Ouma

元獣医師/細胞アーティスト/SORAプロジェクト主宰/2017年より世界2周目のアート制作・発表の旅に出ているとこ(現在・韓国)/Cell artist,Veterinarian http://oumavet.com みじんこブログhttps://mijin-co.me/

第二章 - 二人の王子3

アサは灰色の毛並みの衛兵十二人に連れられて大聖堂に戻ってきた。とっさの嘘で乗車券は戻されたが、隙を見て町を抜け出すことすら難しくなってしまった。大勢の犬たちに囲まれたアサを見て、大聖堂の入り口の前で待っていたネズミが言った。
「お一人で出て行かれたのは分かりましたが、ずいぶんと大人数になって戻ってこられましたね」
 ネズミの毛だらけの顔では、表情が読みにくい。列車の出発時間が来たら、アサを見捨てて

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第二章 - 二人の王子2

どうやら王宮を守る衛兵のようだ。両手を握りしめ歯をむき出しにして、真っ赤な目でアサを見下ろしてくる。唸り声をあげ、下手なことを言えば噛み殺してきそうだ。アサは小袋の中から黒い乗車券を少しだけ出して見せる。
「ここの王様に会いたいんだけど、いつになったら会える?」
 黒の乗車券を見た衛兵の表情が明らかに変わる。この町では、前の町よりも乗車券に強力な効果があるのかもしれない。
「時間を指定してほしい、

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第二章 - 二人の王子1

次の町は巨大な建物が並ぶ大都市だった。都市中央を走る道路の幅は、車が横に三十台並んでも余りそうなほどで、道の両側には街路樹が等間隔に植えられている。砂漠の中にこんな城塞のような都市があることを不思議に感じる。
アサは町中を歩きながら、光の強さに目を少し細める。この世界に来てから一度も夜になっていないが、猫の町にいた時より、日が昇った感じはある。中央道路の先には、紫色をした巨大な四角錐建物があり、尖

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医者を辞めた理由

アサが強い揺れに目を覚ました時、通路を挟んで反対側の席に座るネズミは新聞を読んでいた。窓の外には絵の具を溶かしたような不自然な青さの海が広がる。ネズミ側の窓から見えるのは、延々とつづく砂の山脈。アサは靴を脱いで両足を前の座席に投げ出し、もう一度ネズミを見た。ネズミは新聞から目を離さない。アサは大きく息を吐く。ネズミが何者なのか分からないが、元の世界に帰る方法を知っているのはネズミに違いない。何か手

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第一章 - 八つの腎臓の町10

「腎臓の養殖!?」
 医者とネズミの声が揃う。ベッドの上に横になったレリは黙ったままだ。
「見て」
 アサはレリの内臓を映した布の一部を指さす。
「この嚢胞の並びを見て気づかなかった?彼女自身の腎臓二つを除いた六つ全部に、嚢胞が八個ずつ。位置も大きさもほぼ同じ。こんなに完全に同じ並びで嚢胞ってできるもんなの?明らかに人工的でしょ」
「腎臓の養殖っていうのはどういうことでしょう?」
 ネズミが聞く。

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第一章 - 八つの腎臓の町9

翌日の午後二時、アサはネズミと一緒にレリを待っていた。場所は大きな猫の石像が立つ広場。軍服を着た猫が、左手を大きく斜め前方に突きだしている。石像を中心に十字に道が広がる、見晴らしのいい広場だ。通りの向こうからかごを引いた自転車タクシーがやってくる。かごに乗ってるのがレリだ。自転車はアサとネズミの前に止まり、アサはレリの手を取って、彼女がかごから下りるのを手伝った。表情を見ると、昨日よりも体調は良さ

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