だんだん

全部、作り話です。

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  • わりと読める5つ 16.1-3

    2016年1月~3月に投稿した中で、わりと読める5つだけまとめました。

最近の記事

効率的なケーキの切り分け方

とてつもなく大きなケーキが1ホール、28種の動物たちに囲まれている。 28個に切り分けられたケーキは、大きさがバラバラだ。いちごが乗っているものもあればそうでないのもある。チョコレートの板に、細くて白い文字が書かれた飾りが乗っているものもある。一つだったケーキは切り分けられた途端、それぞれ異なるものになってしまった。 「さて、じゃあ誰がどれを食べる?」 「じゃんけんで勝った奴から取ってくってのはどうだ。」 ライオンが言う。 「手足の形が違いすぎる。」 キリンが言う

    • 感染症が治らない

      「ウイルスPの感染者は、現在20カ国で確認されています。」 数ヶ月前から全世界的に報道が続いている。 ウイルスPによる感染症は、下痢・嘔吐・食欲不振、それに発熱を引き起こす。感染症を原因とした死者は確認されていないが、治療法も見つかっていない。 「いつまでこういうやり取りが続くんだろうね。ストレスで最近太った。」 ディズプレイ越しに話しかけてくる彼女と、僕の目が合うことはない。 「ワクチンの研究は最優先で進んでるみたいだし、多分もうすぐだろ。医療機関以外でも手を出し

      • ごめんなさいをする理由

        「じいちゃんはさ、裏のおじいさんと仲が悪いじゃん?」 「ああ、田中の爺さんのことかい?」 「そうそ。若いころに喧嘩したんだっけ?」 「うーん。ケンカ、というよりはあっちが一方的に、おじいちゃん達を傷つけるようなことをしたんだよ。まあ昔の話だけどね。」 「裏の、田中のおじいさんは謝らなかったの?」 「謝ったさ。少し、時間をおいてだったけどね。」 「謝ったのに許さなかったの?じいちゃんは。」 じいちゃんは少しの間、何も喋らなかった。 僕は、それに続くじいちゃんの言

        • 5月病予防のために必要なこと

          「はあ、5月だってよ。嫌だねえ…。」 「なんで?5月といったら連休があるし、気候も過ごしやすくなってくる頃合いじゃん?俺は5月、嫌いじゃないけどなあ。」 「阿呆。5月と言ったら5月病だろ。」 「5月といったら5月病ってことはないと思うけど。」 「年に何回かの、憂鬱な時期だよ。」 「そうかねえ。」 「毎年そうさ。連休明けになるとどっと押し寄せるんだよな。」 「何が?」 「なんとも言えないだるさ?みたいな。おかげで生気のない顔で通勤ですよ。」 「いつもじゃん。」

        効率的なケーキの切り分け方

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        • わりと読める5つ 16.1-3
          5本

        記事

          良くない理由

          「寄付ってのは、言葉が良くないね。」 「どういうこと?」 「いやね。変に寄付金なんか送ったりするとさ、偽善だなんだと囃し立てられるじゃないの。」 「ああ、そうだね。」 「それがさ、〈寄付〉って言葉のイメージなんじゃないかと思うんだよね。」 「なるほど。じゃあどんな言葉がいいのさ?」 「そうだなあ。例えば〈納付〉なんてのは?」 「納付て、そりゃあ税金みたいに言うねえ。あんまイメージ良くないよ。」 「イメージは良くなくていいのさ。変に善い行いです、ってイメージがつ

          良くない理由

          ミニマリストを知ってるか?

          「ミニマリストって知ってるか?」 久しぶりにあった古くからの友人は、変わり果てた姿で登場した。 自由奔放だった髪の毛先はどこへやら、坊さん顔負けの短髪姿。 黒いTシャツとジーンズにサンダルというラフな姿は、欧米のテクノロジー業界人のようなファッションなのだが、いざ顔へ目をやればのっぺりとした薄顔が待ち構えている。 低身長で華奢な体格でもあるTHE東洋人と言ったその風貌に、シンプルなファッションという奇跡の組み合わせには、財布がどうこうといったことではなく、なんというか

          ミニマリストを知ってるか?

          人間と妖怪の違い

          ある時代のある街に、人間になりたい妖怪がいました。 人間になることができた師匠から教えを請いながら、修行に明け暮れています。 「先生、人間になるために一番必要なことは何でしょうか?」 「それは人の痛みを知ることだよ。」 「人の痛み、ですか。人の痛みとは、妖怪の痛みとどう違うのでしょうか?」 「人間の痛み、ではなく他人の痛み。これを知るということだ。」 「他人の痛みは感じられませんから、知ることはできませんよ。妖怪じゃあるまいし。」 「お前は妖怪だよ。しかしそれを

          人間と妖怪の違い

          狩る側のこころえ

          薄暗い橙色の街灯がかろうじて照らしているのは、年老いた人間の前に立ちはだかる若者の姿。若者は右手に持つ棒状のもので、すかさず襲いかかる。 しかし、続けて繰り出す攻撃は、老人にかすりもしなかった。 「経験が違うのだよ、若者よ。」 「くそ!金だせよ。くそー!」 「無いよ。」 「うるせえ!金だせ!」 若者は持っていたものを放り、老人に掴みかかる。 「金を持ってる人間とそうじゃない人間の区別くらいつけてから襲え。どうせ襲う相手を人間とも思ってないんだろ。」 「黙れ!な

          狩る側のこころえ

          親がいるということ、親であるということ

          小学校の作文発表。 一人ひとり順番に立ち上がり、原稿用紙を小さな両手で高らかと掲げながら読み上げる。 テーマは自分の両親について。 「作文、『ぼくの親』。ぼくが一番最初にお世話になる親はペロです。」 「ペロ?」 「ペロは犬です。僕が起きるのを毎朝手伝ってくれます。」 「ふふふ。なるほど、ペロが朝起こしにきてくれるのね。」 「おかげで起きてすぐ、顔を洗う習慣も身につきました。」 「顔を舐めて起こすのね。ベトベトになるのかな。」 「朝ごはんの親は大隣さんです。」

          親がいるということ、親であるということ

          タマゴは投げるものじゃない

          「なんでこんなことしたの?」 母親が我が子に問いかける、よくある場面。 「受験勉強のストレス。」 「それは友だちだって一緒でしょ。他の子達がこんなことしてるのなんて聞いたことないよ。」 「そんなことないよ。似たようなことしてる子達は私の周りにたくさんいるし、テレビでもニュースになってたじゃない。」 「ニュースになってたのは生でしょ。あなたがパパに投げたのは、ゆで卵よ。」 「どうして生はよくて、ゆではダメなの?」 「痛いじゃない、ゆでは。全部固体なんだから。」

          タマゴは投げるものじゃない

          政治家の職業病

          「大臣!今回報じられた賭けマージャンの一件について、これは実際にあったことだと受け取ってよろしいのでしょうか!?」 「全て、事実です。国民の皆様にはお騒がせして申し訳ない、という気持ちでおります。ただもちろん、全て参加者同意の上で行われたことであります。誰かに多大な迷惑をかけてしまった、というわけではございません。」 「また合わせて報じられている不倫疑惑についてですが、こちらはいかがですか?ご自身だけでなく、お相手の家族の方々に迷惑をかけているのではありませんか?」 「

          政治家の職業病

          効率的なミカンの分け方

          給食の時間。配膳台の前で二人の生徒がもめている。 「どうしたの?」 彼らの後ろに隠れて、銀色の配膳容器の中に一つだけ、ミカンが取り残されていた。 「こいつの言うミカンの分け方が気に食わねえんだよ。俺はじゃんけんがいいって言ってるのに。」 「じゃんけんだと食べられない人が出るじゃん。みんな、食べられないのは嫌だろ?だから一粒ずつ分けようって言ってるんだけど、こいつが聞かないんだよ。」 「なんだ、そんなことか。」 「そんなことじゃない。このミカンをいかに無駄なく効率的

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          この線から先は入ってこないで

          「この線から先は入ってこないで。」 理科の授業だけは教室を移動して理科室で行われる。 理科室では一人一人の机はなく、4人で一つの大きな机を使うことになる。向かい合わせの人はそれほどでもないが、隣同士は間隔が狭く、私達は毎回もめ合っている。 「あんたの机の使い方が雑だから、私のノートが置けなくなっちゃう。」 「ああ、ごめん。」 そこで私は鉛筆の線で境界を作った。黒っぽい机の上なので、書いてあると知っている人でないと、線の存在は分かりにくい。 「あのさ、」 「何?」

          この線から先は入ってこないで

          嘘は許されない

          「どうもー。これから漫才やらせてもらいます。山田と、」 「トムクルーズです。」 「カット。違うよね。見たらわかるし。」 「いや、これは導入のボケで…」 「ダメダメ。詐称はご法度だから、気を付けて。」 「詐称……」 「あとね。これから、じゃないでしょ。「どうもー」って入ってくるところから漫才始まってるんだから。もう一回最初からお願いします。」 「…はい。すいません。」 「どうもー。こうして漫才やらせてもらっています、山田と、」 「あの、僕も山田なんですけど。」

          嘘は許されない

          人材育成の話

          必ず貴重な人材としての成長をお約束致します。 成功する確率100%。 こんな宣伝文句が、学校や塾ではありふれています。 「確かにこうして書かれていました。後で確認したら"100%"で間違いないと説明もしていただきましたよね?」 「はい。おっしゃるとおりでございます。」 「じゃあうちの子がこの時期に就職を決めきれていない現状を、どう説明するんですか?」 「我が校ではこれまでに約五万人の学生を世に輩出してきました。」 「ええ、それも入学の説明でお聞きしました。」

          人材育成の話

          保育園落ちた

          どんよりとした曇り空。けれども気温は心地よく、何も考えず、ぼーっとしていることが正解のように思える。そんなある日の公園。 「あら、かわいいね。おいくつ?」 「3歳に、なります。」 人生の大先輩が新米の母親と、その隣の人生の新米に声をかけている。どこか懐かしい光景。 「そう。3歳。一番かわいいころね。お母さんも一番苦しくなるときかもしれない。」 「そうですね。」 「私も3人育てたけれど、母にはずいぶんと助けてもらったわ。子育てだけじゃなくて、愚痴なんかも聞いてもらっ

          保育園落ちた