見出し画像

「仙」

ジオラマから抜け出して来たかのような黒くて小さな舟で鞆の浦の港を後にします。

「やっちゃん、この舟。坂本龍馬が乗っていた
 いろは丸に似せて作ったらしいょ」
「うん。追突されて沈没したんだよ。」
「・・・・・・・。」
わたしの知らない哀しみを知っている瀬戸内の海は今日はとても静かです。

手前に浮かぶ弁天島の曲線に沿うよう進む舟に私の体がわずかに傾きはじめます。キューッと音の無い海に引っ張られて思わず抱きしめた弁天島の肩越しにはもう仙酔島が見えています。あら、近いんだわ。スゴク!


それらしきトンネル🐢

仙人もこの島の美しさに酔ったという。そのままが名前になった仙酔島です。居住する人は無く無人島に属するこの島の別名は亀の島です。浦島太郎さんを龍宮城へ案内したのも亀でした。別名とはいえ亀の島です。この島は龍宮城への入口かもしれません。それらしいトンネルもありますし。 

トンネルをくぐるときに昔見た映画を思い出していました。なぜ、今なんだろう。イエスキリストの話しですが。イエスキリストが商人たちをエルサレムの神殿から追い出す場面です。知らない場所と昔の記憶が出会う時。これも亀のなせるわざなのでしょうか。


龍の背中に乗れる龍神橋🐲

この橋の先に龍が眠っているそうです。足音をたてずに目を閉じて橋を渡り切り龍が目を覚まさなければ背中にそっと乗れると言うわけです。しかも、願い事がひとつ叶うという特典付き。ドラゴンボールだって7個集めなきゃ願いは叶わないのに。嬉しい限りです。

「ねぇ、私たち今、龍の背中の上かしら」
「イヤ、ふたりは無理だろう。重いょ」
「・・・・・。」

私たちはまた歩き出しました。龍が通るという神秘的な道をスタスタと。



素足にチャプチャプ

人の氣がまばらで空がいつもより高く感じます。裸足で歩く波打ち際はこどもの頃と変わらない。足の裏がくすぐったいのとジャリジャリするのとでついはしゃいでしまいます。

このまま海に入ったら気持ちいいだろうなぁ。砂浜に投げ出した濡れた足はすぐにパラパラと砂を落としてしまう。乾いた足には塩だけ残したようなベタつきがありました。

この先の閃きの浜は厳島神社の第1候補だったそうです。宮島は厳島神社があることで聖域となり。ここ仙酔島は人の氣が少ないことが聖域を創っているように感じます。

宮島の弥山と仙酔島の大弥山、中弥山、小弥山を龍が行ったり来たりしている姿を想像したくなるのも自然の原動力でしょうか。雨を降らせ虹を掛ける龍の姿をうっかり見かけてしまう人の心があるのも。この浜辺に座っているとすんなり腑に落ちてしまうから摩訶不思議。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?