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シュレーディンガーの子猫 ~乱舞:セクション12~

「みゃ~お」
「うわっ!びっくりした。なんでここにネコ?」
まだ小さいその子猫は、僕の足にまとわり付いて、スリスリしている。

あ、そうだ。思い出した。
ここはまだ夢の中だ。
「お前が俺の代わりに死ねばいい」
僕は何処から声が出たのかわからない声で上司の胸ぐらをつかんだ。
僕が俺だって、そんな言い方したことなかった。
まるで別の人格が乗り移っているかのように感じた。
こんな事、僕がするなんて……
あの猫、いつも上司の部屋にいて、置物のようだったけど、生きてたんだな。
胸ぐらをつかみながら上司を引き釣り、窓を開けると上司を窓の上に立たせ蹴りつける。
こんな力が何処から湧いてくるのか不思議なぐらいの馬鹿力で上司を窓の外に宙吊りにさせる。
上司の声が耳に入らない。
何かを言っているようだけど風の音が強いのか、ノイズの音が強いのか?
ノイズ?

ザザザザッ タ・タスケテ ザザザザッ
「た、助けて!」
妙にリアルなその叫び声はどこから聞こえて来たのだろう。

目の前に居る上司の叫び声か。
ビルの外で叫び声を上げている聴衆たちか。
眼下に見える同僚たちか。

「た、助けて!」
今はノイズではなく、はっきりと声が聞こえる。
昨日と同じ?
違う。これは今起きているんだ。
これは現実。
昨日の僕ではなく、今の僕。

「みゃ~お」
「うわっ!びっくりした。またネコ?」
まだ小さいその子猫は、僕の足にまとわり付いて、スリスリしている。
僕はこの手を離したら行けないんだよ。
この手を離したら、窓の外に宙吊りになっている上司は確実に地面に落ちる。
さっき、夢で見たのは僕じゃなかったんだ。
そうだ。お前だ。
俺じゃない。
「分かりました。あなたの代わりに私が死にます」
上司からそんな言葉が返って来た。
俺がさっきチャットで返信した言葉じゃないか。
別にそんな言葉を期待していたわけじゃない。

自分の発言で人を殺めている自覚はあるか?
俺なのか?僕なのか?
こんな日常何処にでもある光景だろ。
明日、見る夢は?
飛び降り自殺?それとも殺人?
なんでこんな事が起こるのか。
言葉は簡単に人を殺せる。
俺は簡単に人を殺せるんだ。
俺のその行動で、俺のその発言で、俺は人を殺めている。

これは俺の夢か?
これは俺の行動か?
目をつぶれば子猫の鳴き声が聞こえてくる。
また現実に戻る。いや、全ては夢の続きかもしれない。

ザザザザッ タ・タスケテ ザザザザッ
ノイズは聞こえているか?

何処かで似たような日常が繰り返されている。
誰かが俺の代わりに死のうとしている。
誰かが僕の代わりに殺されようとしている。
なんでこんな事が繰り返されてしまうのだろう?

ザザザザッ タ・タスケテ ザザザザッ
ノイズは聞こえているか?

何故、死を選んでしまう日常があるのだろうか?
何故、殺されてしまう日常があるのだろうか?

「我々が日常だと思っているのは単なる錯覚なのかも……」
私たちの世界は現実なのか?はたまたVRの世界なのか?
何を信じればいいのか?それが問題だ。

ザザザザッ タ・タスケテ ザザザザッ

次は、あなたとシンクロする。

あなたは助けることが出来るだろうか?

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

あとがき:
努力という言葉は嫌いだけど、
人は努力しなければ
正のエントロピーを吸収してしまう。
従って、秩序は崩壊する。

本当に生きていると誰もが実感できていないのではないか。死んでもいいという思いで生きている人もいる。生きたいと強く願う気持ちを大切にして欲しい。死ぬことをもっと怖がって欲しい。地獄がという神話の話は話し尽くされて飽きられていて、生と死が隣り合った状態で生きている人が多い。最近では、「死ね」という言葉を簡単に使う若い人も増えている。ゲーミフィケーションでは、「死」はコンティニューやリセットと同じぐらいに軽く扱われている。死ぬことを恐れ、生きることに希望を持って欲しい。

大統一理論と生命の謎、シュレーディンガーが残した言葉にある正のエントロピーと負のエントロピー。全てはこの負のエントリピーを食事している事によって、もたらされている時間の中にある。謎は、ここに帰結すると信じる。美しく健康であれば、人は寿命すらも超越した存在へと進化するのかもしれない。それはどんな負のエントロピーを食事して正しく生きるのかという事で解決する。それこそが宇宙の営みであり、この宇宙が永遠にあり続けている最大の理由なのだと考える。人類はこの謎を解かなければならない。

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