんにゃくの独特の立ち位置を思い知らされた出来事だった。

私のイメージだと長方形の板こんにゃくは黒っぽく、しらたきは白、刺身こんにゃくは白もあるし青のり入りの薄緑、ゆず風味の黄色なんかもある。
色々あるからそれほど気にしたことがなかったけど、原料になるコンニャク芋は生のままでは傷みやすく今は乾燥して粉にしたの(精粉)を使うのが主流となっていて、これで作るこんにゃくが白。温暖な気候を好むコンニャク芋の栽培は寒冷地では難しかったから、それで東北・北海道などでは精粉から作る白こんにゃくが一般的になったのだそう。

こんにゃくは、原料になるコンニャク芋の主にコンニャクマンナンが水を含んでノリ状になる性質と、そこにアルカリを加えるとその水を含んだままの状態で固まる働きを食品に利用したもので、約97%が水分というのに強い弾力も備えた誠に不思議な質感の食べ物。
東南アジアに今も広く自生し古くは中国から伝来したと言われているけれど、定着してさらに食品としての発展も見せているのは今や日本だけと聞く。
食卓ではメインにはなりにくいけど、あると尚良い、ないと寂しく欠かせない時だってある、そんな確かな存在感もお気に入り。

◼️こんにゃくいろいろ◼️

【こんにゃくの下処理】
こんにゃくには原料や凝固剤として使われる消石灰(水酸化カルシウム)由来の匂いがあって、下茹でが必要。
アク抜き済み、下茹で不要と売られているものが増えているけど、私は少し気になるので、沸騰した湯に入れて2〜3分下茹でしてから使っています。水から茹でると食感が固くなるから必ず沸騰したところに入れて茹で、水にはさらさずに湯を切ってそのまま使います。

●群馬上州名物[みそおでん]
コンニャク芋生産量全国一を誇る群馬の名物。甘味噌をこってりつければ、間違いない。
練り味噌をつける前にこんにゃくの水気を拭くことが最大のポイントで、味噌の付きが格段に良くなっておいしく食べられます。地元では布巾に叩きつけるように水気を切るから「ひっぱたきおでん」とも呼ばれていたとか。

①こんにゃくを湯(または出汁)で温めておく。
②小鍋に味噌・多めの砂糖と、酒・みりんを延ばす程度に加えて弱火にかけ、アルコールが飛んでこんにゃくにからむとろみが出てくるまでて練り合わせる。
③こんにゃくの水気をキッチンペーパーで拭いてから、練り味噌をたっぷりつければ出来上がり。

生芋からつくるこんにゃくは皮が入ることで茶色っぽい。味わいも穏やかでお湯で温めるだけでもこんにゃく自体が十分においしい。
ちなみに黒こんにゃくはこれに似せて精粉で作った白こんにゃくにヒジキなどの海藻で色をつけているものが多いそうです。

●[しらたき明太子]
買い置きのしらたきがあるとよく作る、ごはんのおかずにもつまみにも最適の一品。
明太子らしさを保ちつつ量が増えた感じの、いろんな面で繰り返し食べたくなるおいしさ。

①しらたきは長ければ食べやすく切ってから下茹で、水気を切り少量のごま油で炒めたら、酒・醤油(あれば薄口醤油)少々で軽く風味づけして水気がなくなるまで炒りつける。下味なので香りづけ程度にほんの少しずつで大丈夫です。
②水気がなくなったら火を止めて、薄皮ごと細切りにした明太子を加えよく混ぜ合わせたら出来上がり。

明太子を入れるのは火を止めてから。余熱で火を通せば粒がザラつかず柔らかな舌触りに仕上がります。
薄皮は取り除かなくても細く刻んでしまえばほとんど気にならないのでいつも入れてしまう。

●山形名物[玉こんにゃく]と[玉こんにゃくの天ぷら]
こんにゃく消費量1位という山形県、芋煮と並ぶ郷土料理の代表格の一つ、玉こんにゃく。からし添えが定番。

油で揚げるとまた一風変わったおいしさに。味付きタイプを使えば下味いらずで手軽にできる。

①味付き玉こんにゃくは水気をキッチンペーパーでしっかり拭いてから、小麦粉(天ぷら粉)をまぶす。
②揚げ油を温め、溶いた天ぷら粉に①をくぐらせて、衣がカリッとするまで揚げる。

市販の天ぷら粉を使うと尚お手軽。衣に火が入れば良いだけなので少ない油で揚げ時間も短く、ちょっと面白い一品が出来上がります。
玉こんにゃくに付き物のからしと、黒胡椒を混ぜた変わり塩を添えました。

●滋賀近江八幡名物[赤こんにゃく]
この色を初めて見た時はさすがに驚いた。一説には近江八幡に安土城を築いた織田信長の派手好きがこんにゃくまで赤く染めさせたという話も伝えられているそう。
赤色の元は三二酸化鉄(さんにさんかてつ)という食品添加物、一見奇抜とも思える色だけど、こんにゃく特有の匂いが少なく歯切れも良いとてもおいしいこんにゃくです。
こんにゃくの定番惣菜の一つ[雷こんにゃく]に。なんで雷かは、作ってみるとわかる。

①こんにゃくはやや小さめの一口大にちぎってから下茹でを。スプーンを使うと、形も揃い易くやりやすい。
②水気をしっかり切ってごま油で炒め、酒・醤油でしっかり目に味付けしたら唐辛子の輪切りを加えて水分がなくなるまで炒りつけ、好みで仕上げに鰹節を加えて出来上がり。

炒める時にバリバリバリバリと雷のようなすごい音がして、これが雷の名前の由来とも。でも特にはねたり焦げたりはしないので大丈夫です。
雷こんにゃくの辛味には七味や鷹の爪をよく使うけど、こんにゃくが赤だったので青唐辛子にしてみたら色合いも風味も爽やかになった。
もちろん色の違うこんにゃくでもおいしくできます。

私はいつも関東風のおでんには結びしらたきで味噌煮込みなら黒こんにゃく。こってり黒く染まったすき焼きのしらたきもおいしい。

昔から「おなかの砂おろし」「胃のほうき」と言われて珍重されてきた伝統食材、今日も工夫が重ねられ一向に廃れないのは合っているからなんだと思う。
地味だけど替えが効かない、料理するのもとてもおもしろい食べ物です。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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