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脳梗塞は突然に

初めて「お出掛け記録」以外の記事を書きます。
先日、父が突然脳梗塞に襲われました。
今は退院して元気に暮らしております。

予めお断りしておきますが、私は医療関係者ではないので、これから書き記すことは全ての脳梗塞患者さんに言えることではありません。ご了承くださいね。

予兆なし、意識もなくさず

とある土曜日の夕方、異変は突然起こりました。
外出先から戻り、畳の上にあぐらをかいてテレビを見ていた父が「目が変だ」という一言と共に上体を起こしていられなくなりました。
曰く「左目はまっすぐ見えるのに、右目は45度曲がって見える」。

その後激しい嘔吐が始まってしまい、その場にいた家族は「目がおかしい」と言っていたことを意識の中で後回しにしてしまいました。
夜になっても吐き気は収まらず、母が「救急車呼ぶ?」と聞いたものの、気持ち悪くて動きたくないという父の言葉から「酷い胃腸炎かノロかねぇ」という印象に変化して行きました。深夜ふらつきながらトイレに行く様子を見ても、目の異常というより「食べてないからだ」と思い込んでしまい、一晩様子を見ました。

呂律が甘い

翌朝になっても状態は変わらず、ヨーグルトひと口でも嘔吐してしまう父。
その日は頼まれた買い物へ朝から車で出掛ける予定だったらしく、母に「これじゃ運転出来ないや、ごめんね」と謝っていたのですが、その呂律が少しだけ、本当に少~~~~しだけ甘いように私は聞こえました。

ヨーグルトひと口でゲロゲロ吐き、呂律も甘い。
そしてそこで思い出した「目がおかしい」という最初の言葉。

脳じゃないのか?

私は母に「ダメだ、病院連れてこう!」とけしかけました。
母は「え?そんなに大変??」とオロオロしていましたが、「呂律がおかしいよ、胃腸炎なら胃腸炎でいいからとにかく病院!」と追い立てタクシーを呼ばせ、私は休日診療をやっている総合病院を調べて連絡を取り、呂律の甘さを感じてから約一時間後に病院に駆け込みました。

休日担当の先生が右目の動きの異常を見つけて即検査に回してくださり、脳外科医と連絡を取りつつ調べ上げる事6時間。
脳梗塞と、頭頂部に何やら不可解な影が見付かりました。
その日の内に入院が決まり、父はICUに入りました。 

ICU症候群?

入院二日目。
様々な準備を整え母と面会に行くと、父は吐き気が止まって普通にベッドの上にいました。
呂律もおかしくないので持ち物の説明をすると、「ひとつ下の階に髭剃りを置いてきちゃったんだよ」と言い張る。
思わず看護師さんに「髭剃りお借りしたんですか?」と聞くと、苦笑いで「そうじゃないんです、昨日は身の回りの物は何も使っていないし、そもそも下の階に行っていないんです」。

…これが所謂ICU症候群というやつなのか。

他にもおかしな言動が続き、母はすっかり滅入ってしまいました。
私は「将来のリハーサルかな」とおおらかに捉えることにしました。
私まで凹むわけにいきませんからね。

写っているものと痴呆症状

父の担当医は脳外科部長の先生でした。
「梗塞は軽微。目の異常は梗塞から来てるね。だけど頭頂部のこの影が何だかわからないなぁ…。出血だと思うんだけど…。二週間様子見しよう。手術にはならないと思うよ!」と説明を受けました。

その夜、父はICUで点滴の針を抜いたりベッドから立ち上がったりと混乱症状を見せ、両手と胴体を固定されました。
翌朝の入院三日目には一般病棟へ移りましたが、そこでもベッドから転落する騒ぎ。
病院から何度も説明と謝罪を受け、その丁寧な対応に私達は恐縮し、「も~何やってんの~!」と父に聞くのですが、父は「全部記憶にない」。
その様子を見て担当の先生から「軽い痴呆が出たのかも。吐き気と言い、もしかするとこの影が悪さしてるかな」と言われました。
影の正体は何なんだろう。

一転、手術へ

入院から二週間。
依然影は身を潜めないため、先生は「腫瘍だろうから取り除く手術をするね」と仰り、いくつか腫瘍の候補を挙げて下さいました。
「腫瘍だろう」の時点で母はもう落ち着いて聞いていられず、隣で私がメモを取りました。 
二週間様子を見ても消えないから出血ではない、しかし大きくもならないから悪性ではないだろう、じゃあ何なんだ?と先生を悩ませたその影は、頭頂部を開いて検査することで正体がわかりました。

『類上皮腫』(るいじょうひしゅ、と読みます)

本来はどこかの細胞になるはずのものがカス状になって脳に溜まるこの症状は、一般的には20~40代で見つかることが多いそう。
しかし父は60代、そして溜まった場所が頭頂の骨と脳の間という大変珍しい場所。先生が調べても「過去に10例あるかどうか」だったので、初期の内に判断がつかなかったそうです。

除去手術は5時間。全て取り除いて頂きました。
それまでの日々でだいぶ回復していて自分で歩いて手術室へ向かった父は、再びICUに戻りました。

めきめきと回復

術後は免疫力が低下すると聞きます。
父も多分に漏れず熱を出し、少々辛そうでした。この頃の記憶はあまり無いそうです。
しかし三日目には一般病棟に戻り、ナースステーションから離れた部屋へどんどん移って、めきめきと回復しているのがわかりました。
梗塞は軽微なので血液を通り易くする薬と時間薬で対応、元々動き回る人で筋力が有った為リハビリも順調にこなし、術後二週間目と予想されていた退院は十日目で叶いました。

帰宅後特に節制は要らないよと言われていますが、減塩醤油にしてみたり、なるべく話し掛けてみたり、少しずつ段階を踏んで外出するようにしてみたりして、退院三週間を迎えた今日、なんと車の運転が再開出来ました。
(追記:後に家族会議を行い、免許は返納しました) 

脳梗塞のイメージを覆した

私はそれまで「脳梗塞」というと
 ・突然倒れる ・意識を失う
 ・話せない  ・麻痺が残る
など、とにかく「本人と意思の疎通が取れなくなるもの」だと思っていました。しかし今回の父の様に、会話が出来るし気絶もしないケースも有るんですね。

そして吐き気。とにかく吐きまくる。
吐いたものを処理している間に目の異常を訴えていた事を忘れてしまい、発症から18時間経っての処置になってしまいました。
時期が時期だけに胃腸炎やノロを疑ったのは仕方ないと思っていますが、もしあのまま自宅で寝込ませていたらどうなっていたか…。
家族と一緒にいる場で発症しても、処置が遅れる危険があるのだと知りました。

更に、梗塞したことで見付かった腫瘍。
もし梗塞しなかったら、そのまま大きくなり続けてもっとひどい悪さをしていたかもしれない。
なのにそれを「痴呆」と片付けて別の対処をしてしまったかもしれない。
そう思うと、今回の父は不幸中の幸いというか何というか…。

脳ドッグは高額ですし、なかなか受けないものですよね。
でもある程度の年齢が来たら、何も異変はないだろうと思いつつも受診してみるのがいいかもしれません。妙な言動を「歳かな」と片付けてしまう前に。

何だかうまくまとまらず、長文になってしまいました。
このnoteがどなたに読まれるかわかりませんが、どなたかお一人でも、頭の片隅に置いて頂ける事を祈ります。

(後日談はコチラです)

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