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小川恭平(おがわ・きょうへい) 花園大学

ファンの多い選手だった。
誰からも愛された。
これでもか、これでもかと辛いことが次々と彼を襲っていたに違いないのだけれど、彼はいつも明るく笑っていた。その笑顔が周囲を幸せにした。

2020年10月に行われた全日本インカレが、彼の現役最後の試合となった。首と腰を痛め、一時は手具を持つこともままならない状態だったという。試合前に通しは1度しかできなかった。つまり、2回目の通しが試合本番だったことになる。

まさに満身創痍。試合に出るべきかどうか、悩んだ。相談した人達には「今後の人生の方が長いのだから」と言われた。それでも、タンブリングの難度を落としてでも出ようと決めた。

1度通しをすると次の日には体が動かせなくなるため、2日目のロープとクラブは棄権するしかなかった。いろいろあった新体操人生の最後に、感謝の気持ちを伝えられるようにと心に決めて、コールに返事をした。

関係者の配慮でライブ配信された今年の全日本インカレ。通信環境のせいで映像が時々飛んだり止まったりしたが、小川選手の最後の演技となるスティックの前から映像が完全に止まってしまった。再び配信が始まった時には、彼の演技はすでに終わっていた。コメント欄には「恭平君が終わってしまった」「見たかった」というファンの声があふれた。

その彼の現役最後の演技を、全日本学生体操連盟および花園大学、ご本人の協力のもとYouTubeに公開することができた。

海外からも多くの反響が寄せられている。

「全てが柔軟性高く、軽やか。このような優雅で美しい動きを見ていて飽きることはありません。音楽もとても美しく、演技に素晴らしく合っています」(フランス)
「I love you. 私の夢は、いつか生で見ること😍」(国籍不明)
「あなたは本当のプロ。ハンガリーより愛を込めて」
「素晴らしく美しい」(ロシア)
「美しい演技。そしてとてもキュートでハンサム!!」
「オガワキョウヘイの演技について、そして彼の生き方についての情報をありがとう。」

思えば、ちょうど彼が大学1年生になった頃に「応援!男子新体操」は活動を開始したのだが、当時、花園大学には兄の小川晃平がいた。ジャパンチャンピオンの偉大な兄。双子のようにそっくりな兄弟は、比較されることも多かったに違いない。

でも、いつ頃からだろう。小川恭平の歩みが、兄が通った道ではないところへ向かい始めた、と感じるようになったのは。

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彼のスティックの演技(音楽は名曲「白い恋人たち」)を見た井原高校の恩師である長田京大監督は、「男子新体操はこういう新体操であってほしいと心から思いました」と述べている。

そして小川選手の人柄をこう評する。「恭平は本当に裏表がなく、まっすぐで自分をよく分かっている子。同時に、いつも周りのことを考えて、自分が何をすべきか瞬時に判断して行動できるんです。

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彼の4年間を振り返る映像を編集しながら、ありがとう、本当によく頑張ってくれて…という気持ちが込み上げた。おそらく私だけではないだろう。多くのファンが、彼の演技の美しさと人柄に魅了されてきたに違いない。そして現役最後の姿に、心の中でスタンディングオベーションを送ったに違いない。

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ファンはきっと、小川恭平という選手を永遠に忘れない。

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