焼けあとのちかい_4C

大月書店通信*第126号(2019/7/31)


「大月書店通信」第126号をお届けいたします。

まもなく戦後74年の夏がめぐってきます。
戦争を体験された方々はみなご高齢です。戦争体験の継承が課題となって久しいですが、(1)体験者の記録を残す、(2)体験していない者が何らかの方法で伝える、の両方を追求しつづけるほかありません。
7月刊行の絵本『焼けあとのちかい』は、この(1)(2)を同時に成し遂げようとしたものといえます。

文章を担当した作家の半藤一利さんは現在89歳。小学5年生のときに太平洋戦争が始まって、中学2年で東京大空襲を生きのび、15歳で終戦を迎えました。
その半藤さんの戦争体験を絵で表現したのが、絵本作家の塚本やすしさん。現在53歳で、母親から東京大空襲のことを聞かされて育ったそうです。持ち前の大胆な画風で、開戦から刻一刻と苦しくなっていく下町の暮らしや東京大空襲を描ききりました。

半藤さんはこれまで、日本の近現代史の本をたくさん上梓され、歴史を学ぶ大切さもくり返し強調してこられましたが、絵本は今回が初めて。「世界中の子どもたちを、二度とあんなひどい目にあわせたくはない!」という願いがこもっています。
この夏、子どもたちや若い人たちにもぜひ読んでほしいです。


新刊案内『焼けあとのちかい』ほか7月の新刊

7月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。

●半藤一利の戦争体験を描いた初の絵本!
『焼けあとのちかい』

半藤一利[文] 塚本やすし[絵] 1,500円(税別)


日本の戦争に向き合い、戦争の過程を精緻に解明してきた半藤一利。その原点は、中学2年で体験した東京大空襲だった。開戦から日に日に苦しくなる下町の生活。そして3月10日。猛火を生きのびた半藤少年は焼けあとでちかった。
半藤一利の初の絵本を描くのは、大胆な画風で注目を集める絵本作家・塚本やすし!小学校中学年以上向け。小学校3年生以上の漢字にルビ。用語解説の注あり。


●「それってSOGIハラ?」初の入門書
『はじめよう!SOGIハラのない学校・職場づくり――性の多様性に関するいじめ・ハラスメントをなくすために』

「なくそう!SOGIハラ」実行委員会[編]1,600円(税別)☆試し読みできます


「ホモネタ」やアウティング(暴露)、男女別制服の強要など、性的指向や性自認(SOGI)にかかわるハラスメントは深刻な人権侵害となります。基本的なとらえ方から、事例も多数紹介した初の入門書。
☆推 薦☆小島慶子さん(エッセイスト)、ロバート キャンベルさん(日本文学研究者)


●身につけるのはその主体性でいいですか?
『学力・人格と教育実践――変革的な主体性をはぐくむ』

佐貫 浩[著] 2,800円(税別)


「資質・能力」規定、アクティブラーニング、「関心・意欲・態度」評価、知識基盤社会論等、グローバル競争に勝ち抜く能動性・創造力に一面化された学力や人材育成をめざす政策を批判的に検証し、対抗・挑戦する理論を提起。


●歴史的な危機を乗り越えるリベラルな対案
『長期停滞の資本主義――新しい福祉社会とベーシックインカム』

本田浩邦[著] 2,500円(税別)☆試し読みできます


日本を含む先進資本主義国は「長期停滞」に陥っており、それがファシズムの台頭など社会的危機をもたらしている。100年を超える歴史的視野から現状を分析し、これまでの雇用・社会保障政策の限界を乗り越える経済政策を提示。

●特集=公共サービスの「産業化」
『季刊 自治と分権』夏号(
no. 76) 1,000円(税別)


●首長インタビュー 玉城デニー沖縄県知事(聞き手:本多滝夫)●新たな段階に入った公共サービスの「産業化」政策(岡田知弘)●公共サービスのあり方をゆがめる「産業化」の現段階と対抗の課題(尾林芳匡) ほか


●特集=小中一貫校・義務教育学校と子どもの育ち
『月刊 クレスコ』8月号 no.221
 476円(税別)


小・中学校を統合した施設一体型の「小中一貫校」や、従来の「6・3制」をやめた「義務教育学校」が広まっている。子ども・保護者・教職員の要求から始まったわけではないこの動きに、どのような問題があるのかを検証する。


イベント『焼けあとのちかい』トークイベント2つ

半藤一利 文、塚本やすし 絵『焼けあとのちかい』関連イベント2つです。空席が少なくなっていますので、お早めに主催者までお問い合わせください。

☆8月9日(金)☆
『焼けあとのちかい』刊行記念、「平和の棚の会」共催トークイベント
半藤一利さん(作家)×内海愛子さん(歴史社会学者)
「戦争の歴史を伝えるということ」

日時:8月9日(金)19:00~(開場18:30)
会場:ジュンク堂書店池袋本店
https://honto.jp/store/detail_1570019_14HB320.html
入場料:1000円(ドリンク付き)要予約

※ご予約・お問い合わせは、ジュンク堂書店池袋本店様へお願いします。
なお、5階社会書フロアでは「平和の棚の会」のフェアも展開中です!


☆8月17日(土)☆
「子どもの本・九条の会」11周年記念、戦争と平和を考える子どもの本展

塚本やすしさんがトークイベントのひとつに出演します。

「『焼けあとのちかい』(半藤一利文、大月書店)を語る」

日時:8月17日(土)16:30~17:30
会場:ブックハウスカフェ ギャラリー(2F「ひふみ座」)
入場無料・要予約

※ご予約・お問い合わせは、子どもの本・九条の会様へお願いします。

話題の本『ふるさとって呼んでもいいですか』ほか

★『ふるさとって呼んでもいいですか』紹介記事多数★

6月刊行『ふるさとって呼んでもいいですか――6歳で「移民」になった私の物語』(ナディ 著、山口元一解説)。話題沸騰でたちまち重版決定です。

☆TBSラジオ「荻上チキ Session-22」(7/26放送)で「Session-22 夏の推薦図書!」に選定。荻上チキさんが猛プッシュ!
音声アーカイブを聞くことができます(21分ごろから)

☆「労働力」でなく「隣人」として 評者:武田砂鉄さん(朝日新聞)

☆外の人ではなく「隣人」 著者・ナディさんの思い(神奈川新聞)

☆日本とあの国の狭間にいた少女の「ふるさと」への悩みを氷解させたのは、スタバだった(BuzzFeed Japan)



★『「雑」の思想』朝日新聞「折々のことば」で2日連続紹介★

昨年11月に刊行した、高橋源一郎・辻信一 著『「雑」の思想――世界の複雑さを愛するために』。哲学者の鷲田清一さんが朝日新聞一面で連載するコラム「折々のことば」で、7月19日・20日と続けて紹介されました。

小説家の高橋源一郎さんと、文化人類学者の辻信一さんが、近代の経済原理から排除された「雑」なるものをめぐってくりひろげる対話録です。


★『会話のきっかけレシピ』週刊朝日で紹介★

5月に刊行した『雑談の苦手がラクになる 会話のきっかけレシピ』の著者、枚岡治子さんが、『週刊朝日』8月9日増大号で紹介されています。

noteで公開中のASDの私が雑談本を作るまでもぜひご一読ください。


★『長期停滞の資本主義』ラジオ日本で紹介★

7月新刊『長期停滞の資本主義――新しい福祉社会とベーシックインカム』の著者、本田浩邦さんがラジオに出演。本書のことも語ります。

ラジオ日本「清水勝利のこれでいいのかニッポン!! Part2」
放送日:8月3日(土)、10日(土)いずれも午前9時から



お知らせ 雨宮処凛ほか『この国の不寛容の果てに』ウェブで先行公開中!

7月26日で、相模原での障害者殺傷事件から3年。「障害者は不幸しか作らない」とした被告の主張と、「生産性」で人の価値を測るような社会の風潮は、どこかでつながっているのではないか。
作家の雨宮処凛さんと、自身も自閉症の息子さんを持つRKB毎日放送記者の神戸金史さんが語り合いました。

9月刊行予定の対話集この国の不寛容の果てにから、一部をウェブで先行公開していきます。第1回はこちらから。

☆他にも、鈴木大裕先生が先生になれない世の中で(月刊『クレスコ』に連載中)など様々な記事をnoteで配信しています。ぜひチェック&拡散を!


編集後記

たまたま「ねんきん定期便」の前年と今年の数値を比べてみたところ、なんとこれまで納めた厚生年金保険料の総額が前年よりも低いことを発見。「えっ、もう一つの年金問題?!」ありえない事態に、年金機構の相談ダイヤルにかけるも埒があかず、年金事務所の相談予約電話もなかなかつながらない。取れた予約も2週間先。ようやくその日を迎え事務所で事態を説明すると、40分待たされたあげく、「本部で調査する必要があるので、後日連絡します」とのこと。
そして2週間が過ぎ年金事務所から届いた報告は、「企業年金基金の組織変更に伴う問題で(今年の数値が正しい)、詳細はそちらで聞いてください」でした。よくわからない話に、企業年金基金に確認すると、「見当がつかない。やはり年金機構の問題では?」と言われ、どうしたらいいのぉ状態です。その後人の手も借りつつ、あきらめずに追及して、真相がわかったのですが(実害もなし)、正直、疲れました。「定期便」を受け取っているみなさん、記載に間違いがないか、チェックしてますか?(M.K)

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