自分のために再度整理。僕がカジノ誘致に反対なわけ。

 2019年8月22日。横浜市がカジノ誘致を発表した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48854720S9A820C1000000/
 カジノ単体ではなくカジノを含む統合型リゾートで、欧文の頭文字を取ってIRと呼ぶそうだ。念のためGoogle先生に尋ねてみると「Integrated Resort」の略で、日本語だと「複合観光集客施設」のことだとか。

 「横浜+IR」で検索すると様々な情報がヒットするが、それらは一旦脇に置いておいて、僕がカジノ誘致に賛成できない理由を整理してみたい。
※IR誘致ではなく、そこにカジノが含まれることに賛成できないのだということをはじめにお断りしておく。

カジノ誘致のメリット

 まずはカジノがあることのメリットについて。

 横浜市はIRの具体的な効果試算について、インバウンドを含むIRの訪問者数は年間2000万人を上回り、区域内での消費額は4500億円以上と想定。さらに建設時に7500億円、運営時には年間6300億円を超える地域経済への波及効果を見込んでいる。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190822-00010011-abema-soci

 上記はIR総体としての経済波及効果なのでカジノ単体のものではないが、巨額の経済波及効果があるのだという試算結果が発表されている。要するに「観光客が沢山お金を使ってくれるから経済的に潤いますよ」ということだ。
 ではいったい誰が潤うのだろうか。

 「年間6,300億円を越える地域経済への波及効果」とあるが、これらのうち横浜市内に拠点を構える事業者はどれくらいのボリュームなのだろう。
 都内、あるいは海外に拠点を構える事業者が収益を上げる一方で、建設が予定されている山下埠頭とその周辺以外がこれまでと比べて賑わいを取り戻すことになるのだろうか。

 日本の公営ギャンブルには省庁の利権構造があることは広く知られている。競馬なら農林水産省、競輪とオートレースは経済産業省、競艇は国土交通省の管轄だ。そして表向きは三店方式で賭博場ではない体裁を保ちつつ、パチンコやパチスロには警察庁が絡み、その営業許可やパチンコ台の検定などに警察や公安委員会が関係していることも周知の事実だ。

 さてカジノだ。
 カジノではカジノ管理委員会なる組織が内閣府の外局として設立される見込みだ。カジノは内閣府が主導する新たな利権となる。事業者認定や施設内で使用される機器などの検定・認可は、このカジノ管理委員会が取り仕切る。

 次にカジノ事業に参入する事業者を考えてみる。公営ギャンブル以外で賭博場経営のノウハウがあるのはパチンコ業界だろう。機器の設計・製造も同様だ。かつて30兆円といわれたパチンコ産業も、現在は20兆円にまで落ち込んでいる。

1994年には約3000万人といわれていたパチンコ遊技人口も、現在は約940万人と3分の1以下の水準にまで落ち込んでいる状況。未だ20兆円を超える市場規模を誇ってはいるが、現在のパチンコ業界に「30兆円産業」と呼ばれた頃の勢いは感じられない。
https://biz-journal.jp/gj/2018/05/post_6694.html

 パチンコ業界が生き残りをかけての戦略として、警察庁に見切りをつけて内閣府と手を組もうとしている。そう考えるのは短絡的かも知れない。
 けれど出玉の規制強化に加え、射幸心を煽るスマホゲームの台頭によってパチンコの遊戯人口は減少をたどるばかりだ。内閣府との新たなパートナーシップで再興を図るというのはあながち間違った戦略ではないだろう。

 先ほど書きかけてそのままになっていた「誰が潤うのか」について。

 カジノ事業者は、
【利用者から交付されたチップの価額(賭金総額)】+【利用者相互間のカジノ行為により得た利益】-【利用者に交付したチップの価額(利用者への払戻金)】
により算出された金額の15%に相当する金額をそれぞれ国庫納付金・認定都道府県等納付金として納付しなければなりません。
https://topcourt-law.com/new_business/casino-law

 なるほど。国と認定都道府県が売上げの15%ずつ事業者から吸い上げる構造になっている。事業者が横浜市内に拠点を構えていなくても、神奈川県は黙っていても売上げの15%が入ってくる。
 支配人やディーラーなどの正規社員に加え、大量のアルバイトも必要とされるだろう。雇用の拡大は確実に見込めるはずだ。

 カジノ誘致のメリットは、つまるところはどこまでもお金に尽きる。

カジノ誘致のデメリット

 一方で語られるカジノ誘致のデメリット。
 一番に懸念されているのは治安の悪化。次にマネーロンダリングの懸念。それからギャンブル依存症の増加。
 「カジノ+デメリット」で検索してヒットする記事に出てくるのは、ほとんどがこの3つに集約される。
 それらについてはGoogle先生に尋ねればズラズラと並べてくれるので割愛することにして、僕が考えるもうひとつのデメリット。

僕がカジノを含む賭博が嫌いな理由

 僕の中ではカジノ=賭博場だ。そして短期間に売り買いを繰り返して利ざやを稼ぐデイトレーディングも賭博だと思っている。これらは全て「労働無き富」であって、我が国の憲法で国民の三大義務とされている「勤労の義務」に反するものだと考えている。

 そして僕が賭博を嫌う理由はたった一つ。
 それは「誰かの損が自分の利益」だということに尽きる。

 賭博の世界では、知らない誰かと自分が一緒に幸せな世界を作るなんてことはあり得ない。誰かが負けてくれなければ、自分の利益にはならないのだ。そして、その「誰かの負け」が大きければ大きいほど自分の利益も大きくなる。僕が懸念するのは、社会が博徒のマインドに包まれてしまうと、いつでも誰かの負けを願う世の中になってしまう気がしてならないのだ。
 だから同じ理由でデイトレーディングも嫌いだし、まるで害の無いようなふりで政府が推進しているNISA(ニーサ)も気に入らない。

 学生の頃、競艇場でコロッケを売るアルバイトをしたことがある。
大晦日。午後になると場内は俄然殺気立ってくる。100円のコロッケを買い求める客から受け取る小銭に1円玉が混じり始めるのもこの頃だ。手のひらにかき集めた10円玉や1円玉を数えてコロッケを買っていく客がいる一方で、1万円札をポイッと投げてよこす客も現れ始める。
 店の前に投げ捨てられて風に舞っている舟券を掃除しながら、ふと拾い上げるとそこには500,000円と印字されていた。驚いてちりとりの中の舟券を見ると、どれも数十万円、たまに100万円だの150万円だのという金額が記されているものも珍しくはない。
 競艇場で10円玉を握りしめてコロッケを買いに来た彼らは、正月の餅代を稼ぎにきたのではなく、途方も無い何かに抗うため、最後の一手で競艇場を訪れていたのだ。それは時代小説に登場する、女房に隠れて賭場に通う町人のような可愛げのあるものでは無かった。

 最後に、全く異なる切り口でカジノの楽しさを伝えている人を紹介しておきたい。
 松井政就氏。カジノに関する多くの著書があり、自身も海外のカジノへ頻繁に足を運ぶ我が国に於けるカジノの第一人者だ。
 僕は博打は大嫌いだけれど、読み物として、彼のカジノでの体験はサイコーに面白い。
https://danro.asahi.com/author/11002625

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