「試み」 ショート×ショート(688文字)

「どうだ、俺とひとつ、勝負をしてみないか」

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「なあに、それほど難しいことじゃない。俺があんたの考えていることをずばりと当てるということさ。俺には、どうも不思議な力があってね。人の考えていることを見抜くことができるんだ。それはきっとあんたにも通じるだろうと思ってね。あんたの考えを最後に、俺が見抜ければ、俺の勝ちさ。見抜けなければ、俺の負け。どうだい、簡単だろう」

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「ははは。そんなに間抜けな顔をするなよ。もう残念ながら、大方勝負はついているんだぜ。なぜなら、この世界には、どうしようもないことが存在するからさ」

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「俺にはもう見えている、元より、それが終着であり、必然だからね。そして、それが、あんたがここにいる理由だろう」

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「…人差し指?いや親指?」

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「…あぁ。なるほど。最後まで耐えられない者もいるんだな」

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「パソコン?いや、スマートフォンか?ああ。俺は、ほとんど文章は紙で読んでいるからね。こういったものはそもそも好きじゃない」

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「そもそも、これといった定義なんて存在しないんだ。俺もよく星新一や筒井康隆を読み耽ったよ。アイデアやずば抜けた発想の散文。確かに、そこには、何かがある。作用するのは人の抑えきれない好奇心といったやつさ。それを求めて、人は行動をする。俺にはよく分かる。俺とあんたとの勝負はほとんど決まっているのさ」

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「さっきから、黙って、ただ求めているだろう」

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「短編小説、ショートショート、言い方は様々だろうが、そこには決まって、読み手を終着させる義務があるらしい」

 

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「…あんたは、この話にオチを求めてるんじゃないか?」

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