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夏が来る。 【ナスのたたき】

夏が来る。年々厳しさを増す暑さには辟易するけど、その分ビールと夏の野菜が一際おいしく感じられるお陰か、毎年思いの外健やかに過ごしている。

畑をやったことがある人ならわかってもらえると思うのは、夏の野菜はどんどん育って少しも待ってくれないから、毎日のように見て採って食べなきゃ追いつかない。
だから、生で、煮て、焼いて、炒めて、揚げて、と飽きないための料理のバリエーションがたくさん生まれたのだと思うし、野菜の方でも心得ていかようにもおいしく料理されてくれるからそれこそ毎日食べられる。
いかにも瑞々しいトマトやキュウリといった夏野菜の中で、ナスだけは触るとなんだかスポンジのようななんとも言えない質感で、なのに火が入った途端まるで水になったようにとろけてしまうところが不思議でおもしろくてとてもおいしい。

相性のいい油を使って鮮やかな茄子紺を生かす料理もいいし、反対にすっかり色が褪せるほどクタクタに煮たのもまた格別。
皮を薄くむいてただ柔らかく蒸しただけのも絶品でそれこそ水を飲むようにするするといくらでも食べられる。蒸し上がりの翡翠色も美しくて、むいた皮はごま油で炒めてきんぴらのようにするとこっちは紫色が新鮮な一品になって二度楽しい。

生でも食べられるナスだけど実はそれだけがちょっと苦手なのは、修行時代ナスのぬか漬けに随分泣かされたから。
加熱には強いナスの紫も酸には弱くて茶色に変色しやすく、乳酸菌の酸が豊富なぬか漬けではきれいな色に漬けるのがとても難しい。
鉄イオンやアルミニウムで色が安定することが知られていて、昔はそのためにぬか床に錆びたクギを入れたとよく聞いた。
でも実際のところクギはかき混ぜる時に危ないし、もう一つナスの色出しに使われる物に硫酸アルミニウムを含む焼ミョウバンがあるけどこっちは味に影響する。
どちらも店では入れていなかったから、ナスを色よく漬けるコツはただひたすら塩のすり込み方と漬け方だけで、漬けたナスを翌日床から出す時の緊張は夢に見るほどだった。

ナス生産量日本一の高知で生まれた絶品ナス料理、カツオじゃなくて「ナスのたたき」。
同じく日本一を誇るしょうが、みょうが、ゆずなど、南国土佐の恵みをふんだんに盛り込んだ、明日も明後日も食べたくなるほどおいしい爽やかな夏向きの料理です。

⬛︎ナスのたたきの作り方⬛︎

【使った材料】
●ナス…2〜3本、食べたいだけ
●焼き魚(アジの干物)…1枚~
●お好みの薬味類…ぜひたっぷり
※今回は、大葉/にんにく/みょうが/しょうが/万能ネギ を使いました
●ポン酢

なんでもたたきにしてしまうという高知、その自由な気風を大いに見習ってぜひおおらか気楽に試してみてください。

①魚を焼きます
フライパンに魚を並べて、蓋をして火が通るまで焼きます。
この日はいかにも身が柔らかそうなアジの一夜干しを見つけて、焼くというより「蒸す」イメージで油を使わずふっくら火を通しました。
ナスと一緒に口に入ってきたときのことを想像してみると、魚もしっとりふんわりがおいしそうに思い。

触れるくらいまで冷めてから、食べやすいように骨やぜいご(硬い鱗)などをきれいに除きながら、身をほぐしておきます。
ここだけはしっかり丁寧にしておく方が、後で気持ちよく食べられる。

使う魚は、サバなど他の魚の干物や焼き魚など、手に入るもの好きなものでいいそう。
ツナ缶を使うのも見かけたし、なんなら魚はなししでナスと薬味だけのベジタイプもある。自由です。

②薬味類を刻みます
魚を焼いている間に、薬味を刻んでおきます。
この薬味の種類も量も好き好き。ただメインがナスといっても目指しているのはたたきなので、ぜひ量はたっぷりをおすすめしたい。

●この日使った薬味
切ってそのままでも大丈夫ですが、一度水にさらすと風味も食感もすっきりするから、たくさん使ってもくどさがなくて食べやすくなります。

・大葉(青じそ)
大葉を千切りにするときは、くるくる丸めてから切ると切りやすい。
大葉は乾燥がとても苦手なので、切る前にも水に浸けてシャキッとさせれば更に切りやすく。

・にんにく
にんにくの生は、空腹で食べたりたくさん食べ過ぎると胃を荒らすこともあるので苦手な人は注意が必要。
私は強い方なので割と平気で食べますが、それでも芽を除いてからできるだけ薄く薄くを心がけて切りました。

・みょうが
ぬか漬けに漬けるとよくわかるけど、丸のまま入れると小さい割に全然漬からなくて意外に時間がかかる。
要するに繊維がかなりしっかりしているので、輪切りにすると繊維が短く切れるから割と食べやすく、繊維にそって縦に切ればシャキシャキとした歯ごたえになってそれもいい。

・しょうが
たっぷり使いたかったので、皮をむいてから千切りに。生で食べる時には皮をむく方が味も見た目もすっきりします。
温暖な土地で育つしょうがは寒がりだと知って、キッチンペーパーを着せてから袋に入れて冷蔵庫にしまうようにしたら、確かに傷みにくくなった。

・万能ネギ
小口切りにして、これは水にさらさずそのままで。
根元から10cmくらいの色が浅いところは残して、緑の濃いところだけ使えばお店みたいなものすごい丁寧な感じになる。
もちろん全部刻んで入れてしまってもいいし、根元はお味噌汁に使うとかでも無駄がなくていいし。

他に新玉ねぎとカイワレなんかもいい。
水にさらしたものは、水気をしっかり切って必要ならペーパーで軽く絞るなどしてから使ってください。

③ナスを切って素揚げします
フライパンに1cm深さ位の少なめの揚げ油を熱し、やや大ぶりに2cm幅くらいに切ったナスを素揚げにします。
ナスは火が入るとかなり小さくなるので、仕上がりのイメージより大きめに切るのがポイント。

それとナスは、切って時間が経つとアクが出て切り口が茶色く変色してくる。
アク抜きのために水にさらす方法もあるけど、水気が付けば揚げるときにはねて危ないしいちいち拭くのも面倒なので、切ったら色が変わる前にすぐ揚げてしまえば大丈夫です。

箸で触って柔らかさを感じたら油をよく切って引き上げ、そこにごく軽く塩を振っておくと無味感が和らいで料理の仕上がりに一体感が出ます。
ナスは油を結構吸う感じがするけど、そのコクもこの料理のおいしさの一部だと思う。

④で、完成です
揚げたナス、ほぐした焼き魚、薬味を好きなように盛り付けてポン酢をかければ完成。
ほぼ薬味で覆われてるくらいが丁度いい。

ポン酢も高知特産のゆずポン酢を使いました。酸味も塩気もまろやかだからこれもたっぷり目が丁度いい。
ゆず生産量も日本一の高知、ポン酢の他にもおいしい柚子の調味料が色々あって広がるおいしさ。

ゆずの村・馬路村のタバスコ的調味料[ゆずカラッソ]、じんわりくる辛味に醤油ベースの旨味が見た目によらず和食にぴったり。「くせになる劇的ウマ辛エッセンス」に納得。

高知の言葉で宴会のことを「おきゃく」と言うそうで、そのおきゃく文化の国、土佐の酒が概して淡麗辛口なのはたくさん飲むためとも聞いた。
キレる後味がポン酢風味の野菜料理ともよく合う。気風に倣ってたくさん飲みました。

ナスは約94%ほとんどが水分、それは自然に任せて夏に必要な水分をたっぷり摂れるためにかなと。
夏はたっぷりが丁度いい。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。

[高知ナスのたたきの作り方]の動画をYouTubeに投稿しています。合わせて見てもらえたら嬉しいです。


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