祈りの波と、声の海
30人のお坊さんによる聲明(しょうみょう)を聴いたことがある。
お寺ではなく、パイプオルガンのあるホールで。
同じように「ここではないどこか」とつながるためのツールだからだろうか、グレゴリオ聖歌にも似た響き。
友人が「地面から湧き出るような男声」と評していたが、まさにその通り。
深く、やわらかな声のかたまりが、日常とはかけ離れた別の場所から届けられたかのようだった。
2時間のあいだ、魂が半分、ここではないどこかにもっていかれて、死んでしまった人たちの顔が、次々と浮かび、心の奥