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信用は「過去」、信頼は「未来」を見る

「信用」と「信頼」
どちらも相手を信じる意味で使われますが、実はずいぶん違いがあります。

「信用」は、過去の実績や結果を評価して信じる。
つまり、信じるためには、それなりの前提条件が必要になるということです。
確かにそう考えると、信用金庫はあっても、信頼金庫というのはありませんからね。

「信頼」はというと、前提条件はなく、無条件で相手を信じる態度が求められる。つまり「信じて大丈夫だろうか?」という疑問を持ちながら、相手の善意を推し量ったり、信じるに値するという根拠を求めることはありません。

似ているようで、随分と違いがあるのがわかります。
つまり「信用」は過去を、「信頼」は未来を信じる。
面白いですね。

信頼するかは自分が決めていい

別れ

無条件で人を信頼する。
私たちは、誰もが「信頼」の大切さを痛いほど感じています。
親子であっても、夫婦であっても、仕事の仲間であっても、信頼がなくては関係を維持するのは難しいですからね。

ところが、重要性は十分に分かっていても、本当に相手を信じ切ることができるのか、私たちはその難しさに悩み、苦しむのです。

信頼は、自然に築かれていくものではありません。
「もう信頼できない!」と思った時に、あえて「信じる」ことを選択する。
不安で揺れても、意志の力で信じることを選ぶという、強い心が必要なのです。

信頼のプログラムを持つ赤ちゃん

赤ちゃん

そう考えると、赤ちゃんはすごい強さを持って誕生するんだなと思います。
何も確証がない未来を「大丈夫!」と信頼するのは、大きなチャレンジです。
それでも、その大きな賭けに備えたプログラムを持って生まれてくる赤ちゃんは、自分を産んでくれた親を無条件で信頼して、愛着を形成していく。
命がけの大きな挑戦に挑むのですからびっくりです。

子どもからすれば、生まれて初めての人間関係が、親との関係になります。
…自分は、親から無条件で受け入れてもらえるのか
…条件が満たされなくても、肯定してくれるのか
これは、のちの人生に深く関わってくる重要事項です。

全幅の信頼を寄せて頼り切らなければ、1日たりとも生きれない赤ちゃんにとって、他に選択肢はない、まさに命がけの挑戦をするのです。

信頼と自尊感情の関係

心配

命がけの挑戦の結果、願っていた通り、親との間で無条件の信頼を手にできた子どもは、園や学校で出会う先生やお友だちを信頼して行動するようになりますし、大人になった後も、特別な人と深い信頼の絆を築くことに、挑戦していくことでしょう。

ところが、親子の間で信頼を学ぶことに失敗してしまったら、のちの人生は大変生きづらくなる。
なぜなら、自分を好きになれないという「自尊感情」と深い関係があるからです。
もう少し詳しく説明しますね。

「自尊感情」とは
自分の考えや言動に自信を持ち、自分の人格を大切なものだと思えること。

自尊感情を持てるかどうかは、生きる質と直結します。
自尊感情が満たされなければ、いつまでも自分のことに集中し続けることになりますし、自分のことが片時も頭から離れない、自意識過剰な状態を作り出すのです。
そして、自分が自意識過剰かどうかは、多くの場合、気づきません。

ところが、人間関係に摩擦が増えることになるし、人の評価が気になって、小さなマイナスの声も拾い上げて、心がざわついてしまうことで、なんだか生きにくいぞと思うのです。
これは自分に意識が集中しすぎている状態が作り出すのです。

反対に、自尊感情が満たされれば、自分に執着することはありません。
意地を張ったり、頑なに強情になることもありませんし、何よりも、自分のことはすっかり忘れて相手を気遣ったり、人を心から思いやることができるようになるのです。

自分で自分のことを「素敵だ」と思えないからこそ、素敵に見えるように、素敵だといってもらえるように、自分に執着する。
「価値がある」と思えないからこそ、困っている人を見ても自分を優先してしまい、人助けを躊躇してしまう。
そして悲しいことに、困っている相手が愛する我が子であっても、本人の意図しない無意識の中で、見て見ぬ振りをしてしまうということだってあるのです。

生きていく上では欠かせない自尊感情。
赤ちゃんが空腹を感じるとおっぱいを欲しがるように、自尊感情を満たすためには「受容される」「認めてもらう」「大切に敬意を払われる」ことを欲するのは、当然なのです。

子どもは親のまなざしから自分への信頼を見抜く

まま

いかに自尊感情が大切か。
信頼から育まれる自尊感情。
ところが、どんなに愛情深く育てていても、親子の間で信頼が揺らいでしまうことがあるのです。
このことも是非知っておいてください。

親子の間で信頼う関係が揺らいでしまうのは、その多くは親が子どもに対して、不信感を抱いてしまうことが原因です。

「この子の将来は、大丈夫だろうか」

その疑いが、母親自身を一層不安にさせます。
そして、母親の不安が子どもに伝染し、関係をギクシャクさせていくのです。
つい口うるさくなってしまったり、干渉しすぎてしまったり、うっかり褒めるのを忘れてしまったり。

そうならないためには、まずは、親が子どもを信頼することです。
「この子は、必ずしあわせになるに違いない!」
そう信じることです。

たとえ発達がゆっくりであろうとも、感情をコントロールすることが苦手でも、将来しあわせになれば問題ないわけです。
子どもの未来が信頼できれば、そのまなざしは必ず子どもに伝わります。
つまり、失敗したり、成長を足踏みするような時にも、疑うことなく「大丈夫、あなたは必ずしあわせになる!」と言い切ればいいのです。

頭では分かっているのに、つい辛く当たってしまうことがあったとしたら、子どもの将来が心配な方向に向かっているわけではありません。
自分が不安なのです。

その不安が大きくなっているから、つい厳しいことを口にしてしまったんだということに、いち早く気づいてください。
そして、すぐにフォローしてください。

「あなたがとっても大切だから、このままだと不安で、つい厳しく言いすぎちゃったの、ごめんね」
と伝えて、抱きしめるのです。

心からの言葉であれば、必ず伝わりますから大丈夫。
きっと出来ますよ。
母親は強いんです。
私は、最後まで読んでくださったあなたを信頼しています。
頑張って。

鶯千恭子(おうち きょうこ)

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