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土づくり

土づくりと言っても畑ではありません。

今、新しい家の壁となる壁土を作っています。

壁になる土は、粘土と藁と水を混ぜ、微生物の力によって藁を分解してもらってます。

藁は微生物の力により分解されることで、細かな繊維となり土壁の割れの防止や壁の強化する役割をし、溶け出るリグニンは接着剤として機能します。

しかも、半年の期間をかけて。本当はもっと1年くらいかけたほうが分解が進んでいいのですが。

しかし、そもそも何で半年もかけて家の壁となる土を仕込んでいるのか。

最近は家を建てようとしたら半年か1年以内には完成し住み始めていると思います。

さらに言えば、柱や床となる材木は1年半をかけ乾燥させましたし、この後、棟上してから完成までに約1年の期間を要する予定です。

その理由は安心と美しさのため。

建てようとしている家は、日本の気候風土にはぐくまれてきた伝統工法による家なのです。

最近の家は、機密性が高く、壁やクロスや床材は化学物質を使い、加工されている。つまり、家で暮らすなかで化学物質に体が影響を受け、高温多湿の日本において、壁と外壁の間はカビが発生しやすくなる。

花粉症と同じで全ての人が発祥するわけではない。タバコと同じで全ての人がガンになるわけではない。

でも、家をリフォームしたために化学物質過敏症を発症し、日常生活がままならない人がいることも事実です。

化学物質過敏症(CS)は、2009年から病名リストに登録されましたが、有効な治療法がなく、診断・診察できる病院も医師も限られており、発症すると多くの化学物質に反応するようになり、他のアレルギーを起こしたり、ストレスから様々な病気を併発することもあります。

そういったリスクから自分や家族を守りたい。安心できる家で暮らしたいという願いなのです。

今後、軸組工法により家の骨組みができ、屋根ができ、壁に土を塗り乾燥を経て更に上塗りを行い、内装を施す。すべて職人の手仕事で。そのため、棟上後も約1年の時間を要します。

木の乾燥に1年半かけたというのも、一般に流通している規格化された多くの材木は高温で強制的に乾燥をおこなうので、自然でない割れや内部割れを起こしていたり、油分が奪われるため水や虫にも弱くなるためです。

せっかく長い期間をかけて成長してきた木の能力を減じてしまいます。とてももったいなく木がかわいそうだと思います。

木材は製材後100年近くかけて強度を増していくといわれています。その力を目一杯発揮させてあげたいものです。

合板ではない木と土で家を建てれば、安全で、遠い未来に役割を終えることとなっても自然に還ります

そして、もう一つの理由は木や土で建てる建物の美しさです。

全てが個性を発する木目。木や土の淡い発色。経年による色の変化。たくさんの喜びを与えてくれます。

ただ、伝統工法の家を建てるには現代の住宅ニーズに伴う需給の少なさにより職人不足、技術の伝承不足、建材不足などの問題がたくさんあります。

そこで、ひとつの力になるのが施主の参加です。全てをメーカーや工務店に任せるのではなく、施主も参加できる家づくりです。費用もその分節約できます。

しかし、施主が家づくりに参加する価値は、節約よりも自分たちが住まう家や建材について知り、自らの住処に愛を注ぐことだと思います。家を「買う」という感覚ではなく、本当の意味で家を「建てる」ということだと思います。そこには、建てること、自ら手を加えることへの喜びがあります。

今、行っている壁土づくりは、家を建てているというよりも育てているのです。「育てる」にはやはり時間がかかります。

願わくは日本の伝統工法の利用が増え、技術や建材が伝承され、後世に伝わって欲しいと思います。

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