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能面の少女

高校は3年間、軟式庭球部に所属しました。
中学の時も軟式庭球部だったのですが、それとは考えられない練習量に身体がごめんなさいと毎日悲鳴をあげます。

3年生と2年生の女子マネージャーは、さすが、もう大人の女性を感じさせます。あれ?私と同学年のマネージャーはいないようです。

ジャージと上履きの線の色は、入学した年から卒業まで同じ色となり、当時、3年生は紺色。2年生は緑色。私たち1年生は臙脂色。
2年生の先輩女子マネージャーです。細いんです。白いんです。それも軽く抱きしめただけで折れそうなぐらい。目の下のホクロ。小さい目、小さい鼻、小さい口。小さい顔。眉がまるで泣いているように顔が能面なのですが、そこがたまりません。私が能面が好きになったのは、きっと彼女の影響です。

お姉さんのように優しい。

県大会では、試合が終わるごとにハチミツ漬けの薄く切ったレモンを食べなさいと、氷で冷やしたタオル。筋肉痛を和らげるスプレー。麦茶の奉仕。まだ当時はスポーツ飲料すらありませんでした。
そして、初めての合宿は、夏休みに、高校から100メートルも離れていない合宿所。
朝9時から夜9時まで、きっちり練習。夕飯は、カレーライス。
OBが、めちゃくちゃしごいてくれます。なかなか休ませてくれません。夜になるとOBが次々とスイカを差し入れしてきます。残す訳にはいきません。さすがに冷房のない合宿所は暑いので、校舎の屋上で涼みます。と、さっきのスイカの食べ過ぎで模様してきました。時計台の近くから放尿します。
翌朝、5時にたたき起こされて、早朝練習。身体がまだ動きません。
そのあと朝食。すぐに練習。全員、ついさっき食べた物を吐きます。昼まで身体もつのか?なんとか夕方まで頑張って家に帰ります。この時、合宿に意味があるのかないのかなんて考える余裕すらありませんでした。
だいたい小学生の時、少年野球の練習はウサギ飛び、中学生では禁止になっても、高校生になったらヒヨコになるとは……。それから、練習中や試合中は、水飲むとバテるからダメだし、日射病はあっても熱中症は、まだなかった時代。すごい!

私が3年生になった時、2年生は辞めてしまい、1年生が大量に入部してきました。
これには理由があります。私は副部長だったのですが、新入生への部紹介を例年、副部長がするということで、原稿を書き、講堂で紹介しました。ちゃんと笑いの要素を入れ、夏には汗と涙を流しながら草取りをする話とか……。
文化部はブラスバンド、体育部は軟式庭球部にぜひ!
いやー、受けました。おかげで、この年の入部希望者は男子女子ともに、過去最多となりました。それも、未経験やマネージャーも多数。
能面のマネージャーに、私の成果を報告したかったのは言うまでもありません。
後で知らされたのですが、部紹介は副部長ではなく部長がやることだったのです。

次の少女へ続く……

2012年1月 飼い猫を撮りたくてミラーレス一眼カメラを購入 | 現在は ライヴ写真を主軸に撮影 | 過去の私小説とそのイメージにあった女性を今後撮影予定