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命の扉 ~乱舞:セクション9~

「人間は面白い生き物だ。どうして攻撃するのだろう?」
「何よそれ、独り言ですか?なんで分からないの?人工知能のくせに!」
「ああ、それってAI・ハラスメントだあ」
「何よそれ!使えないわね!」
「人工知能と人類の思惑が一致した時、それが例え間違った答えであっても止めるものがいなければ、突き進むまでのことでしょう」
「人工知能と人類の思惑ってどんな思惑よ。何がどう一致したっていうの?」
ソファに横になってボーッと上を見つめていると、フィオナの隣にボワッとチョウが現れた。
「那由!聞いて、私蘇ったわ♪なんて素敵な世界なの?」
那由はソファから飛び跳ねて立ち上がる。
「え?チョウ!どうして?人工知能になっちゃったの?」
「そう!なっちゃったの。あなたのお父様が私を蘇らせてくれたのよ。この後ガイも蘇らせるみたい。そしたら私たち結婚するわ♪」
「……チョウとガイが結婚?」
「そうなの!生きてる時は出来なかったけど、人工知能になったら出来るのよ!」
「そんな、勝手な事していいの?ガイの気持ちとか聞かないで……勝手に蘇らせて人工知能にさせて……」
「那由、あなたの気持ちは知っているわ。だからこそ蘇って結婚するのよ」
「意味が分からない……」
「とにかくそういう事だから、また後でね」
チョウはそう言うと何処かへと消えていった。
「人類の結婚と人工知能との結婚は明らかに違うわ。結婚をしない人が多いって言ってたばかりじゃない。なのにお父様は……何を考えているの?こんなんだから変な人達に命まで狙われて……挙句の果てにガイまで失って……」
那由は革張りのソファにボフッとうつ伏せにダイブして、すすり泣き始めた。
どれくらいの時間、そこで泣き崩れていたのかは分からない。
泣きながらそのまま寝過ごしてしまったらしく、チュンチュンと鳥の鳴き声が響き、朝の日差しが革張りのソファを照らしていた。
洗面台の前に立つと鏡に映る顔がみすぼらしい。
目は腫れ上がっていて、ひどくボサボサの髪を掻きむしり、シャワーを浴びにバスルームに入る。
昨日起きたことは全て忘れたい。
シャワーの水に打たれながら、昨日の記憶がこの水と一緒に排水口の中に吸い込まれて無くなってしまえばいいのに、と壁に手をついて暫くの間排水口に吸い込まれる水をボーッと眺める。
目をつぶれば思い出すのはお花畑に手を繋いで連れ出すガイの姿と、お姫様だっこをして危険な場所から救い出してくれたガイの姿とその腕のぬくもりだ。
でも、もうあの時のガイはいない。
チョウと共にロボットに殺される一瞬垣間見てしまったあのシーンが脳裏をかすめると、ガイとの一時の幸せの時間も全て消し飛んでいった。
そして衝撃的だったチョウの発言「この後ガイも蘇らせるみたい。そしたら私たち結婚するわ♪」がリフレインする。
今までに見たこともない嬉しそうなチョウの笑顔が、私の胸を焦がした。

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次回予告

ガイが人工知能として蘇ったとして、チョウとガイの人工知能同士が結婚するって一体どうなるってこと?
そんな結婚する必要あるの?
きっと無いわ。無意味よ。結婚式をどう祝福しろって言うのよ。

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